第3話 絶望と希望
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「それではいかにも眠そうなルーク、魔法を使うための三要素を答えなさい。」
突然の名指しに思わず体が跳ねる。
その様子を見ていたコナーがクスクスと笑いながらこちらを見ている。
「んああ…魔法?…要素? ゎかりません……」
「おーいルーク! いくらほかの教科ができても魔法学わかんねえならだいなしだぜ!」
背後から馬鹿にする声が聞こえる。
「だれだ!いまぼくをバカにしたのは! くそぉこれでもくらえ! ばくさつ__」
「こら!ルーク!」
パコッという音ともに頭がはたかれる。痛くはないが無視はできない衝撃を後頭部に食らう。先生御得意の〈弱衝撃魔法〉だ。
「…こほん。あんまりめちゃくちゃするとまたお母さまに連絡しますよ。」
「どうせするくせに…」
先生にはばれないように小言を呟き席に座る。
「…それでは、答えの続きは…爆殺されかけたジャック!答えなさい!」
「ええ!おれ!? ……ええと、まずは魔力! …っとあとはー、妄想力?だっけ?」
「…ふたりとも後でしっかりと復習すること。」
呆れた様子で先生は授業を続ける。質問を乗り切った安堵で再び瞼が重くなる。
「魔法を使うための三要素。一つ目はジャックの言う通り、魔力です。 そして、魔法の発現するときのかたちを決定する想像力。そして___
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「それで、どうするつもりなんだ。」
村を挙げて行われたエリーゼの葬式から数日後、徐々に明るさを取り戻していく人々とは対照的にいまだに悲壮感を周囲に漂わせているルークに、コナーが尋ねる。
「…わからない。」
「わからないのかよ!」
他の生徒がざわつく教室にコナーのツッコミが響く。
「僕は魔法のことに関して何も知らない。 まずはそこからだと思ってる。」
「んじゃ、魔法学のエヴァレット先生に聞いてみよーぜ。なんか手がかりになるかもしれねえ。」
さあ行くぞとばかりにコナーが立ち上がると、ルークはわずかに驚嘆した。
「やけに協力的だな、コナー。君は僕に怒っているのかと思っていた。」
「怒ってるぜ。そりゃな。エリーゼを笑顔で見送んなかったのはお前の罪だ。 けどな、俺だって会えるもんならもう一度エリーゼに会いたいんだ。 そしてそれができるのはルーク、お前だって俺は信じてる。」
「……コナー…。 すまない。確かに僕は間違っていた。あの時僕は必死だったんだ。 行動を間違えた。…僕がすべきだったことは、無能で役立たずの自分の力を信じることではなかった…。」
「謝るのは俺にじゃないだろ? さあ、ネガティブなままでいられるのは俺が持たねえ。さっさとエヴァレット先生のとこに行こう!」
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「エリーゼ様を復活、か。」
職員室の隣の面談室でルークたちと向かい合って座っている男性はこの村の学校で10年ほど魔法学の教師をしているエヴァレット先生だ。
「そうだよ!先生! ルークの魔力がありゃ絶対できると思って!」
コナーが机に手をつき身を乗り出す。
エヴァレットは椅子にもたれかかり、あごを触りながら机の端の方をじっとみて考え込んでいる。
沈黙が続き、ルークが固唾をのんで見守っているとエヴァレットが口を開いた。
「…この手の魔法の研究は古の時代に大量に行われてきた。…だがいまだかつて為し得たものはいない。なぜだかわかるか?」
エヴァレットは背もたれを離れ机に肘をついて腕を組み、二人の目を見つめる。
「…やはり、そのような魔法を使うには魔力が足りないから…ですか?」
ルークが答えるとエヴァレットは静かに頷く。
「それもある。…私が考える主な理由は三つだ。 ひとつ、魔力の問題。死者の復活、もはや奇跡と呼べる事象だ。魔法は現実離れしているほど莫大な魔力を消費する。そのため、相応の魔力を持たないものはそもそも魔法を使うことが出来ない。」
「でもそれなら…ルークには可能性が…」
「ふたつ、想像力の問題。復活させるというが、復活とはなんだ? 姿が同じ人間が現れれば成功か?その人が生まれてから経験した記憶を想像できるか? 魔力が尽きれば体は朽ちる。体はどのようにできているか知らなければ、体を一から作るのは無理だろうな。」
コナーも口を紡ぐ。想像できるのは復活した後のエリーゼの姿であり、復活する過程を想像することは不可能なことのように思えてくる。
「みっつ、倫理観の問題。命はすべて平等にあるべきだ。例えばルーク。君が死者を復活できる魔法を使えるようになったと仮定しよう。誰を復活させる?」
「…エリーゼ。」
「当然そう答えるだろう。 だがそれは魔法を使うのが君だからだ。 私の両親はすでに天国にいるが、もし私が魔法を使えても私は復活させる相手を選ぶことが出来ない。命は平等であり、優先順位など存在してはならないからだ。だれかがその魔法を発見すれば、いずれ世界にはその魔法を使えるものとそうでないものが現れる。それは命の平等に反する。現に今この国ではそのような研究は禁止されている。」
二人の顔が沈む。
「…私はなにも君たちを落ち込ませたいわけではない。 …魔法とは、希望だ。この世界に魔法が存在するのは人々が願ったからだ。 その願いをかなえるために魔法は生み出される。私が魔法学の教師をしているのは、君たちにできるだけ幸せになってほしいからだ。……だから、教師として君たちに道を示そう。」
エヴァレットはそういうと立ち上がり、面談室を出ていった。
エヴァレットが戻ってきたのは数分もしないうちだった。
エヴァレットはもとの席に座ると、机の上に2枚の紙を置いた。
「去年、君たちが修学旅行で王都に行ったのは覚えているか? そこでここに見学に行ったはずだ。 "王都魔法専門学校"、この国で最も優れた魔法の教育機関であり、最も最先端の魔法の研究が行われている場所だ。 世に出回っていない高等な魔法がここにならあるのかもしれない。 …そしてこの紙は、入学試験の申請書、それと私の推薦状だ。 この紙に署名すれば、来年の入学試験に参加することができる。」
「この学校に入学できれば…エリーゼを復活させる手がかりをつかめるかもしれないということですか?」
「教師として断言はしない。 だが間違いなく現代の魔法の限界まで知ることができるだろうな。 …どうする?うけるか?」
ルークとコナーは互いに顔を見合わせる。決意は固まったようだ。
「「当然、受ける!」」
MP=寿命の世界で!!~膨大な魔力を持つ僕はなんでもできる~ よめる よめ @YOMERUYOME
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