流石に帰宅......

「いや......じゃないけど、本当に帰らないと......。親に外出禁止にされちゃうかもだからさ......。またいつでも会いに来れるしさ......。悪いけど僕は本当にかえるよ......」

「そう......」


 そう言いながら、僕と幽霊さんはトンネルの前まで来た。


「絶対、会いに来なさいよ......」


 幽霊さんが静かな声でそう言った。

 そんな事を言われて会いに来ないなんて言える訳ないだろうがー!


「会いに来るよ!?もちろん!そんな事を幽霊さんに言われて、来ないヤツなんている訳ないじゃないか!時間がかかっても、絶対また会いに来る!だから、待ってて!」


 僕は一気にそうまくしたてると、幽霊さんは少し微笑んでこう言った。


「ありがと」


 そして、幽霊さんがそう言った瞬間、自転車にまたがっていた僕の背中を思いっきりおした。

 僕の体は物理の法則に従って、下り坂の山道を走りだす。


「わー!何してんだよー!」

「男に二言はないわよー!」


 そう幽霊さんが叫んだ。必死で後ろを見ると、もうそこに幽霊さんはいなかったが、幽霊さんの声は絶えず僕の頭に聞こえていた。



 ***



 幽霊さんの声が聞こえなくなった。

 僕はそのまま、山道を一気に下っていく。

 朝いちばんの空気がとても気持ちが良かった。

 トンネルの中が少しじめっとしていたから、余計にそう感じる。


「帰ったら怒られるだろうなー......。まあ、今更考えたってしょうがないか!」


 なんてことを思いながら僕はひたすらに山道を下っていく。

 気が付いたら僕は家に着いていた。

 でも、家に着いたのは夕方で、空がオレンジ色に染まりだした時間だった。


「た、ただいまー......」


 僕は恐る恐るドアを開ける。


「ん?伊織だー!母さん!伊織が帰ってきた!」

「え!?いーおーりー!」


 兄ちゃんが最初に出てきて、その次に母さんがすっ飛んできた。


「あなた!母さんがどれだけ心配したか分かってるの!?いやまあ確かに、自腹でかったキャンプグッズとかもあるから大丈夫だとは思って、そこまで不安ではなかったけど!」

「そこは素直に心配して!?」

「突っ込んでる場合!?」

「一番言われたくないよ!?」


 トンネルでは幽霊さんにボケられ、家に帰ったら怒られながらも母さんにボケられる。

 僕はどうしたら!?

 あと、以外にそこまできつく説教されなかったな。


「もう分かったわ!全然反省してないのね!これから高校卒業まで不必要な外出禁止!」

「嘘!?」

「嘘じゃないわよ!父さんが帰ってきたら父さんにお説教してもらいますからね!」



 夜



「あ、お帰り」

「伊織ッ!お帰りッ!心配したんだぞ!なんで一日で帰ってこなかった!」

「そ、それは色々と......」

「言い訳をするんじゃない!はっきりと答えなさい!」

「話せないよ!あんな非現実的な体験!」

「「「非現実的!?伊織あなた本当に何してきたの!?」」」


 これ以上話しても無駄な気がしてきた。

 もう諦めようかな......


「まあいいわ。高校卒業までは不必要な外出は禁止ですからね!あなたも、伊織の監視をするのよ!」

「そうだぞ伊織!父さんがしっかり監視してやるからな!勉強していい大学に入って、将来は父さんと母さんを楽させるんだぞ!」

「話飛び過ぎじゃない?」


 そんなこんなで僕は高校卒業まで不必要な外出禁止を言い渡された。

 そして、僕は一日ぶりの自分のベッドのなかで、一つの決心をした。

 大学の入学式の終わった日の夜にもう一度幽霊さんに会いに行く。

 なんてことを考えていると、いつの間にか僕は寝ていた。



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