7の悲劇【KAC2023】

近藤銀竹

7の悲劇

「はあっ、はあっ……むぐっ」


 大量の酸素を求める肺と暴れる心臓を無理矢理抑え込み、動きを止める。

 路地裏に隠れた俺のすぐ横を、たくさんの枝を生やした刃物を持った男が走り抜けていく。


「ふぃんえあーッ!」


 奇声と足音が遠ざかっていく。

 なんてこった。

 まさか、観光地のド真ん中で七支刀を持った暴漢に襲われることになるとは……


 辺りが静まったのを確認して、街路に出る。

 それにしても、よくまわりの人たちは騒ぎ立てなかったな。結構目立つ暴漢だったと思うんだが……


「うわっと!」


 危ない!

 周囲ばかり気にしていたから、足元で七並べをしている子供を危うく踏みつけるところだった。道でトランプをするなと学校で習わなかったのか?

 急に体をひねったせいで体勢を崩す。

 よろけた先には海産物を焼く七輪が!


「ありたりあッ!」


 腕を振り回し、気合で七輪を回避する。しかしその先には七草粥の試食が! やっぱり火傷の運命かッ!?

 急に視界が空へ向く。

 腰に鈍痛。


「……いつっ……」


 どうやら側溝の鉄蓋で滑って転んだらしい。

 火傷よりはましか。


 今日は酷い日だ。

 あまり日の当たる場所を歩き回らない方がよさそうだ。

 とりあえず、日の当たらない……パチスロでもして日が落ちるのを待つか。


 台の前に座って、コイン投入。

 いきなり派手な効果音。


 ま……まさか。

 777スリーセブンだと!?


 台の下部からコインが吐き出される。

 ひたすらひたすら吐き出される。

 まさか。

 7なのか?

 7が俺を襲っているのか!?

 店を埋め尽くしたコインは、そのまま俺の体も飲み込んでいく……





「はんざッ!」


 飛び起きる。

 ゆ……夢か。

 酷くアンラッキーな夢だったな。

 だらだらと体を起こす。

 まったく。いま何時だよ……


「7時……だとッ!?」


 朝食もとらず、慌てて身支度をして家を出る。

 

 よ……よし。なんとかアクシデントなく駅に到着できた。

 お、ちょうどアナウンス。電車が来た。


『間もなく、7番線に……』


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