魔の7回
広之新
アンラッキーセブン
今夜はプロ野球AAAチームとBBBチームが対戦する。場所はBBBチームの本拠地、CCCスタジアムだ。AAAチームファンの私は久しぶりに球場まで足を延ばして応援しようと思った。
私は子供のころからAAAチームを贔屓にしている。それは私がAAAチームの本拠地に近いところに住んでいたからだ。そこでは9割9分、AAAチームのファンになる。そうでなければ郷土愛ゼロと言われてしまう。
それはともかく、子供の頃は何度もAAAチームの本拠地であるDDD球場に行った。そこで大きな声を出して応援するのである。勝っていようと負けていようと・・・そして7回の裏の攻撃の前にはアナウンスが流される。
「AAAチーム。ラッキーセブンの攻撃です。皆さまご声援ください!」
そして応援歌が流れ、そこにいる全員が歌い出す・・・それが印象深かった。
さて今夜のCCCスタジアムのナイトゲームでは・・・AAAチームはいいところがない。打たれるならまだしも、四球にエラーにミス続きで大量失点している。もう見ているだけで腹立たしい試合内容だ。
(せっかく見に来たのに、こんな試合とは・・・)
そう思うものの、それでも懸命に応援する。そしてあの7回、ラッキーセブンだ。7回表、AAAチームの攻撃になる。
(ここで挽回して大逆転だ!)
私はそう意気込む。周りのアウェー席に座る人たちもそうだろう。さて、景気づけに・・・だがラッキーセブンのアナウンスは流れない。
(そうだ! ここはアウェーのCCCスタジアムだった・・・)
敵のチームなんぞ、応援してくれないのである。だが代わりにビジター席に座るAAAチームのファンがアカペラで応援歌を大きな声で歌う。だがそれは広いスタジアムではわずかに響く程度・・・なんともなく寂しい状態だ。
そして案の定、AAAチームの攻撃は三者凡退に終わった。そしてその裏のBBBチームの攻撃となる。すると、
「BBBチーム。ラッキーセブンの攻撃でございます。皆さま盛大にご声援ください!」
とアナウンスが流れ、続いて大音量のBBBチームの応援ソングが流れる。それも耳が痛いくらいの大音量だ。それに合わせてオーロラビジョンを華やかに映し出し、最後に花火まで打ち上げる。
(なんという差だ・・・)
私はその扱いの差に唖然としていた。そしてその勢いのままにBBBチームは得点を重ねた。こんなに差がついてはどうにもならない。
(これではアンラッキー7だ!)
そう思いつつも最後の望みをかけて応援する。だが結局、AAAチームは大差で負けてしまった。
その帰り道、あの7回のことが思い出されて仕方がなかった。BBBチームの本拠地でも敵のチームに対する配慮は必要だろう。AAAチームのファンだって来ているのだ!
「魔のアンラッキー7め!」
私は夜空に叫んでいた。
魔の7回 広之新 @hironosin
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