アンラッキー7を追放せよ

沢田和早

アンラッキー7を追放せよ

 その国は貧困にあえいでいました。度重なる天候不順によって農作物の収穫量は年々減少し、戦争と疫病によって労働人口は減少し、ヤル気のなくなった国民は犯罪に走って治安が悪化し、国力は衰退の一途をたどっていました。


「このままでは国が滅ぶ。なんとかせねば」


 王様は焦りました。すでに優秀な参謀、学者、賢者などは亡くなったり逃亡したりしていなくなっていたので、王様は毎日一人で悩んでいました。そんなある日、占い師がこの国を訪問しました。王様は喜んで今後の国政方針を占ってもらいました。占い師は答えました。


「7は不幸の数字です。この国の7を一掃すれば幸福がもたらされるでしょう」

「おお、そんな簡単なことでよいのですか」

(ふふ、バカめ)


 喜ぶ王様を眺めながらほくそ笑む占い師。実はこの占い師は悪魔だったのです。愚かな政策を実行させてこの国を不幸のどん底に叩き落とすためにここへ来たのでした。


「善は急げと言います。さっそく明日から始めましょう」


 王様は直ちに新法を発布しました。


「本日よりアンラッキー7法を施行する。今後7の使用を禁止する」


 7を追放するのは簡単でした。これまで採用していた10進法を廃止し7進法にすればよいのです。数える時は1、2、3、4、5、6と来て次は10、11、12……となるわけです。これでアンラッキーな7を使わずに済みます。8と9もとばっちりを受けて追放されてしまいましたが、それは大事の前の小事に過ぎません。


「21と53を足すといくつかな」

「74、じゃなくて104か」


 7進法をすぐ使いこなせるほど国民は優秀ではありませんでした。その国の経済はたちまち大混乱に陥ってしまい、隙をうかがっていた隣国によってあっと言う間に攻め滅ぼされてしまいました。


「やつらにとってはアンラッキー、オレにとってはラッキーな7だったな」


 占い師に化けた悪魔は大いに喜びました。

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