狂気、凶器、狂喜、驚喜、狂鬼、キョウキ、きょうき

冬眠

狂気、凶器、狂喜、驚喜、狂鬼、キョウキ、きょうき

 私にとって「ラッキーセブン」とは、あまりにも恐ろしすぎる言葉だ。


 あれは、私が二十歳を迎えた時だった。

 初めてパチンコ店に向かった。


 ビギナーズラックだったはずだ。

 一発目から7が三つそろったのだ。


 もう一度回してみても、同じだった。

 面白おかしくて、目を瞑ってみても同じ結果。


 数回それを繰り返した後、気づけば私の手元には、手持ちのお金だった一万円が倍、倍、倍と増えていった。


 頭がおかしくなるほどの金額を掴み、私はふらふらする足で自宅に帰る。


 週に一回店に通ったが、毎回勝つのだ。

 すべてラッキーセブンで。


 そして、私はパチスロのみで生活できるようになった。


 ある時、のどが渇いたからと自販機で飲み物を買った。

 確率でもう一本手に入るというものだった。


 「777」がそろった。


 ガシャンと音を立てて一本落ちる。

 また、ガシャンと音を立てて一本落ちる。

 止まらない。


 慌てて一本を手に取り、走り出した。


 行く先々で私が777人目のお客だとか、777個目のお土産購入者だとか、ラッキーセブンが私の前に立ち塞がる。


 おかしい。


 何度も、何度も、何度も、ラッキーセブンなのだ。


 私は、止まらないラッキーに気が触れてしまった。


 体に強い衝撃が起き、次に目を覚ますと、私は病院のベットの上だった。


 30代くらいだと思っていたはずのこの体は、あまりにもシワが多かった。


 看護師さんに話を聞くと、ここは精神病棟だそうだ。



 そして、思い出した。


 私は、ずいぶんと前からここに入院していたのだ。


 私は、身の回りで運のいい人が羨ましかった。


 パチ屋でラッキーセブンを当てる人を隣りでよく見たのだ。


 あの「7」が欲しかった。


 何度も懇願し、お金を出してはボタンを押しまくった。


 そして、執着した結果がこれなのだ。


 私が狂ってしまってから、誰も救ってはくれなくなった。


 もう、賭け事なんてやめてしまおう。


 私にとっては、あの「7」は悪魔の数字だ。

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狂気、凶器、狂喜、驚喜、狂鬼、キョウキ、きょうき 冬眠 @touminn

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