【KAC20236アンラッキー7】七つの世界

ながる

店主とオマエ

 案の定(と、諦め半分で納得してしまっている自分にも呆れるが)オマエは我が家に居ついてしまった。まだ三十五パーセントくらいは家出人とかじゃないのかと疑っているけれど、酒と幽霊(?)しか口にしているのを見たことがないし、帰る家はないと言われると、多少の恩を感じているものだから、出て行けとも言いにくい。


「寝る習慣はないので布団も要りません。お酒は好きですが、くれとは言えないので、食費のかからない番犬だと思ってくれればいいですよ」


 そう言いながら俺の缶ビールを恨めし気に見つめられるので、結局分けてやることになるのだが……若干解せない。

 今まではどこにいたのか問えば「外をフラフラ。短時間ならお伽堂に」なんてつらっと答えた。


「そういえば、『お伽堂』の店主とはどういう関係なんだ? 俺は結局会ってないが。お前が、その、妙なものだってのは……」

「もちろん知ってますよ」

「なら、『お伽堂』に厄介になってた方がいいんじゃないか」

「それがですねぇ。あそこ、異界や異世界とあちこち繋がってるものですから、ものすごくんですよね。目の前をごちそうがひっきりなしに横切るので、我慢するのが大変なんです」

「……もう、いっそその異世界に行けば食うに困らないんじゃ」


 オマエはうんうんと頷いて、にやりと笑う。


「行きましたとも。世界をいくつか食べつくしましてね。大魔王とか、混沌なる者とか大仰な呼び名をつけられたりもしましたが、店主に成敗されて監視されてると……まあ、そんなところです」


 俺はめまいを感じつつも、一筋の光を見出した。


「店主には、敵わなかったんだな?」

「というか、引き分けというか。あの方も七つの世界を救った勇者ですが、おかげで人間性を半分失いましたから。だからかどうか「『七』にはツキがねえ」ってぼやくようになりましたよ」


 俺は早急に店主に会うことを決めた。

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