ラッキークッキーアンラッキー
春雷
第1話
色んなスマホゲームをしすぎて全部飽きてしまった。メジャーなものは全部やりつくした。それらはもちろん面白いのだが、やり込み過ぎて細かい部分での楽しみしかなくなってしまったので、俺はあえてアプリストアで下位に位置しているゲームをやろうと思った。いわゆるクソゲーである。
適当に見て言って眼についたのは、「クイズに答えて数字が揃えば百万円」という何とも怪しいアプリ。さっそくインストール。以下、鍵括弧はゲーム内で表示されたもの。
「このゲームはクイズに五問連続で正解したのち、スロットで数字を三つ揃えると百万円がもらえるというゲームです」
画面にイルカが出てきてそう説明してきた。ウィンドウズのイルカの転職先はここだったのか。やっと消えてくれたと思っていたのに。
「では、スタートです」
軽快な音楽が流れ出し、コナンのCМ入る前に出てくる扉みたいなものが出てきた。扉がパーンと開き、クイズが表示される(未来少年コナンのパタパタ回転して登場人物を表示するやつではなく)。
「第一問、湘北高校バスケ部顧問は?」
安西先生。
「正解」
よし。
「第二問、ライムを踏んでフロウを利かせてリリックを起こす人のことを何と言う?」
ラッパーかな。
「正解」
まあまあ。
「えーっと第三問」
えーっと、って言っちゃってるじゃん。今考えてるの?
「鍵を英語で?」
キー。
「正解」
どういうクイズ?
「第四問、夏にわらわら出てくるぎいぎい煩い虫と言えば?」
酷い言い様だな。蝉かな。
「正解」
口が悪いな普通に。
「第五問、夏目漱石と言えば?」
夏目漱石と言えば? どういうこと? 作品名を言えばいいの? なにこれ。
「ヒント使いますか?」
ヒントとかあるんだ。使う使う。
「ヒント:ぶんご〇」
あ、ほぼ答え言ってくれるんだ。文豪ってことか。
「正解」
何じゃこれ。
「五問正解したので、スロットスタート!」
数字が回り出す。これはちょっと楽しいな。
「7!」
お、幸先いい。
「7!」
おおー、二つ揃った。
「7!」
え! おわ! 揃った揃った。百万獲得だこれ。うおー!
と思っていたら、何やらずずーん、という悲壮な音楽。
え?
三つの7がひっくり返った。アンラッキー7と表示されている。なにこれ。
「ヒント:答えの頭文字を合わせてみて」
はい?
あんざいせんせい、らっぱー、きー、せみ、ぶんごう。
あ、なるほど。あんらっきーせぶん、ってことか。なるほどね。
うるせええええ!
納得できるかあ! 最初っから百万をやるつもりねえじゃねえか。
「次やりますか?」
次やってもどうせアンラッキー7になりそうな気ぃするけどなあ。
一応やっとくか。
「第一問、えーっとねえ」
だから今考えてるの?
「あー、ちょっと思い浮かばん。湘北バスケ部顧問は?」
さっきと同じじゃんか。つまんねえな。安西先生。あと、もうアンラッキー7にする気満々だよこれ。
「第二問、ラッコって言ってみて」
もうクイズでも何でもねえよ。ラッコ。
「第三問、鍵についてるあれ、何か、何て言えばいいのかな。あれは何?」
どんなクイズ出すか、事前に考えてくれよ。またクビになるぞこのイルカ。キーホルダー。
「第四問、石の器。のを抜かすと?」
石器。この回捨てたな、こいつ。
「第五問、角度を測る文房具と言えば?」
最後にやっとちょっと思いついたか。分度器。
「全問正解! スロットスタート!」
どうせアンラッキー7だな、これ。もう分かるもん。
「7」
あーもうアンラッキー7じゃん。揃ったあとでひっくり返されるじゃんか。
あー、クソゲーだわこれ。
もうやんねー。
「6、ざんねーん」
あ、普通に外れた。
ラッキークッキーアンラッキー 春雷 @syunrai3333
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