Mission2 連絡先交換
それは、「自分が所属する組織(この場合はもちろん、「明け星学園」ということになります)の所持する書物の内容を、全て頭に取り入れることが出来る」、というもの。
読んでいなくともいいのです。ただ「所属している」という事実さえあれば。……それだけでこの学園にある蔵書──約35,000冊全て、
ただ、強い異能力であればあるほど……代償は重くなるもの。
多くの情報を使うというのに、それを睡眠によって処理出来ないとは、末恐ろしいことです。しかし
……「上手く付き合えている」とは、決して言えませんが。
常に睡眠不足である
睡眠さえ、足りていれば。そう思うことも少なくありません。しかしどんなことをしても、
たまに寝ることが出来ることもありますが……それは「睡眠」というより、「気絶」に近いのです。良くない寝方です。よっぽど限界が近づいた時に発生します。……ですがこうして気絶出来るだけ、
……ですが、この前の……。
『──♪』
……あの、麗しい歌声……。
ああ、思い出すだけでうっとりします。自然と瞼が落ちていくようです。もちろん眠れませんが。
恐らく男性。微かに見えた黒髪……確かさゆり先生は、「音宮くん」と呼んでいましたわ。音宮さん……ああ、叶うなら、もう一度お会いしたいです。お礼を述べたいですし、何より……もう一度、あの歌声で眠りたい……。
……ですが
……あの歌声があれば、
……そうしたら、他の方々とも仲良く出来るようになるはず。
もう一度、と言いましたが、「一度」では足りません。強欲であることは重々承知ですが……あの方の歌声を、日常的に手に入れるためには、どうすれば……。
「音宮、次の仕事だけど……」
すると隣を通りかかった生徒が、そう告げました。
「明日ってさ、春の星空観察会あるじゃん、その司会頼みたくて……え? いや、だってさ、お前の声ってすごく評判いいんだよ。真面目だし、人柄もいいし、委員長も次期委員長はお前に任せたい、なんて言ってるんだぜ? ……まあそれはともかく、明日の昼までには考えておいてくれよ~。じゃ、良い返事待ってるぜ~」
生徒はスマートフォンに向けて話しかけていましたが、話し終わると通話を切り、ポケットにしまいました。……そして気を取り直し、歩き出そうとするところを……。
……
「そっ、そそそっ、そこの貴方っ!!」
「えっ、は、はいっ!? 何でしょうか!?」
突然現れた
「わっ、わわわ、
一体何を言ってるのだろう、この人、とでも言いたげな表情をされました。正直、
とにかく、ここまで来たら
目の前にはあの黒髪の殿方……音宮さんの姿が。先程の男子生徒は、本当にすぐ、彼との面会をセッティングしてくださいました。申し訳ありませんわ……突然呼び出されたであろう目の前の彼にも、突然呼び出すことになった男子生徒にも。
ですが目の前に現れてしまったものは仕方がない。腹を括らなければ……!!
「ねぇ」
「はいっ!?!?!?!?!?」
口を開こうとしたまさにその瞬間、先に彼が口を開きました。
まさか彼から話しかけてもらえるとは思わず、変な声が出てしまいましたわ。恥ずかしい……。
しかし彼は微笑むだけで、
「君って、この前保健室にいた子……だよね? あれからどう? ちゃんと眠れてる?」
「え、えっと……」
「え、ええ。先日はとても……世話になりましたわ。お陰で、久しぶりに安眠を手に入れることが出来ましたの……」
「そっか! それなら良かった」
彼は朗らかに笑います。ああ、良い声です。それに、態度も柔らかい……
……。
あれ、ここからどうしましょう。流れるようにお礼を言うことには成功しましたが、それ以外に何かを話せばいいか……全く、考えていませんでしたわ。
目の前にいる彼も、少々困っているようでした。
そう考え始めた途端、チャイムが鳴りました。どうやら次の授業の開始時刻の様です。
「あっ、やっば、俺次授業あるの忘れてた!」
「……あっ……」
すると彼はそんな、悲鳴のような声を上げます。そして
「……君、さ、スマホ……持ってる?」
「えっ、あ、はいっ」
肩から下げていたポシェットに手を入れ、両手で丁寧に取り出します。パスワードを開くと、ちょっとごめんね、とスマホを取られ。
何かを素早く打ち込むと、
「俺の連絡先、入れたからっ。良かったら連絡して!!」
「はっ……はいっ……」
「じゃ、またね!」
最後まで爽やかに、彼は笑っていました。
取り残された
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