さよならラッキー7
サドガワイツキ
第1話
「お疲れ。大丈夫かよ宮木」
サッカー部の地区大会は散々な結果になりそうだ。本来であれば余裕で勝てるはずの相手校にボロ負け確実。FWの俺がスランプも極まりまともに動けなかったのだから仕方がない。
チームメイトも心配して声をかけてきたが、答える返事も上の空だ。
「りょーちゃん……」
ベンチに戻った俺に心配そうに声をかけてくるのは、サッカー部のマネージャーであり幼馴染の浦沢奈々。
―――諸悪の根元、すべての原因がどの面さげていってるんだか。何がりょーちゃん、だ。
ドス黒い衝動に叫びたくなるがグッと堪える。俺の復讐はここからなんだから。道連れにしてしまい大会を初戦敗退になってしまったのは申し訳なく思うが、今の俺のメンタルではまともに動ける筈もない。試合前にその旨は散々伝えたのだが結局レギュラーから外れることはさせてもらえなかったのだから仕方がない。
「調子悪いのか?無理すんなよ」
そういって声をかけながら肩を叩いてくるのは目野真。
―――俺から奈々を寝取った裏切り者の寝取り男がいけしゃあしゃあと。
結局、大会は初戦敗退。悔し涙を流す先輩やチームメイトには本当に申し訳なく思うが、俺の復讐はここからはじまるんだ。俺はクズだ。こんな手段で復讐をする俺はどうしようもなくおわっているやつだ。だが俺をこんな風にした幼馴染と寝取り男に復讐してやらないと俺は気が済まないのだ。俺と一緒に地獄に堕ちろ。
試合後、俺を心配しつつ一緒に帰ろうと声をかけてくる奈々を無視し、一人で帰った。今頃目野とホテルにでもしけこんでいるのだろうか?まぁ、せいぜい今を楽しんでろ。
俺はサッカー部の仲間たちのグループメッセージにとある動画を送った。
それは、顔こそ映っていないが声で分かる、奈々と目野が行為をしている所だ。
「幼馴染の彼氏を裏切ってヤる気分はどうなんだよ」
「いやっ、言わないで」
「言わないならここで辞めるぞ」
「キスまで止まりのりょーちゃんより、シてくれるからずっといい!」
そんな、聞くに堪えない言葉の数々。
「どうしてもこれが脳裏をよぎってサッカーができなかった。すまん」
そこからは驚き、慰め、そしてチームメイトの幼馴染の彼女を寝取った目野への誹謗中傷。グループメッセージは炎が着いたかの如くその話題でもちきりになった。
それから俺はクラスの親しい友人達がいるグループメッセージにも同様の動画とメッセージを送る。目野に彼女を寝取られた。生きるのもつらい。そう言って。
正直この復讐が終わったらどうなってもいいと自暴自棄になっているから本当にその通りなのだが。そこからは男子も女子もサッカー部のグループメッセージと同じ状況になった。
そして極めつけに奈々の両親にも同様の動画を送る…いや、贈る。
「奈々に浮気をされました。行為をしているのは俺ではありません。サッカー部の目野という男です。奈々が妊娠していたとしても俺の子供ではありません。俺はキスまでしかしていません」
そう送った後、奈々の両親からノンストップで着信が来たが全部無視した。
さぁ、明日が楽しみだな!!
次の日、いつもより早めに学校に登校すると待っていたクラスメートやサッカー部の友達に囲まれて、同情された。
それからしばらくして目野が登校してきたが、顔がボコボコにはれあがっていた。あの後奈々を連れて乗り込んだであろう奈々の両親にやられたか、自分の親にやられたか。血の気の多い男子達に囲まれ、自分の置かれた状況を理解した目野は声を出すことも出来ず震えていた。
「皆、気持ちは嬉しいけどそんなクズ野郎に手を出して停学になるのは良くない。こいつはどうせ退学だから」
そう言ってゴミを見るような目で嘲ってやると、逆切れした目野が殴りかかってきた。
「てめぇがハメやがったな!!そのせいで俺は親父にボコられたんだぞ!」
素直に殴られて吹っ飛んでやる。机にぶつかり、尻もちをつく。女子が悲鳴を上げているが、見た目よりは軽傷だから問題ない。
「はぁ?ハメたのはテメーだろうが寝取り野郎。不順異性交遊に校内での暴力。退学お疲れさん」
殴られた頬を抑えながら睨み返すと、自分の立場といました行動に青ざめて逃げ出す目野。これだけ目撃者がいる中で逃げたって無駄だよ。俺はこのまま病院に行って診断書を貰って警察に駆け込むつもりだ……お前には社会的に死んでもらうよ。
それから少し遅れて頬をはらした奈々が入ってきた。奈々が教室に入ってくると同時にその場にいた全生徒が奈々を無言で見つめた。まるでホラー映画だ。
「あ、あの、おはよう?私……」
そんな風に奈々が挨拶をするが、皆が一斉にひそひそと話を始める。
「うわ、浮気女だ」
「恥ずかしくないのかな?」
「宮木かわいそー」
すぐにひそひそ話ですらない音量となり聞こえるレベルの声でしゃべる生徒達の声に固まる奈々。助けを求めるように視線を動かし、尻もちをついている俺を見つけてこえをかけようとするが、先に俺が声をかける。
「何だよ浮気女。俺を裏切って目野とサカってたくせに」
そんな俺の言葉に顔を青くし、踵を返して走り去っていく。
なんだ、お前ら2人そっくりな反応じゃないか。
それからしばらくして目野は退学、奈々は自主退学になった。ちなみに俺は一週間の停学。隠し撮り動画をグループメッセージに送った時点でかなりアウトなのだが、それぞれの顔がうつらないように注意していたので首の皮一枚で繋がった。まぁ部活動の成績とか色々と大人の都合もあるのかもしれない。別に退学になっても良かったし、奈々たちに訴えられたってよかった。その覚悟でやったんだがそう言う事もなかった。
教室の机の中で、奈々が使っていた机が運び出されるのをぼんやりと見ながら、いつだったか奈々が言っていた言葉を思い出す。
―――大丈夫、りょーちゃんには私がついてるよ。ナナだからラッキーセブン、勝利の女神なんだから
さようならラッキー7。お前は俺にとってのアンラッキー7だったよ。
さよならラッキー7 サドガワイツキ @sadogawa_ituki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます