ただの不幸体質の女に「アンラッキー7」なんて称号がつくはず無いでしょう。

まこ

負の引きの強さ


 打ち合わせのため喫茶店にいる訳だが、打合せどころではない。理由はこれから分かります。

 何故なら今から先生に愚痴をこぼすから。




 先生、聞いてくださいよぉ。


 いやそうな顔で溜息をつくのやめて下さい。泣きたいほど嫌な出来事に見舞われているのは私なんですから。


 耳を貸すだけありがたいと思え? まあ、確かにありがたいですけど、感謝してますけど。

 先生、いっその事、耳を貸すんでなく耳下さい。

 イヤホン型の通信機とかを装着して、四六時中私の愚痴を聞いてくれませんかね?


 やだ? ですよねぇ。


 早く話せ? わかりましたよ。


 すでにご存じの通り、私って引きが強いんですよ。え? 知らなかった?

 何かそれ系のエピソード話したことありませんでしたっけ? ない?


 では、今回の話の前に前置きとして私が高校生の時のありえない引きの強さの逸話を披露しましょう。

 高校生の時の話はしなくていい? 今回の話をしろ?

 まあ、良いじゃないですか。

 私の引きの強さは基本、負の引きの強さなんですよ。もちろん今回もです。

 高校生の時のは数少ないプラスの引きの強さなんですよ。今のマイナス状態を少しでも回復したいんです。私の心はもう瀕死なんです。


 わかったから話せ? ありがとうございます。有難うございます。

 では、


 高校一年生の冬休み、近所に文房具を買いに行ったんです。年末で、その日が近所の商店街の福引が最終日だったんです。で、出がけに母からついでに福引ひいてきてって頼まれたんです。

 うちの母は割とおおざっぱだったんで、福引の補助券をちゃんと集めないので全部で5回でした。


 何ですか? 私のおおざっぱな性格は母譲りだったのか? 余計なお世話です。

 続けますよ?


 といっても引きが強いって話ですからね。当然当たったわけですよ。なんと、5回中3回。1等、2等、3等。もう、外れの方が少ないんですよ? ガラガラまわしたらいろんな色の球が出てきて、カランカランならされて、恥ずかしいのなんの。

 表彰台独占ですもん。日の丸飛行隊ですよ。


 え? 古い? 福引は日本人しか当たらないから誰が当たっても表彰台は日本人が独占している?

 でも先生、日本人しか参加してないんだから、独占とは言わないのでは?


 なら日の丸飛行隊なんて言うな。

 まあ、確かに独占したのは私だし、そもそも、特賞の温泉宿泊券ですら2本あったから1等以下それなりの本数があったんでしょうけど。


 ちなみに、私の前にひいた人たちも、後に引いた人たちも普通に外れてるんですよ? 意味が分からないじゃないですか?


 今なら1等の商品だけもらって、残りは遠慮するとかできますけど、当時は内気な女子高生だったんですよね。

 私、顔を真っ赤にして恥ずかしがりながら、1等の米5kgと2等のハムと3等の味噌を自転車のかごに入れて持って帰ったんですよ。


 何ですって? あまりプラスじゃないような気がする? 商品もショボい?

 何を言ってるんですか? 街の商店街の福引ですよ? こんなもんですって。




 という訳で、今回の話です。


 3月に入って、今年ももう年度末じゃないですか?

 家の出版社、来年は新入社員が入るんですよ。


 そうです。待望の新入社員です。小さな出版社ですからね、今回は退職する人は無しで、新入社員が3人です。戦力増加ですよ。


 何ですって! リストラされないようにちゃんと働け? 失礼な! 働いてますよ? まあ、確かに、現在進行形でさぼっていると言えなくもないですけど。

 その分、打ち合わせの終わる時間が遅くなるだけだから問題ないじゃないですか?


 先生の時間を奪ってる? そんなこと言わないで付き合ってくださいよ?


 それでですね。歓迎会をするわけですよ。となると、幹事を決めるわけですよ。

 家に出版社は一応、公平にくじ引きで幹事を決めるんです。もう、全然公平じゃないんですけど。


 今年は社の飲み会が全部で5回あったんです。

 そうです。5回中3回です。この新入社員歓迎の幹事で今年3回目の幹事ですよ?

 7人でくじひいて5回中3回引き当てるってすごくないですか?


 しかもですよ、2月中旬からお店を探してるんですけど、まだ店が決まってないんです。うちの出版社はホテルとかの宴会場でなく、お店を貸し切りにするんですよ。

 電話しても電話しても、「その日は既に予約が入っています」って言われるんです。

 他の日なら大丈夫なのに、編集長の都合で日にちが決まってるんです。何故かその日はお店の予約が取れないいんです。


 もうですね、幹事のくじ引きの引きの強さと、お店の予約の取れなさ加減があまりに酷くて、先日、ついに私同僚から「アンラッキーセブン」って称号を付けられてしまいました。


 そうです。名前と掛かってるんです。


「アンラッキーセブン七瀬ななせ あん」です。


 先生、その顔やめて下さい。あれです。チベットスナギツネです。




 えっ? 知り合いの店がある。うちの出版社の近くですか?

 30人くらい入れます? 大丈夫だと思う? 先生、お願いします!


 えっ? そう言えば旅行中だった?

 七つの海を行く豪華客船の旅? 先生? 冗談でしょ?

 え? ホントなんですか?


 電話してみる? そろそろ帰ってくるはずだから大丈夫かもしれない?




 先生、どうでした?

 大丈夫!


 3月下旬に帰って、4月いっぱい店を休む予定?

 4月中は当然予約が入ってないからオッケーですって?

 先生サイコーです。


 ほほう? アメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、イタリアで食材を仕入れた?


 G7料理を提供する?

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ただの不幸体質の女に「アンラッキー7」なんて称号がつくはず無いでしょう。 まこ @mathmakoto

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