不運数セブン

桑鶴七緒

不運数セブン

これは、とある異世界でのお話。


数字の遣いであるお釈迦様が天界にていつものように世俗の数字達を管理している時に人間界での数字の中に不祥事を起こしたという情報が入る。

早速人間界の間に入り、僧侶たちがあたふためいているのをなだめて静まらせた。


「あなたたち。すでにご存知の通り、あの数字が不手際を起こしたと騒動が収まらないようで……」

「お釈迦様。どうやら、ある日本国の人間がパチンコという賭け事のような遊戯をされている際に、その人間の汚らわしい金銭の使い方がこの世の恥だと言い"7“の数字がそれを見兼ねて脱走したらしく、日本国全体における金融恐慌が起きているとの事なのです」

「”7”め。たったそんなことで逃げるなんてその方が恥ではないですか。皆さん、どうか彼がどこに隠れているか情報を集めるだけ集めてください。」

「了承した。……おや?何かが点滅して探知しているようですが、これは……世俗でいうところの銭湯、湯屋ですな」

「とりあえずそこに焦点をあててみていきましょう」


一方その頃日本国の人間界では、東京は下町に属するある銭湯の男性風呂側で大浴場にてかけ湯をした後、浴槽にぽちゃりと入りプカプカと浮かぶ数字の“7”が湯船に浸かっていた。


「あ~気持ちいい。いいなぁ~人間。こんな贅沢が真っ昼間からいつもできているなんて……」

「よう。あんた、数字の“7”じゃないか。何こんなところで何浮かんでいるんだよ?油でも売っているのか?」

「あ、どうもどうも。こけしさんも珍しいですね。性質が木製なのによく浸ってられますね」

「ずっと棚の上に居座っているようじゃ身も心も固まってしまいますよ。たま~になら、と、ここの銭湯を利用しても良いとうちのご主人さんか許してくれたんですわ。」

「あれ?“7”じゃないか。さっきテレビのニュースで脱走したっていうのお宅様だよね?」

「あはは。あれね、もうあいつらパチンコ台のスロットがなかなか数字の7が揃わない揃わないって1人で勝手に腹を立ててね。もう見てもいられないから一時いっときばかり離れただけですよ」

「それどころじゃないみたいだよ。世の中の“7”というすべての数字がなくなったって大騒動になっているみたい。ここの銭湯のレジスターの中に入っているお金たちも揃わなかったらどうするんだろう……」

「なぁに。今だけだからそのうち元の位置に戻れば済む話ですよ。……では、とりあえずお先に上がりますね」

「……随分悠々としているな」

「絶対どこかで誰かに怒られますよね」


浴室から出た“7”は体を扇風機で乾かし熱が冷めた後、番頭に挨拶をして銭湯の外へ出ていった。


しばらくしてパチンコ屋の中に入りパチンコ台の抜けたスロットのところに戻ったが、どうやら体がうまく収まらない。何度か試したものの収納できずにあたふためいてしまい、途方に暮れてしまいそうな気分になった時、ある光が店の自動ドアの前から差してきたのに気が付いて行ってみると、真っ白い雲のような景色が広がってその中に吸い込まれていった。


パタリと倒れた体を起き上がらせると、その目の前にはお釈迦様をはじめその周りを僧侶たちが取り囲んでいた。


「ひ、ひえぇぇぇぇ!あなたはお釈迦様ではないですか!?」

「どうやら目が覚めたようですね。数字の“7”。あなたは今までどこで悠長に気休めでもしていたのですか?」

「ああ、申し訳ございません。人間界に銭湯という大衆浴場がありまして。そこで少々湯船に浸って休んでおりました」

「……今、日本国で何が起きているかご存じですか?」

「私が逃げ出したことによって世の中にある“7”にまつわる数字が消えて困り果てているとお聞きしています。」

「反省は、しておるか?」

「はい……しかしお言葉ですが、私だけでなく他の数字達も何かと人間に振り回されるように支配されて疲れて果てている。ですから、ほんっの隙間でもいいから小休憩でも取りたかったんです。」

「誰の許可なしにそんな滅相な事をしてもよいと言いましたか!?」

「ももも、申し訳ございません。深く反省しております。ですから、お釈迦様もそれ以上お怒りにならず気を、どうか気を鎮めてくださいっ!」


数字の“7”は涙ながらに今回の騒動を引き起こしてしまった始末に責任を取るから“7”を世界から消し去るようなことをしないでくれと懇願した。

すると、お釈迦様は僧侶たちに今後“7”をどうしようか会議を始め、ある僧侶の意見でまとまりがついたようだ。


「あなたを一度地獄に落とす。」

「地獄……ですか……」

「そうです。今回は人間をはじめとする生き物たちをあやめたことと同じようなことを致した。だからひとつの体験として地獄を見てきて、そしてその後その鬼たちの下で猛省とした後すぐに元の位置に戻してあげます」

「それで、済むことでよいのですね?」

「ええ。では早速……この扉の向こうに階段がある。ずっと下へ下がっていくとある者が待ち構えているのでその者に今回の出来事を話し、反省してきなさい」

「分かりました。では、行って参ります……」


その後、地獄という場所がどうようなものだったか、行ったものにしかわからない世界であり、戻ってきた後も誰にも話さずに、通常の任務に全うせよとお釈迦様は告げたという。


そしてある程度の時間が経過した後、数字の“7”は元の居場所に戻ってきたという。


これは、あくまでも想像上のお話。


これを読んでいるそこのあなた。日頃からこの数字の“7”のように、何か似たような経験や思い当たる節でもありませんか?


いつもあなたを「誰か」が見ているんですよ。


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