「後ろのお前らはタヌキか。3匹が同時期に集まるとは珍しいな」

神様は胡座を描いた足に肘を乗せ、頬杖を付いてそう言った。

「はい。ぼくたかもビックリです。まさか、僕の他にもタヌキが居るなんて。それも2人も」

右端の眼鏡をかけた大人しそうな男の人が、目線を左右に動かし、どこかビクビクした様子で答えた。

「まあ、時にはそんな時もあるだろう」

ニヤニヤしながら、面白そうに神様が笑った。

「そんなことより、お前だ。お前に憑いてるのは神か?」

神様はすぐにタヌキ達には興味を失ったらしく、タヌキ達から茜の方に視線を移して真剣な顔になり茜の顔を見つめた。

「私?」

茜は不思議そうな顔で神様を見つめ返した。

「まあ、正確にはお前じゃないが。姿を現したらどうだ」

神様は茜の右上上空の方を見てそう言った。

「何か、用か?」

紫の派手な着物を着崩している中性的な顔立ちの男が不機嫌そうな声でそう言った。

「お前、今何と名乗っている?」

端的に神様はそう問うた。

「月だ」

「そうか、俺様は海だ」

神様はニヤニヤして、そう返した。

「ん?月、海くんと知り合いなの?」

「まあ、昔な。お前が居ると知ってたら、来なかったんだかな」

「俺様が居るから来てくれたんじゃないのか?」

神様は上機嫌にそう言った。完全に揶揄っているようだ。

「そんなわけないだろ」

月はそんな海に対して不貞腐れるようにそっぽを向いて吐き捨てる様にそう返した。

「まあ、でもお前はこいつに逆らえない。こいつが来たいと言えばお前に来る以外の選択は出来ない。

つまり、運命だったんだよ」

そっぽを向いてしまった月の横顔を見つめて、海はおかしそうに笑ってそう言った。最後は真顔で月の事を見つめた。それがまたどこか怖い。

「まさか、お前が導いたのか?この、俺を」

海の言葉を聞いて月は静かに怒り、海の方を向いた。

「さあ、どうだろうなぁ」

怒っている月に対して海は楽しそうに笑ってそう返した。

それを見て、さらに月が怒ったのは言うまでもない。

だが、そんな事にはまるで興味無さそうに海は月達を背に窓から海を眺めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰が為のニライカナイ 遥 かなた @haruka4869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ