エピローグ

「あーあ。行っちゃった......」


 アタシはアンタの姿が見えなくなるまでずっとトンネルの前にいたんだからね?

 アタシ、一応幽霊だから日光が当たって辛かったんだから!

 いややっぱりあんまり辛くなかったかもしれないけど......

 アンタがまだいたらちゃんと突っ込んでくれるんだろうな......


「はあ......」


 思わずため息がでた。

 絶対会いに来なさいよ?約束したんだから。男に二言はないわよ?

 ずっと待つからね!



 五年後



「五年かー。以外に長かったなー。幽霊さん元気にしてるかなー」


 僕は宮野伊織。今日、大学を卒業して、既に就職先が決まっている二十二歳。

 五年前の幽霊さんとの約束を守るためにもう一度このトンネルに来た。


「幽霊さーん?いるー?」

「来たー!」

「!?」


 幽霊さんは前にあった時と全然変わっていない......なんてことはなく......

 まさかの透明な体で宙に浮いているあの幽霊さんではない......

 みたいな夢の展開はもちろんなかった。

 本当に全然変わっていなかった。


「ちゃんと約束を守りに来たよ。幽霊さん」

「待ってたよ......アンタ......」

「そう言えば、あの時に名前言ってなかったから、ずっと『アンタ』呼びなの?」

「そう言えばそうね。名前何?アンタ?」

「質問までの決断が速いんよ!僕は宮野伊織。伊織って呼んでくれたらいいかな」

「伊織か。伊織は私と会えなかった五年間どうだった?寂しかった?」

「そんな恋人じゃないんだから......。でも、結構会いたいとは思ってたかな......」

「一晩だけでも私の色気は最強だったと......。なるほどなるほど」

「少なくとも、幽霊さんがボケ僕が突っ込みを入れてたことしか覚えてないんだけどな。あれー?お色気シーンなんてあったかな?」

「そこまで全否定しなくてもいいじゃないのよ!」

「はは!ごめんごめん!」

「アンタ変わったわね......」


 そう。僕は変わったんだ。不必要な外出禁止を言われたあの夜から。

 どうにかして、幽霊さんをちゃんとさせてあげるために働くって。


「ねえ、幽霊さん。成仏できたら何がしたい?」

「そうね。アンタと付き合いたいかな。大分気が合うみたいだし。アタシたち」

「うん。じゃあ、僕が今ここで成仏させてあげるって言ったら?」

「え?本当に?」


 幽霊さんが目に期待を込めて言ってきた。


「本当に出来るの?」


そして、僕は自信ありげにこう答える。


「うん。出来る。その為にお札やら、なんやら色々と用意してきた。あと、電話で妖?みたいなスピリチュアル的な存在のプロの女の人とも繋がってるから、すぐに成仏させてあげられるよ?」



 三年後



「伊織ー?準備できたー?」

「ちょっと待ってー!ペグどっか行ったー!」

「アンタ何してんの?ここにあるけど?」

「え、ほんとに!?あ、ほんとだ」


あの日、幽霊さんは成仏?というか転生を果たした。こんな非現実的な事があり得るとは思わなかったが、そんな事も無かったらしい。

妖とやらのプロの花格員さん?漢字が合ってるかは分からないが、その人曰くこういう事らしい。


「今、彼女は『妖』として生きている。大丈夫だ。別に人間の生活を普通に送る事が出来る。練習すれば、妖力も使える様になるぞ?修行するか?」


みたいな事を言われたけど、詳しい事は僕には分からない。

人間として生活するにあたって、一度は死んでいる存在なので、一から偽の戸籍を作ったりと色々と大変だったみたいだが、そこらへんは全部花格員さんがサポートしてくれたのでさほど困らなかったらしい。


「早く来てって言ってるのー!」

「今行くー!」


そんな訳で、今は無事にお付き合いさせてもらってます。結婚も遠くないかも......?

まあ、そこは時と運命と幽霊さんに任せようと思う!




                 完

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ユーレー 登魚鮭介 @doralogan

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