第23話
「艦隊長。シルフェン王国からの援軍が今日にでも到着するそうです。どうやらシルフェン王国で開発された空飛ぶ魔道具だとか」
「あの国ではそんな無謀な開発をしていたのか。陸地では役に立たないと言うのに。しかし、空からの攻撃なら撃退可能か」
敵の艦隊は常に補給部隊と連携して、補給を絶たれないように動いている。
この戦いに一体どれ程の金をかけたのか。
「艦隊長、後方上空から飛行する物体を確認との報告です。そのまま敵艦隊へと向かっている模様」
「してその空飛ぶ魔道具は何機だ?」
「一機です。しかし、もの凄い速度で進んでいるとの事です」
「私が直接確認する」
双眼鏡を受け取り上空を確認する。
「なんって速度だ」
これ程離れた位置からでも分かる程の速度で敵の艦隊に向かっている。
「艦隊に向かって何か発射したな。しかし、あれでは当たらないだろう」
発射された何かは敵艦隊の上空で爆発した。
「一体何がしたいんだ?」
発射した空飛ぶ魔道具は更に上昇して敵艦隊の上空を旋回している。
「何か煙のような物が敵艦隊に降り注いでいるようたが、あれは何だ?」
「艦隊長、敵艦隊が一斉に動き出しました。しかし、妙に遅いようです」
「何隻か偵察に出せ。状況を確認させろ」
「偵察艦はやけに早く戻って来たな」
「艦隊長、敵艦隊が沈み始めました。船員が次々に海へ飛び込んでいます」
「一体何をしたんだ?」
「艦隊長、偵察から戻って参りました」
「状況は?」
「恐らくモンスターのコラージの体液による腐食だと思われます」
「そうか。敵は鉄の船だった事が仇になったか」
コラージの体液は金属を急激に腐食させる効果がある。その為鉄の武器では倒しにくいので嫌われもののモンスターだ。
「全艦隊への伝令、こちらからは救助に向かうな。船が沈む可能性がある。此方に泳いできた者だけを救助し、捕虜とせよ」
「了解」
これはまた凄い武器を作ったな。シルフェン王国は。
「ダクター、見てたか?」
「ああ、通信機で確認出来たぞ。そのまま撤退してくれ。荒野の方で回収する」
「了解」
どうやら上手く行ったようだな。これで大量の捕虜を捕らえられただろう。それにより向こうの大陸のより詳しい情報を得られるだろう。
気になるのは技術力と、空飛ぶモンスターが居ないかの確認だ。もし空飛ぶモンスターが居なければ、僕達がその大陸の制空権を独占出来るかもしれない。
戦争がしたい訳では無いが、向こうに飛行場を作れれば、色々な実験も可能だし、短時間での貿易も可能になるはずだ。
この大陸では荒野と海以外の場所はモンスターに支配されている。なので飛行機での商品の流通は出来ない。開発しても、資金の回収が出来ないのだ。
でも他の大陸との貿易で使えるならかなりのアドバンテージになるはず。資金の回収も楽に出来るだろう。向こうはプロペラ機だし、軍事でしか使われてないようだし。
プロペラ機は燃費は良いが、重い物を長距離運ぶのには向いてない。高い高度が出せない上に天候に大きく左右される。
勿論どんな物にもメリットやデメリットがある。要は使い方や目的次第って事だ。
「爺さんとゴドランはグリンと飛行機が戻り次第整備と点検を宜しく。僕はラビと一緒にコアの最適化を進めておくよ」
「しかし凄いのう。学習するコアとは。本来ゴーレムコアに刻印出来る命令は矛盾があるとたちまち役に立たなくなる。だからこそ複雑な条件付けは出来ない物なんじゃが。ダクターよ。わしにも一つ研究の為に分けてはくれんかの?」
「分かったよ爺さん。一つだけだよ。これ一つ作ると暫くは何も出来なくなる位魔力を消費するんだからね」
「分かっておるわ。これでもの凄い物を作ってやるわい」
後で皆に夜は強制的に寝かせるように伝えておかなくては。この爺さん、ほっとくと寝ないで実験するからな。
「爺さん、夜はちゃんと寝るんだよ?」
「フォッフォッフォ」
爺さんは笑いながらコアを持って逃げていった。
「全く。あの爺さんは本当に子供みたいだな」
「ダクターも人の事言えないだろうに」
「僕はまだ若いから良いんだよ。そう言えば、ゴドランの弟子の中でヒヒイロカネの加工出来そうな人は居る?」
「一人はもう少しって所だな。一応心当たりのある鍛冶師には連絡してみたが、どうなるかは俺にも分からん」
「そっか。さすがにゴドラン一人では限界があるからね」
ヒヒイロカネの加工にはかなりの魔力と技術が要求される。なので今はゴドラン一人で加工している状態だ。これでは開発も中々進まない。
「ダクター。国王からの連絡で、10日後には使者を送るとの知らせよ」
「ありがとう、エリン」
これで恐らくはオリハルコンの鉱石は手に入るだろう。
しかし、結局通信機は国王にも渡す事になったんだよな。一応レンタルと言う形にして毎月の支払い額を受け取って、代わりに専用の魔石を送っている。
因みに通信内容は全てラビが確認しているので、国王には全て記録される事も伝えたのだが、それでも使いたいとの事で2台だけ貸し出す事になった。
因みに国王の通信機の待ち受けには、王妃様と第一王女様と第二王女様の写真が設定されているのを知っている。別に知りたかった訳ではないんだけど。
「向こうの大陸に何か良い素材や新しい技術とかないかな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます