アンラッキースケベ

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

7つのアンラッキースケベ

 起床すると、なにやら重たい物体が俺の腹に乗っていた。


「朝だぞー」


 お隣に住むイツキが、俺を起こしに来たのである。


「く、くる、しい」


「あはは。ゴメンて」


 俺が青い顔になると、イツキがサッと腹から身体をどかす。


 登校時、春一番が吹いた。

 イツキのスカートがめくれる。


 だが、バレーのインナーを履いているため、下着は守られた。


「あはは。色っぽくなくてゴメンなー」


 照れ笑いをしながら、イツキはショートヘアーの髪をかく。


「コータはあたしより、もっとかわいい子の方がタイプだよなー」


「いやいや。そんな」


 一時間目、体育の授業のときだ。


 イツキが、透けブラをしていた。


「あははー。またエッチじゃないなー」


 それなりに大きいのだが、イツキの胸はスポブラなのである。


「ごめんなー」


 何を謝ることがあるのだろうか。


 三時間目、教室を移動する際に、プリントを持って来いと先生から言われる。

 職員室でプリントを受け取り、イツキと一緒に持っていく。


「おわ!」


 ラッキースケベなら、イツキのほうが倒れてきて俺が受け止めるだろう。


 だが、俺のほうがこけて、イツキがキャッチしてくれた。


「あぶないぞー」


「すまん」



 昼休み、屋上で弁当を広げる。


「コータって、ラノベとかマンガみたいな、ラッキースケベに憧れてるんだよなー?」


「そうなんだが」


 ラッキースケベなんて、そうそうあってたまるか。


 スケベは、ラッキーであってこそ意味がある。


「うわっと!」


 イツキの箸から、卵焼きが落ちた。

 地面に落下しそうなのを、俺はキャッチする。

 だが、握ったために崩れてしまった。


「すまん。責任持って食べるよ」


「え、間接……」


「ん、なんだ?」


「なんでもないっ」


 マンションへ帰宅後、俺は母から肉じゃがの鍋を渡された。

 隣に住むイツキに、食べさせるためだ。


「イツキ、入ってもいい、か!?」


「あーうー」


 イツキは、Tシャツと短パン姿で俺を迎える。


「しまったー。バスタオル一枚でお迎えするはずだったのに、寒くてきちゃったぞー」


「いいんだよっ。気にするなって。ほら!」


 肉じゃがを押し付けて、俺は退散した。


 就寝時、俺はベランダから「きゃあ!」という悲鳴を聞く。


「どうしたイツ……イツキ!?」


 なんと、イツキがベランダから落ちそうじゃないか。


「どうしてまた!」


 ベランダから身を乗り出し、イツキの手をつかんだ。

 

「ラッキースケベを成就しようと、ベランダから侵入しようとしたんだけど。足を滑らせて」


「裸足でやるからだ! 今助ける!」


 引っ張ろうとしたら、イツキの足がベランダから離れた。

 三階で宙吊り状態に。

 

「ゴメンね。迷惑ばっかり。コータには楽しい気持ちになってほしくて、ラッキースケベを色々試してみたんだけど、全部失敗しちゃって」


「いいんだよ! 俺には、お前がそばにいるだけでラッキーなんだから!」


「コータ!?」


「だから、ムリにスケベな思いをさせようなんて思わなくていいから! 俺は十分ドキドキしているんだよ!」


 俺はグイッとイツキを持ち上げた。


 無理に引っ張ったせいで、イツキごと部屋へ背中からダイブする。


「いたた。大丈夫コータ?」


「大丈夫じゃないな。少なくともイツキは」


「え? あっ!」


 イツキは、短パンが脱げてしまっていた。

 こんなときに、スケベが起きるなんて。


 俺はつくづく、ラッキーな男だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アンラッキースケベ 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ