アンラッキーセブン【千両が舞う番外編】
木曜日御前
縁起の悪い七の話
不思議な男だった。
「777、ジャックポットや」
死にかけの田舎の商店、その入り口にある放置された灰皿があるだけの喫煙所。
数年ぶり新参者としてやってきた男は、いかにも堅気ではない雰囲気があった。
酷く渇いた声に関西訛りの男、タバコの箱から一本取り出し、高校の制服を着た俺の胸元にあるシールを見ていた。
「じ、実は千両漫才エントリーして、2回戦上がれて」
千両漫才と言うのは、漫才師たちの大きな大会で、決勝戦進出するだけでも人生を変えることができる大きなチャンス。
芸人を夢見る俺もまた、その夢の舞台に今年挑戦しようとエントリーしたら、番号がたまたま縁起の良い777だったのだ。
「そう。芸人目指してるん?」
「そ、そうです。親友と組んでて」
「そうか、そら楽しいな」
「ラッキー7で、縁起がいいなって」
興奮して話す俺に、男は宙に向かってフーッとタバコを吐き出した。
「俺も出てたんや」
「え」
「最高の相方とな、けど俺のせいで全て台無しや」
その諦めたような声で、男は俺のことを見た。
「七が、縁起がいいかなんてわからんもんや」
「は、はい」
「縁起がよくなるように努力せい。特に2回戦に動画で配信されるから気張りや」
男は随分残っていた煙草を灰皿に押し付け火を消し、去っていった。
2回戦、東京大会。俺の挑戦はドンずべりの末幕を閉じた。
相方であった親友とは、来年はもう組んではくれない気がしている。
クラスメイトにもイジられ、散々だった。
でも、今回の挑戦で俺はあの男の正体を知った。
会場内の隅に貼ってあったとあるネタライブのポスター。少し若い頃の男が『レディスミス』の七緒と紹介が書かれている。
そして、男の隣のが彼の言う最高の相方だ。
「なんて縁起悪い
男はあの後突然引っ越してしまい、もう二度と会えなかった。
そして、彼らは今、芸人界でこう呼ばれている。
「
アンラッキーセブン【千両が舞う番外編】 木曜日御前 @narehatedeath888
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