ミッション3「異能令嬢、お腹いっぱいパスタを食べよ」

 転校してきた妙な女にいきなりつきまとわれた。

 逃げるように講義をサボれば、逃げた先までついてこられて。

 ちょっとくらい歴史に興味があるのかと話してみたらうわのそら。


 おまけに今、学院内にあるカフェで一緒に飯を食っている。

 しかもテラス席。


「いったいどういう状況だよ」


「まぁ! まぁまぁまぁ! このヴォンゴレのパスタなかなかいけるではありませんの! 学食で出てくる料理とは思えませんわ! こちらのボロネーゼもじっくりと挽肉を炒めてあって――トマトと肉の旨味が合わさって最高ですわ!」


 出された料理をテーブルに置かれた先から平らげていくアホ令嬢。

 カスクートを一息に平らげ、水菜のサラダを呑むように頬張り、挙げ句の果てにパスタを二刀流で食べている。


 淑女レディとは。

 令嬢とは。


 わからん。

 俺にはなんもわからん。


 資料室で間抜けに腹を鳴らしてからというもの、随分と印象が変わった伯爵令嬢――アン・ゴールディに、俺は心を乱されっぱなしだった。

 もちろん悪い意味で。


 まだ講義終了時刻ではないがここはカフェのテラス席。

 道行く人が「なんだあの大飯ぐらいの女は?」と顔をしかめ、そのついでに俺の方を見て「あぁ、特務中尉どのの……」と囁いていく。


 とんだ辱めだ。


 腹を鳴らして恥ずかしそうに狼狽えるアホ令嬢に同情して、「学院内のカフェでよければ案内してやるぞ」なんて言うんじゃなかった。あるいは、こいつをここに置いてさっさと帰るべきだった。


 なんで同じテーブルに俺は座ってしまったのだろう。


 後悔がアホ令嬢が平らげた料理の皿と共に積み重なっていく。

 胸焼けした気分でレタスとハムのサンドウィッチを囓った。


「もう、その辺にしておいたらどうだ? その……お金とかさ?」


「馬鹿にしてもらっては困りますわ。私、これでも伯爵令嬢でしてよ。お金には不自由しておりませんの。すみませーん! 次はオニオングラタンをお願いしますわ!」


「まだ食うのかよ……」


「日々の活力はまず食事からですわ! よく食べ! よく働き! よく眠る! それこそが逞しい淑女レディの基礎でしてよ!」


淑女レディってのはもっとこう――いや、なんでもねえや」


 無理矢理サンドウィッチを胃の中に押し込むと珈琲を啜る。

 濃縮されたコーヒー豆の苦みに目が冴えた。陶磁のカップに注がれたエスプレッソ。珈琲の本場で知られるオズマール帝国の「銅製のカップで豆ごと煮だす珈琲」に勝るとも劣らない味だ。まぁ、珈琲をそれほど飲み比べた経験はないが。


 そして、珈琲の味と同じくらい、目の前の女が何を考えてるのかわからないが。


 どうすりゃいいんだと俺は重い溜息を木製テーブルに吐き出した。


 ふと、校舎の方から講義終了を告げる鈴の音が鳴り響く。もう少ししたら、この院内カフェに多くの生徒がやってくる。同級生、上級生、下級生。これからさらに、この痴態を人に見られると思うといよいよ俺の精神が耐えられない。


「腹はいっぱいになったな? それじゃ、俺はこれで……」


 四つ足の椅子を後ろにずらして立ち上がろうとする俺。しかし、そんな俺の腕を引いて「お待ちになってくださいまし!」と、アホ令嬢はなぜか引き留めた。

 しっかりと空いている方の手でパスタを口に運びながら。


 食うのか喋るのか、どっちかにしてくれよ。


「なんだよ、まだ何か俺に用なのか?」


「ひへ、ほうほいうほどのほほほは」


「口の中を空にしてから喋ってくれ、お願いだから」


「んぐぐ! 用というほどのことはありませんわ」


「そう。ほんじゃ、俺はこれで」


「けど、せっかくこうして同じテーブルを囲んでいるんですもの、もう少しお話しませんこと? 私、もっとシグルズさまのことを知りたいですわ? もぐもぐ……」


「話したいのか飯が食いたいのかどっちなんだよ」


 無理矢理その腕を振りほどいて立ち去ることもできた。

 けど――なぜかそれができない。さっき教室から出るときにはできたことが、どうして今の俺にはできなくなっていた。


 たぶん、理由は資料室でのやり取りだ。


 俺に『水晶のインク壺』について尋ねたこの女に俺は興味が湧いたのだ。


 金持ちの道楽か。

 それとも将来有望な婚約者でも見つけるつもりなのか。

 伯爵令嬢が王立学院に編入してきたことに俺は偏見を持っていた。


 どうせ史学好きなんてのは嘘っぱち。

 なにか裏があるのだろうと。


 けれど、古代文明に興味がなければ地史学資料室になんてやって来ない。

 史学科に所属している生徒でもあの資料室を訪れることは希なのだ。

 それこそ史学科に在籍しているのに一度も脚を運ばないくらいに。


 あの『水晶のインク壺』に目をつけたのもはっきりいって好印象だ。

 中に描かれているのが神々だと言い当てたこともだ。古代文明――バビロンについての教養がなければ、インク壺の中に施された意匠が神だと気が付かないだろう。


 事実、ピエールの奴は俺が説明するまで気がつかなかったし、しても「だからなんなんだ?」という感想しか返さなかった。


「なぁ」


「んぐ?」


「お前はさ――」


 そこまで口にしてどう尋ねるべきか迷った。「史学が好きなのか?」なんて聞いた所で、教室で彼女が語った以上のことは出てこないだろう。


 きっと「好きだ」と彼女は答える。

 けれど、俺が求めているのはそういう答えじゃない。

 じゃあこのアホ令嬢がなんと言えば納得するのか。


 考えあぐねいた末に俺は――。


「家族とかいるの?」


 逃げるように話題を逸らした。


 逸らし方が拙かったのだろう。

 きょとんとした顔をしてアホ令嬢はパスタを食べる手を止めた。

 フォークをテーブルの上に置くと、彼女は申し訳程度に口元をナプキンで拭って、それからサファイアのように赤い瞳を瞬かせた。


 見ていられなくてまた珈琲を啜る。けれども、カフェを立ち去ろうとしていた俺のエスプレッソカップには、一滴も黒色の液体は残っていなかった。


「家族、ですか? どうしてそんなことを?」


「いや、悪い。どうでもいい話だな、忘れてくれ……」


 ほんとそんなことを聞いてどうするんだ。

 このアホ女に妹がいようが、弟がいようが関係ないだろう。

 無難に天気の話でもしておくべきだった。


 しかし、俺の後悔とは裏腹に――。


「父が一人。東部の街に残してきました」


 アホ令嬢は俺の質問に律儀に答えた。どこかバツの悪そうな笑顔までつけて。


「お父さんが伯爵なんだよな?」


「えぇ」


「伯爵ってことはどこかに所領があるのか?」


「中海に島を一つ。漁業と檸檬の栽培が主な収入源ですわね。と言っても、祖父の頃から代官に領地経営を任せて、私たちは都会暮らしですが」


「なるほど。文句のつけようがない伯爵令嬢だ。史学を志すとは思えないくらいに」


「ただ、一度だけ父に連れられて島に渡ったことがありますを」


 瞳を閉じて彼女が深く息を吸い込む。

 朝からの騒々しさが全部嘘に思えるような落ち着いた居住まいを見せると、彼女は再びその紅い瞳をこちらに向ける。


 俺の姿をその瞳の中に映しながら、彼女はここではないどこかを眺めていた。


「島の東岸に石造りの灯台がありましたの。とても古い。とてもとても古い。誰がなんのために建てたかも分からない灯台が。今はもう使われていませんけれど」


「灯台か」


「塔の頂上には巨大な石造りの暖炉があるんですの。塔の屋根をそのままぶち抜いた方が早いような煙突を備えていて、煤がびっちりと壁面にこびりついていて。幼い私は、そこで『煌々と火を焚いて海に光を灯していた』と、思いましたわ」


 俺は「それは違うだろうね」とあえて言わなかった。


 口にしたからには彼女はちゃんと知っているのだろう。

 黙って俺は令嬢の次の言葉を待った。


「灯台って鏡を使って光を届けるんですのね。私、それを知った時、『あぁ、なんて私は浅はかなのだろう。目に見える世界の表層だけをなぞって、物事を分かった気分になっていただけなのだ』と、頭を殴られた気分になりましたわ」


「まぁ、灯台にも色々な種類があるからな。古くは鏡と魔法。今はフレネルレンズを使うのが一般的だ」


「よくご存じですわね」


「まぁ、これくらいの知識はな」


「それからですわね。もっと世界のことをよく知りたい、自分が生きている世界の有り様を、人の営みの有り様を、正しく理解したいと思った。そのためには――史実を知るのが手っ取り早いと思いませんこと」


「理には敵っていると思うかな」


 澄ました顔でそう言いながら、百点満点の回答に俺の胸が高鳴った。

 こんな事を言う女性――史学科には少なくともいない。いや、そもそも学院の史学科に女性がそんなにいないんだけど。


 よく見なくても整った顔。

 黙っていれば王侯貴族の肖像画のようだ。

 紅く爛々と輝く瞳を向けられただけで汗が止まらなくなる。

 匂い立つ薔薇のような香りに、彼女と同じ場所にいるのに罪悪感さえ感じる。

 そして、輝く黄金の長髪――。


(こんな美人に言い寄られたら、どうにかなるよなぁ……)


 そう思ってしまうのは、きっと彼女が社交界で身につけた技術によるものなんだろう。男ならば誰もがみな彼女を前にすれば、俺と同じ気持ちになるに違いない。

 俺は彼女に抱いた感情をそう無理矢理結論付けた。


「すみません、珈琲おかわり」


「こちらもこちらも! デザートにプディングをお願いいたしますわ!」


「まだ食べる気なのかよ……」


 呆れるほどの彼女の食い気と煮出された珈琲だけが心の救いだ。


◇ ◇ ◇ ◇


 やれやれ、危なかったですわ。

 ジョンから生まれ故郷(本国の離島。中海でもなんでもない大洋に浮かぶ島)の話を聞いておいて正解でしたわね。


 一般人エージェントの彼と違って、私たち異能令嬢は、生まれた時から女王おねえさまが運営する特殊機関で養育されていることもあって、家族の話とかの引き出しがありませんの。

 適当に誤魔化すことはできますが、真実味を持たせるのは大変なんですのよね。


 ありがとうジョン。

 貴方が熱っぽく語ってくれた故郷への郷愁は――こうして立派にミッションの役に立ちましてよ。


 しかし、男の人ってこういう話にホント弱いですわね。


 夜会での駆け引きやこれまでの経験から、なんとなくシグルズが私への態度を軟化させたのは分かりました。あともう一息。なにか彼の興味を引くエピソードを話すことができれば――彼を落とすことはできそうですわ。

 私に惚れさせてしまえば『冥界のデスマスク』を手に入れるなんて簡単。


 彼の部屋に遊びに行きたいと意味ありげに言えばいいだけ――。


 なんですけれども!


「まぁ、私が史学を志した理由なんてその程度のものですわ。王国陸軍特務中尉シグモンドさまのご令息、シグルズさまのような野望も大願もございませんの。がっかりさせてしまいましたかしら?」


「……んだよ、煽ってんのか?」


「いいえまさか、とんでもとんでも。けれども、私のことを『史学科ってなりじゃない』とおっしゃるほどですから、さぞ内に秘めた熱い想いがおありなんでしょう?」


「あれはその……」


「成り行きでこちらの学院に入られたんですってね? その割りには、地史学資料室なんかに入り浸って、随分と熱心に勉強なさっているようではございませんの! 官僚になるためだけに、間に合わせで入った人間が――あんなかび臭い場所にわざわざ行きますかしら? 私、どうにも納得がいきませんわ~♪」


 私は、いい感じになった空気を自分の手でブチ壊しました。

 これが社交界での男女の駆け引きならうまくやれましたわ。このままさらに、相手の望む理想の女性を演じて、好意をチラつかせて、つけ込んでくる隙を見せて、手玉にとってやるところでした。


 けれどもダメ。

 シグルズはなんかダメ。

 うまくいかない&できませんのよ。


 というかその瞳が見ていられませんのよ。

 なんなんですの。あからさまに私の嘘八百過去話がはじまった途端、爛々と輝くその鳶色の瞳は。話していながら罪悪感で窒息ししてしまいそうでしたわ。

 もの凄い勢いで百八十度裏返った感情にこっちがついていけませんの。


 こんなピュアピュアな男子――毒牙にかけられませんわよ!


 もうっ!


 ガラス瓶に詰められたプディングを突きながら、私はシグルズから視線を逸らして鼻歌を口ずさみましたわ。授業が終り人通りが多くなったレンガ敷きの道を眺めながら、内心必死の想いで頬の火照りを冷ますのでした。


 私ってば、諜報員向いていないのかもしれませんわね――。


「そうそう、思い出しましたわ。シグルズさまのお父様は、王国陸軍特務中尉さまですのよね?」


「……なんだ。お前も、親父の権威にすり寄る人間だったのか」


「はて? 権威? 古代文明の研究調査をしていらっしゃるとは聞きましたが――それがいったいどのような権力に結びつきまして? 研究者というものは、もっとも政治権力から遠い所にある人間ではございませんの?」


「親父は学者の前に軍人だよ。それに……」


「それに?」


 なんだか話が思わぬ方向に転がりましたわね?

 というかシグルズは、シグモンドが何をしているか知っているのかしら?


 だとすればシグルズが『冥界のデスマスク』を受け取ったという、情報部の推測にも真実味が出てくる。同時に今回の騒動に彼も関わっていることになる。


 最悪、私がシグルズを手にかけなくてはならない。


 脳裏に『私の金毛がシグルズの身体を貫いている』映像が流れる。

 彼の胸から湧き出た血液が、私の黄金の髪を汚していく。髪を伝って私の頬を、シグルズの中を流れる温もりが触れる。


 それを考えただけで、私は。


 私は――。


「おや? お二人さん、仲良くいなくなったと思ったらこんな所でデートかい?」


「「ち、違う!」いましてよ!」


 妄想の世界から私を引きずり出したのはシグルズの友人。

 赤毛の元青年軍人――ピエールでしたわ。

 授業が終って彼は護衛対象のシグルズを探していたのでしょう。


 正直、ほっとしたというか。気が抜けたというか。

 思わず緩んだ気と手元。爽やかな好青年の突然の登場に――私は手の中からプディングが入った瓶を取りこぼしました。


「おいおい、なにやってるんだよ⁉」


「アンさん⁉ すまない、急に出てきたものだから驚かせてしまったね⁉」


 ぽとりと落ちたのはスカートの上。

 瓶の口から食べかけのプディングと底のカラメルが、じんわりとスカートに広がっていく。その様子を、なんだかちょっと心ここにあらずという感じで見ていると、シグルズが颯爽と私の膝元に駆け寄ってくる。


 すぐに紺色のスカートの上からプディングを除けると、彼は胸ポケットから取り出した木綿のハンカチーフで、濡れた私のスカートを優しく拭う。

 別に紳士として洗練もされていないし思いやりも感じない雑な対応。

 なのに、どうしてか私は――そんなシグルズに目を奪われてしまいました。


 なんなんですの、彼を見ていると感じるこの胸のもやもやは。

 まるでこの世の悪意も、汚い真実も、新聞でしか知らないような顔をして――どうして私はこの男の一挙手一投足に、ここまで動じてしまいますの。


 きっと薄幸の美少年という顔立ちがいけませんのよ。

 社交界で私が相手にしてきたのは――権威を笠に着た鼻持ちならない中年男か、そんな男の縁者のどら息子。こういう実直なタイプはいませんでしたもの。


 間違いなくそのせい。

 はじめて相手にするタイプの男性に、きっとまだ心が対応仕切れていませんのよ。

 どうかそういうことであってくださいまし。


 そんな私の顔を見るなりピエールがなんだかバツが悪そうに顔を背けた。


 どういう反応でございますの?

 なんで私の顔を見て「ヤバい!」って感じに顔を逸らしましたの?


 今、もしかして私ってば――。


「ひゃん! ちょっ、どこを触っておりますのよ!」


「あっ! すまん! そこまで触るつもりは……!」


 茹だる私の太ももをシグルズのハンカチが撫でて、私は悲鳴を上げました。

 それは、乙女の柔肌をいきなり触れられたのですもの、顔が真っ赤になるのは当然でしてよ。磨き上げられたテーブルにぼんやりと反射する私の顔を目の端に追いやりながら、私は「いったい何をなさいますの!」とシグルズに怒鳴るのでした。


 ほんと、どうしてこうもうまくいきませんの。


 私しかできないとはいえ、厄介な任務に首を突っ込んでしまいましたわ――。


◇ ◇ ◇ ◇


 完全にノープロット(ということもないのですが、各話で何を書きどこまで書くかみたいなプロット細部まで詰めきれていない)なので今回はここまで。

 次回でなんとかシグルズの部屋にアンを招き入れて濡れ場――と見せかけたゴリゴリ不死身バトルをやりたいなぁとか思っておりますが、ちょっとお仕事が立て続けに入ってきて&VTuberの方の続編を書くので身動きがとれない感じです。


 というわけでエタります。(バシバシ切らないとこの世はやっていけない)



 さらりと今後の展開を書いておきます。


・シグルズの部屋へとうまく招かれるアン。部屋の鍵を魔法でコピーする。(その際に、シグルズを誘惑するが断わられてしまう(胸キュンポイント))


・コピーした鍵でシグルズの部屋に入るが、ピエールになぜか見つかる。


・ピエールが元山岳部隊の精鋭&異能殺しの能力持ち(特務中尉にその能力を買われて拾われた。部隊の思惑は知らないが個人的に特務中尉に信服し、シグルズのことを好いている。善人キリングマシーン(いいよね!))で、アンが殺されかける。


・アン瀕死の状態で裏山に捨てられた所をルディに回収。ピエールの異能殺しが『近くにいる異能令嬢の能力を無効化する』と教えられる。


・おぼろげな記憶を頼りにシグルズの部屋の状況を思い出す。だが、『冥界のデスマスク』とおぼしき書物はなかった。この件は、「情報部の勘違いではないか?」とルディに主張する。


・一方、シグルズがラーグナーにアンのことを隠して相談。「恋文を書いたらどうか?」と提案される。言われてシグルズは父から「万年筆のインクを入学祝いとして贈られた」ことを思い出す。


・ピエールに殺されたため自由に動くことができないアン。資料室でまた偶然を装って出会おうとするが――ラーグナーが特務中尉の信奉者であることを知る。


・『冥界のデスマスク』とは「ラピスラズリに彫り込まれた法典」で書物ではないことがわかる。また、その一部を粉砕し顔料に変え、『水晶のインク壺(冥界のデスマスクと同じレベルのヤベー古代兵器)』に注ぐことにより、「名を書いた者を呪い殺す」秘術が使えることが判明する。


・アンがラーグナーに立ち向かうが、不完全な『水晶のインク壺』の効果で半殺しにあう。さらにその状態でシグルズに見つかってしまう。


・ラーグナーがアンの正体をシグルズにばらす。彼の手に『冥界のデスマスクから作られたインク』が渡される。そのインクでラーグナーがシグルズの名を記す。「特務中尉から、息子を殺して証拠隠滅しろ」と言い含められたことを知る。


・アン、女王から教えられていた禁じ手――『自分の異能を他者に一度だけ分け与える』を使いシグルズを蘇生させる。たじろぐラーグナー。今度は、アンを信じるシグルズがラーグナー相手の盾になる。


・完全復活したアン。髪の秘術でラーグナーを絞殺する。そこにピエールが到着。


・アンを殺そうとするピエールにシグズルは全てを話す。その話に、ピエールはなぜか納得し、アンを殺すことを止める。また、ラーグナーが異能令嬢により殺され『冥界のデスマスク』が奪われたことにし、シグルズを助けることになる。


・ピエールと別れてシグルズの自室へ。『不死のバケモノ』にしてしまったことを侘びるアンに、「気にしないでくれ。君と同じになれて嬉しい」と気丈に答えるシグルズ。すると、そこにルディがなぜか瞬間移動せずに訪問する。


・情報部がアンとシグルズの関係に注目していること。両人に「ダブルスパイ」として活動してもらいたいことを告げられる。また、アンは『自分の異能を他者に一度だけ分け与える』代償に、『異能者は異能を分け与えられた者の前で、異能を使えなくなる(ピエールと同じ)』ことを告げられる。シグルズは「不死者」であると同時に異能令嬢の天敵である「異能殺し」になってしまった。


・かくして、アンは学院への潜入任務続行。要注意人物の「異能殺し」の監視という名目で、シグルズと学園生活を送ることになる。(了)


☆なお、ピエールの「異能殺し」は過去にルディから禁じ手を受けていたから。山岳部隊のクーデターを阻止したルディは、クーデターに無理矢理巻き込まれた(そしてクーデター阻止のためにルディに協力した)ピエールと一時雪山で遭難しており共同生活を送っていた。その際に、彼をどうしても見捨てられず「禁じ手」で能力を譲渡し帰還した。ピエールはその後、ルディのことを探しており、ルディはピエールから隠れている。という裏設定。(シグルズの部屋に急に現れる描写や、「異能殺し」になる条件から、「もしかして……?」と読者に思わせる程度の記述に留める)


 ここまで書いたのでなんとかやれないこともなさそうですが、ちょっとお金になる方を優先させてください。カドカワBOOKSが「やりたい!」っていうなら、急いで原稿は仕上げます。(創作者としてどうなんだとは思うんですが、これにリソース割いてお金をもらう仕事が中途半端になることの方がよっぽど申し訳ない。すみません、中途半端な状況ではじめてしまって……m(__)m)


 以上。エタった文句は全部「からあげ」落として今年の収入計画をおじゃんにしたカドカワBOOKSにお願いします。(嘘です)

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異能令嬢007 ~悪役令嬢は何度でも死ぬ~ kattern @kattern

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