地域密着型商店 スロットマート

那由羅

大当たりの日

 俺の家の近所には、スロットマート、という商店がある。

 スーパーはおろかコンビニもないような田舎にある、食品を中心に扱っている商店なのだが、ここにはちょっと独特なシステムがあるのだ。


「今日は野菜がお買い得かぁ」


 俺は、通称”スロマ”の看板を仰いでそう呟く。


 野菜や肉などの可愛い絵柄の真ん中に”スロットマート”と書かれているのだが、その横に”831”と数字が掲げられていた。


 これがスロマの特徴だ。この三桁の数字によって、店内のおすすめ商品が分かるようになっているのだ。


 ”831”は野菜、”029”はお肉と、語呂合わせになっている場合が多いが、記念日にちなんで、”214”をチョコレート、”622”をカニの値引き日にしている事もあり、個人商店ならではのいい加減さが面白い。


 一度だけ”505”という数字が掲げられた時があり、店長さんに訊ねた所、


『新人さんが缶ジュースの発注数を間違えちゃってねえ。ホラ、形が”SOS”に似てるだろ?』


 と、山積みになった缶ジュースの箱を見せてくれた。『助けて』という意味らしい。


 事前告知もしていないようで、看板を見て初めてお得商品を確認出来る、という仕組みだ。

 何でもスマホで通知が届く昨今において、その真逆を行く珍しいお店と言える。



 ◇◇◇



 ある休日の朝、スロマで騒ぎがあった。

 何でも、店舗に隕石が落ちてきたらしい。


 店長や従業員に怪我はなかったようだが、店舗は隕石によって派手に損壊してしまったようで、営業再開までにはかなり時間がかかるようだ。


 ただ、その日に掲げられようとしていた数字が、ちょっとだけ話題になった。

 決して、縁起が悪い数字ではないのだが。


 ───数ヶ月後、リニューアルした店舗でスロマは営業を再開したが、『また何かあったら困る』という理由で、隕石が落ちてきた日に使おうとしていた”777”の数字は使われなくなったそうだ。



 おしまい

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地域密着型商店 スロットマート 那由羅 @nayura-ruri

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