第21話

「これで飛行だけなら出来そうだな」



「じゃあ遂に飛行試験なの?」



「それにはまだ足りない物があるんだよね。でもここまで来れたのはリコメットのおかげだよ。ありがとう」



「そんな事はないわ。ダクターが頑張った成果よ。それで、足りない物って?」



「飛行してる時の連絡手段と、飛行するモンスターの撃退手段だね」



「確か、ガストン様とゴドラン様が開発された拳銃があったのでは?あれを飛行機に積めば良いのでは?」



「勿論あれは積む予定だけど、空の上で自由に動く相手に当てるのは難しい。此方も動いてるしね。出来れば追尾出来る攻撃手段が欲しいかな」



「そうなのですね。では飛行中の連絡手段の方は?」



「こっちが一番難しいかな。中々良い方法を思い付かないよ」



今の技術では無線設備を作るのは難しい。仮に出来たとしても、高速で移動する飛行機との通信は、高さの問題もあるけど、移動先にも電波塔を作らないと行けないし、中継局も沢山作らないといけない。



つまり現実的に不可能だ。



「そう言えば、ダクターとラビは念話で会話が出来るのよね?それを使ってラビに眷属を作って貰って、その眷属の話をラビが中継すれば出来ませんか?」



「ちょっとまって。ラビ、そう言う眷属を作る事って出来る?」



《可能です。ゴーレムコアに疑似人格を作り、簡易的なダンジョンコアを生み出す事が出来ます。その場合は私の眷属になる為、念話が可能です。ただその場合は発声器官が無い為、発声器官の魔道具を作る必要があります》



「なるほど。その簡易なダンジョンコアは、ゴーレムコアと何が違うの?」



《疑似人格が備わっている為、事前に条件付けを行わなくても念話での指示が可能です。最初は複雑な指示は難しいですが、学習能力があるため、少しづつ最適な行動が可能になります》



「凄い。ありがとうラビ。因みに、作るときはどの位の魔力が必要になる?」



《およそ、最高性能のゴーレムコアの10倍です》



「成る程。じゃあ1個は作れるか。これなら直ぐに作れそうだ」



「良かったね。ダクター」



「リコメットのお陰だよ。本当にありがとう」



「ねえ、ダクター。それが完成したら、私にも欲しいな。それがあったらいつでもダクターとお話出来るよね?」



もじもじしながら上目遣いで見つめて来る。



可愛い。



僕はリコメットを抱き締めたい衝動を拳を握り締めて必死に押さえ込んだ。



「分かった。直ぐに完成させるよ。何時でも連絡して来て」



「ありがとうダクター。とっても嬉しいわ」



リコメットはとても嬉しそうに笑った。何度見てもリコメットの笑顔は破壊力が凄い。



でもきっと、リコメットは他の人と結婚しちゃうんだろう。それを考えると悲しくなってくる。



僕が貴族にでもなれば結婚出来るかもしれないけど、貴族なんてなりたくない。



それにリコメットは貴族で、侯爵家で、これ程の可愛さだ。既に婚約者が居るかもしれない。



僕はそんな思いを振り払うように、空気を振動させるような刻印魔法が無いが調べる事にした。



最悪なければ簡易なスピーカーを作れば良いだろう。









「ダクターよ、完成したみたいじゃが、こんな物を何に使うのかの?それに頼まれた刻印魔法ははじめて見たぞ?」



「フッフッフッ。まあ爺さん、この新しいコアと刻印魔法を使えば面白い事が出来るよ」



そう、この新しい刻印魔法はラビが使っていた刻印魔法なのだ。普通は使い道が無い刻印魔法だけど、ダンジョンコアの特性を使う事によって完成した魔道具だ。



「まずは、ここを長押しして起動して」



「こうか。ふむ。何?なんだこれは?なぜガラスに絵が映っているのじゃ?これは一体なんなのじゃ?」



「実はね、新しい刻印魔法は特定の範囲の映像を映す魔法なんだよ。その特定って言うのがダンジョンコアか、その眷属の事。そしてこの映像はダンジョンコアが記憶した物も映せるんだよ」



この刻印魔法は、地下の草原を作る時に、天井に空の映像を写し出してたやつだ。それをガラスに反映させている。



まあ簡単に言うと記憶の中にあったスマートフォンってやつを、疑似的に再現した物だ。



画面タッチは再現出来なかったので、背面にある物理ボタンのキーボードをスライドして使うようになっている。



「これで、離れた相手の声や映像を見る事が出来るようになるんだよ」



「こ、こんな、こんな事が可能になるとは。わ、わしは夢でも見ておるのか?」



「大丈夫だよ爺さん、爺さんは既に死んでいて、ここは天国なんだよ」



「んな訳あるか。危うく本当に昇天する所じゃったわい。しかし、これは異常じゃ。これはヤバすぎるぞダクター?こんな物が存在すると言うだけで、何が起こるかわしにも分からん」



「まあそうだろうね。でも爺さん、遥か上空を高速で移動する飛行機との連絡には必ず必要になるよ」



「まあそうなんじゃが、これ、誰に持たせるのかの?」



「とりあえずは、爺さんとゴドランと、グリンとエリンと、僕とリコメットかな」



「まあわしらはここから滅多に出ないから良いとして、リコメット嬢は大丈夫なのかの?」



「勿論リスクはあるよ。とりあえず緊急時以外は人前では使わないようにしてもらって、侯爵様には話しておいた方が良いかもしれないね。それとお爺ちゃん、使い方教えるからちゃんと覚えるんだよ」



「ふん。直ぐに使いこなしてやるわい。それでダクターよ。これの設計図をわしにも見せてくれんかの?」



「ダメだよ。それにこれは大分特殊な条件でしか作れないから僕にしか作れないんだよ」



「まあそう言わずに見せておくれよ。ダクターよ。老い先短いこのわしに、冥土の土産に見せてもらえんかの?」



「そんな事言ってもだめ。それに爺さんめちゃくちゃ元気でしょ?もうあの桃分けてあげないよ?」



「仕方ない。わしの体はもうあの桃無しでは生きていけない体になってしまったからの。若返りで我慢してやるわい」



「贅沢な爺さんだな」


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