第22話

「見渡す限りに広がる海。ってか海しか見えない。もう見飽きたな」



「監視ってホント暇だよな。時たま見る船も漁船か、たまに来る商船位だしな」



「おい。あれは船じゃないか?」



「ホントだ。双眼鏡を貸せ。おい。おい。何かあれはヤバそうだぜ」



「一体何が見えるんだ」



「鉄の船だ。しかも相当の数だぞ。金を鳴らせ。旗も掲げろ。急げ」











「艦長。監視船からの急報です。北側3番艦から不審な船の船団を確認。巨大な鉄の船を先頭に此方に向かって来るとの事です」



「鉄の船だと?やはり陛下の懸念していた通りになってしまったか」



ここから北東方面にある大陸のカザルス帝国。我が国の商船が嵐に見舞われ、たまたま救助されてたどり着い大陸。



なんとそこでは鉄の船が浮かんでいた。木造では決して作れない程の巨大な鉄の船がだ。



その大陸では2つの強大な国が覇権を争っていると言う。そしてその戦争により技術が発展して豊かな暮らしを実現していると言う。



しかし、かの大陸にも問題があった。それは魔石の供給だ。一部の地域を除いてモンスターの領域は駆逐され、魔石の確保は現存するダンジョンに頼りきっている。



しかし、技術が発展すればする程魔石の需要は増し、更に魔石の不足は深刻化。それにより各国のダンジョンの奪い合いが発生。



そして強大な力を持った2つの国が周辺国を次々に属国かして、遂に直接争う事に。



しかし、2つの国の力が拮抗しているため、中々決着が付かず今も中規模の争いが起こっていると言う。



そこに別の大陸からの船がやって来た。その大陸ではモンスターが大量に生息していて、魔石の確保が容易だと。しかも文明の発展も遅れている。



「恐らくは魔石での貿易をしながら侵攻の準備を整えていたのだろう。そしてこの大陸の場所を特定して攻めてきたのだろう。しかし、我々もそれに対応出来るように鉄の船を建造していたと言うのに。我々の予想よりも攻めてくるのが早かったか」



「どう致しますか、艦長」



「足の速い船を本国に向かわせろ。我々はここで迎撃する」



「了解」










「遂に攻めてきたか。今動かせる鉄の船は何隻だ?」



「現在直ぐに出せる船は3隻です。建造中の船は間に合いそうにないとの事です」



「そうか。周辺国に知らせを走らせろ。特に海側の国には至急防衛準備をするようにと」



「かしこまりました」



「接敵した戦艦達でどれだけ時間を稼げるか」









「グリン、今回の操縦はどうだ?」



「前回よりもかなり操作しやすく感じるぜ。ただ、海の上を飛ぶのも良いが、早く陸地でも飛びたいな。空飛ぶモンスターと戦う日が楽しみだぜ」



「それにはもう少し飛行試験してからだな。速度は出せるけど、もう少し自由に飛べるようにしないと空の上では戦えないからね」



そう。今は村の近くの荒野を抜けた先にある海岸に来ている。



空飛ぶモンスターの領域は基本的に陸地の上だ。飛行試験をするなら海の上は丁度良い。障害物もないし。



今は前に作ったスマートフォン型の通信機を使ってグリンと会話をしている。



「よし。グリン、そろそろ戻って来い。着陸失敗するなよ」



「大丈夫だ。必ず成功させるさ」



実は前回は着陸に失敗している。機首の傾きでの減速に失敗して、胴体での不時着になってしまった。



グリンは無事だったが、飛行機の速度コントロールが問題になった。



そこで、根本的な設計を変更。速度を押さえて、旋回性能や滞空性能に優れ、積載量や航続距離に優れ、垂直離着陸が可能な飛行機。



翼の形が特徴的な形のハ○アーⅡの技術をベースに開発した。



それから着陸する時は必ずアブソープションが発動するようにした。そして細かな制御には簡易ダンジョンコアの学習能力を生かして制御している。



それらによりかなり着陸の難易度は下がっただろう。



「やったぜ、ダクター。着陸成功だ」



「よくやった。グリン」



これで、一先ずは成功と言っても良いだろう。音速の壁問題もあるが、そこは良い解決策がある。



「じゃあ全員撤収の準備だ」



すると村の方から魔道車がやって来た。



「また凄い物を開発されているようですな。ダクター殿」



「お久しぶりですね、宰相様。今日はどうされました?」



「こちらを陛下から」



国王からの手紙か。嫌な予感しかしないけど、読まない訳にはいかないしな。



「ではお預かりします」



これは。



まず驚くべき事に他の大陸から鉄の船の艦隊が攻めて来た事だ。最初に迎え撃ったのが騎士国だ。相手の鉄の船は足が遅く、騎士国側が翻弄する形に。



しかし鉄の船は頑丈で、遠距離からの魔道兵器では中々崩せなかった。



そして相手の鉄の船は鉄の塊を飛ばしてくる兵器を使用してきた。しかし、命中精度は悪いようで騎士国側には大きな損害はない。



そして騎士国の防衛ラインにて距離を取っての睨み合いに。攻めて来ない事に不審に思っていたら、空飛ぶ一団が飛来。



こちらの船団に攻撃すると思ったら大陸方面に移動。恐らくだが向こうの大陸には空飛ぶモンスターが居ないようだと。



そして大陸に侵攻してきた飛行機達は全てハーピーの一団によって壊滅。



どうやらプロペラ機の飛行機だったようで、ハーピーの風魔法で一瞬で墜落していったようだ。



それから作戦が失敗した相手の船団は広域戦に変更。陸地に向かっての砲撃を開始。



しかし、港町等には魔法使い等が防衛に参加しているため、マナシールドの連携魔法で砲撃を完封。



それでも相手の船団は諦めないので騎士国側からも攻撃を仕掛けるが、決定的な痛手を与える事が出来ず膠着状態に。



そして最近魔道具開発が進んでいるこのシルフェン王国に協力を依頼。



そして相手の船団を撤退させられれば特別報酬として、オリハルコンの鉱石を贈るとの事。そして僕達の工房への依頼となったと。



「フフフフ。宰相様、相手の船団を退けた場合はこのオリハルコンの鉱石は頂けるのですか?」



「勿論大きな功績を出せれば問題はない」



「分かりました。是非協力させて頂きます」



修復能力を持ったオリハルコンは是非欲しい。消耗の激しい部品に使えば大幅な改善が出来る。



「グリン。遂に実戦での出番だぞ。思う存分暴れてきて良いぞ」



「ん?実戦って何と戦うんだ?」



「相手は鉄の船だ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る