7のカードは妹のラッキー、姉のアンラッキー?
綾乃姫音真
7のカードは妹のラッキー、姉のアンラッキー?
深夜。両親が寝静まった頃合いを見計らって姉の部屋に姉妹が揃っていた。双子だけあって同じ顔で同じ声。体型も、ヒップが1センチ大きい姉とバストが1センチ大きい妹と、ほぼほぼ変わらない。髪型はその日の気分次第だけど、あとは寝るだけのこの時間帯では揃って下ろしているためにパッと見で見分けるのは難しい。わかりやすい違いは、ピンクを好む姉と、水色を好む妹。ようするに着ているパジャマの色だった。
「はいお姉ちゃん。好きな数字選んでいいよ」
妹の
「……」
真逆の表情を浮かべながら姉の
「わくわくっ」
優羽が今にも歌いだしそうなほどにご機嫌なのは、これから姉が引いたカードに書かれている内容を実行できるから。また、その内容がどれになっても優羽の欲望を満たせるモノだったから。
「――これにする。ラッキー7」
美羽が選んだのは7番と書かれたカードだった。
「お姉ちゃんはそういう選び方すると思ってた♪」
「うげっ!?」
心から歓喜の声を上げる優羽と、対照的に心底嫌そうな美羽。カードに書かれていたのは『ひと晩抱き枕になる』という内容だった。
「他のを選べば、すぐに終わったのにね」
言いながら優羽がカードを1番から返していく。『コンビニでアイス買ってくる』『土日のお昼奢り』『着せ替え人形3回』『ハグ4分』『だっこ5分』『膝枕6分』そんなカードが並んでいた。
「なんでこれだけひと晩の指定なのよ」
「ラッキー7だからだよ?」
「どこがラッキーなのよ。憂鬱なんだけどっ。あんたに抱き枕にされるとか勘弁! 絶対に変なことされるし! 完全にアンラッキーでしょ!」
「そう言いながらベッドに向かうお姉ちゃん大好きだよ?」
「うっさいっ」
「にやにや」
「口に出さないっ!」
「お姉ちゃん、もっと詰めて。壁側に行ってよ」
「……逃げ道塞ぐ気満々じゃないのよ」
渋々と言った風に奥に移動する美羽と、姉のベッドに遠慮なく入っていく優羽。
「お姉ちゃんどっち向くの?」
「壁に決まってるでしょ」
美羽は迷わず壁側を向く。これからのことを考えると、顔を見られたくなかった。
「ふーん、こっち向いてくれないんだ。なら後ろからおっぱい揉んじゃおうかな」
「待った、やっぱり可愛い妹の方を向こうかしらね」
「つまり、おっぱいに顔を埋める許可が出たってことでいいんだよね!?」
美羽は察した。これが妹の本命だったんだなと。選択肢が自分にあるように見えて、実質塞がれてしまっている。今更壁側を向けば、自分から妹に胸を揉まれにいく姉になってしまう。そんなのは嫌だった。だからと言って、このままだと妹が胸に顔を埋めてくるのを受け入れる姉になる……一応、後者はお姉ちゃんだしと自分自身に言い聞かせられてしまうのが尚たちが悪い。
いっそ、仰向けとかうつ伏せは? と考えるも、結局優羽の手が胸に伸びてくる未来が見えてしまった。
「……………………勝手にすれば」
身体を優羽の方に向けると、待ってましたとばかりに美羽が間髪おかずに抱きついてくる。言っていた通り胸に顔を押し付けてきた。
「ノーブラなんだね」
「あんたもでしょうが――あ、こらっ、顔を振るなっ」
妹からの指摘に顔が熱くなる。続く行動に抵抗しようとするも、抱きつかれたときにさり気なく両腕ごと拘束されているため、抵抗はもちろん逃げることも叶わない。
「お姉ちゃん、おっぱい大きいよね」
「あんたのが大きいくせに嫌味? ――ねえ、いくらなんでも脚まで絡めてくるのはやりすぎじゃない?」
全身で妹の体温と柔らかさを感じてしまって落ち着かない。美羽としては、むしろ双子の妹相手に心臓の鼓動が速まってる――ドキドキしてしまっている事実に気づいてバレないように必死だ。優羽の頭が胸元にある段階で誤魔化しようがないでしょうに、そんなツッコミが頭を過るも無視した。
「……今日はぐっすり寝られそう」
妹の言葉を聞いて、こっちは寝不足確定だから! と心の内で愚痴る姉。
「……おはようお姉ちゃん」
「……おはよ」
翌朝はふたり揃って寝不足。自分はともかく、優羽は何故? と不思議に思う鈍感美羽だった。
7のカードは妹のラッキー、姉のアンラッキー? 綾乃姫音真 @ayanohime
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