彼女のお仕事編⑥

 私は変わりたい。変わらなきゃ、いけない。


「ジル、やっぱり私の血を見てもらってもいいかな?……ご飯、食べようと思うんだ。私は病気だから、治さなきゃ。人助けのためには、まず自分が健康にならなきゃいけないと思うから」

「サトミ……!」

「わ、ポテトっ!」


 ポテトは飛びつき、ジルは嬉しそうに笑う。


「じゃあ、早速いただこうかな。先程も言ったが、痛くはない。むしろ気持ち良いくらいだ」

「んー、それはそれでちょっと怖いかも?」

「大丈夫だ。我に身を任せればいい」


 そっとジルが私を抱き寄せ、首筋に噛みついた。


 ☆


「うー……恥ずかしい」


 私は顔を真っ赤にして、もふもふのポテトの体に埋めていた。かわいい声だったなとジルがクツクツと笑う。

 未知の快感に私は嬌声をあげていた。


「……お願い、忘れて」

「今度は違う理由で聞きたいな?」

「ジルの意地悪ー」

「はは。すまない。やっぱり惚れた女のああいう声を聞けるのは嬉しくてな」


 甘い視線に更に私は居た堪れなくなった。


「……まぁ、結論から言うとかなり薄いな。いろいろ食べねばなるまい。サトミ、肉は好きか?」

「お肉かぁ。久しく食べてないなぁ」

「よし、ポテト。手伝ってくれ。狩りに行くぞ」

「いいよー。いっぱい獲ろう獲ろう!」


 ジルとポテトは私に待っててと告げて、駆けていく。


「ふふ。すっかり仲良しだなぁ」


 私はふたりを見送って、空を見上げる。

 そこには大きな月が輝いていた。


 ☆


「……ジル、ありがとう。サトミ、今とっても幸せそうだよ。ボクが生きてたときは辛そうだったんだよ。ボクはそばにいることしかできなかった。助けたくても助けられなかったんだ」

「そんなことはないぞ、ポテト。ポテトはサトミの支えになっていたさ。サトミがポテトを見る目はいつでも優しいからな」

「そうかな?そうだといいな」

「そうだとも」

「ジルは良い男だね。サトミ、ジルを選べばいいのに」

「我はサクラという男よりも良い男か?」

「そうだよ。頑なだったサトミの心を動かしてくれたんだから」

「なら、頑張らねばな。サトミに選んでもらえるように」

「応援してるよ、ジル」

「ありがとう、ポテト」


 これはサトミを想うふたりの内緒の会話。


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彼女がいない異世界に転生しても何の意味もない〜彼女は栄養士知識で人々を救う〜 雪花彩歌 @ayaka1016

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