第24話

「大活躍じゃったの。ダクター殿。まさか空飛ぶ魔道具、飛行機とか言ったかのう。それにコラージの体液を攻撃に使うとは。詳細を聞いた時は驚いたものよ。騎士国側からもお礼の言葉を貰っておる」



「それは良かったですね。それで報酬の方はどうなりましたか?」



「報酬は騎士国から送られたオリハルコンの鉱石と、新しく作られた魔道爵を送る事に決まった」



「へ?魔道爵とは一体?」



「まあ事実上お主の為に作られた爵位じゃの。通常の貴族と違い、国王のみに従う貴族じゃ。よって特別な権利等は無いが、他の貴族等に従う必要も無い。国王からの指示も国難の時のみと限定されておる。それとある程度の軍事力の保有も認められておる。つまり、国が自由を認めた特別な爵位じゃな。しかし、国外に出るには国王の許可が必要になるのは他の貴族と変わらない」



「こちらとしてはありがたいですが、本当に良いんですか?」



「勿論だ。それにこれは1代限りの爵位じゃし、今回はガストン殿も一緒に叙爵される事が決まった。これで結婚への憂いもなくなるじゃろう」



宰相様が不気味な笑みを浮かべている。恐らくはリコメットの事を言っているんだろう。



「分かりました。有り難くお受け致します」



「では国王への謁見は決まり次第連絡しよう。ガストン殿にも宜しくお伝え願いたい」



「分かりました。ところで騎士国とカザルス帝国の争いはどうなりましたか?」



「まだ何も決まってないようじゃ。相手国は大混乱で国が荒れるかもしれない程だとか。現状話し合いは無理じゃろうな」



「そうですか。因みにカザルス帝国以外で、貿易してくれそうな国は無いですか?出来れば広大な土地を確保出来る国が良いですね」



「ふむ。あの飛行機とやらで貿易するのかの?」



「そうです。大型の飛行機だと、着陸する為に広い敷地が必要になるのです」



「では国からかの大陸に人を送ろう。しかし、他国と貿易する際は国から必ず鑑査員が派遣される事になるし、国同士の取り決めた物以外は取引出来ない事は覚えておいて欲しい」



「分かりました」



「それから前に話しておったヒヒイロカネを加工出来る鍛冶師を派遣する事が決まった。約束通り開発した物については国への報告は確実にの。争いのきっかけになっては国としても困るからの」



「通信機と飛行機の際は大変ご迷惑を掛けました」



「まあこれからは事前の報告を頼むぞ」



「はい」



そう。通信機について侯爵様に話した時に、もの凄い説教をされたのだ。争いの火種になると。



それから他の物についても聞かれたので色々と話したら、飛行機についても見られたら大変な事になりかねないとの事で、国王に報告する事になった。



それにより飛行機の試験飛行の前に国が動いてくれたお陰で大きな問題にならずにすんだ。



リコメットに渡した通信機についても、かなり厳重な管理になったが、リコメットの安全は確保された。



まあ考え無しの行動だったと凄く反省している。特にリコメットが危険にさらされる可能性について考えていなかったからだ。



こうして僕とガストン爺さんは王城へ向かい、国王から爵位とオリハルコンの鉱石を贈られた。









「久しいの。ガストンとダクターよ」



「お久しぶりですな陛下。またこうして個人的にお話する機会がこようとは」



そう。謁見の後に非公式での国王との会談の時間が儲けられたのだ。



「ガストンは随分と若くなったように見えるが?」



「フォッフォッフォ。好きな研究をすると、心も体も若返ってしまうのかもしれないですな。ホッホッホ」



「して最初の話だが、なぜ一部しか特許を申請しないのだ?理由を聞かせて貰えぬか?」



「それは特許の対応年数ですかの。申請した物については中身を見れば模倣出来る可能性があるので申請したのです。しかし、他の魔道具については解体して調べても模倣する事が出来ない物達です。それなのに特許を申請してしまったら作れないはずの物が作れるようになってしまい、我々の工房に不利になってしまうのです。それなのに特許期間は10年しか無い。それでは申請する意味がありませんよ」



「なるほどの。では特許制度についての見直しも必要かもしれんな」



「それが宜しいかと」



「して、あの空飛ぶ飛行機と言ったか?あれはこの大陸の空を飛べる見込みがあるのか?」



「ただ飛ぶだけなら既に可能ですよ。モンスターから逃げ切るだけの速度は出せます。ただ、逃げられるだけでは意味がないのですよ。だからこそこれからモンスターから制空権を奪える飛行機を開発するのです」



「お、おお。ガストン殿、一旦落ち着いて下され。国王陛下が驚かれていますよ」



「失礼した。つい興奮してしまっての。ホッホッホ」



「ではこれからは国からも援助しよう。勿論条件はあるが、出来る限りの協力はさせてもらおう」



またガストン爺さんがこっちを見ている。全部任せるって言ったのに。



だからこっちを見ないでって。ほら、皆が僕を見てくるじゃないか。



「僕はそれで良いと思います。勿論条件次第ですが、国からの協力があればより早く開発出来ると思います」



「ではそのように調整しよう。では次の話だが、イルーシア騎士国から共同開発の打診が来ている。先の戦いで海の上での戦いに、飛行機が有用な事が証明されたからだろう。飛行機が搭載可能な船の建造と、その船で運用出来る飛行機の開発への協力だな」



「それについては条件次第としか言えませんね。この工房でしか作れない物が多いので、開示出来ない情報が多くあります」



「まあそうだろう。国としても国外にあまり技術提供はしたくないんだが、相手は3大国の一つのイルーシア騎士国だ。あまり強気にも出られん。これからはどの辺を落とし処にするか話し合わなければならないだろう。お主の達もある程度の無理は覚悟しておいてくれ」



「そう言う話では仕方ないですね。こちらからのある程度の条件と守って欲しい優先順位を纏めたら、王城にお送りします」



「宜しくな。ダクターよ。しかしダクターは14にしては随分と大人びておるの。来年には成人と言う事だし、リコメットとは親しいのだろう?どうだね?」



「ど、どういう意味でしょうか?」



「婚約の話だよ。どうやらリコメットも乗り気のようだし、侯爵からの許可も出ておる。どうかね?」



「ほ、本当に宜しいのですか?ぼ、僕は平民の生まれですし」



「そこはもう問題無い。君は既に貴族だ。当主同士の合意があるなら直ぐにでも行おう。リコメットも喜ぶだろう」



「か、かしこまりました。喜んでお受け致します」



「では今話した内容を纏めよう」



こうして僕達の工房は国を巻き込んだ開発へと進んでいった。


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蒼空の彼方へと~空に魅せられた男の開発記~ @aira0011

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