1.安眠作戦編
Mission1 氷の女王
──明け星学園。
そこは、エリートの中のエリートの通う学校。この辺りでその名前を知らない人はいない程、有名な学校ですわ。
そしてこの高校の特色は……異能力者のみが通うことの出来る高校、ということです。
対異能力者に特化した授業及び、普通の高校生と変わらない授業を、好きな時間に好きなように受けることの出来る、自由な校風。普通の勉学だけでなく、異能力の扱い方も学ぶ……。日常的に異能力は身近にあり、生活の一部となっている。戦闘なども日常茶飯事。……笑い声の絶えない、とても騒がしい学校ですわ。
そして
氷室の人間は、代々異能力者として生まれる。そして氷室の人間は、持つ異能力を扱い、家を繁栄させていきました。お陰で氷室という名は、明け星学園という名と同じくらい、有名な名です。……代々この学園に入学するのが常ですし、多額の費用も寄付していますし、当然ですけれど。
だから
……頭が痛くなってきましたわ。
「きゃはははっ!! 何それー、すっごく面白い!!」
ズキン、と、頭にその甲高い声が、響きました。
睡眠の足りていない頭に、その声はよく響きます。お陰で気分も悪くなります。……この者たち、
……エリートである本校の生徒にあるまじき行為!! そして、
「ちょっと、貴方たち!!」
カツン、と足音を響かせ、
「いつまでそんな邪魔なところで、談笑を重ねていますの!? この教室で授業を受けるというのなら、早く教室に入りなさいっ!!」
「すっ、すみませんっ……!!」
「うわー、流石、『氷の女王』……容赦ねぇな……」
……あ。
人垣の中から微かに届いた声に、
「確かに邪魔だったけど……」
「あそこまで言うことなくない?」
「シッ、私たちまで怒られちゃうよ」
「あの子たち、可哀想……」
「こわ~い……」
ひそひそ、ひそひそ。
……また、やってしまいましたわ。
どうしよう、どうしよう。そう思っても、当然何も答えは出ません。
結局
数学の授業、先生が黒板に書き記すことを書き写しつつ、考えるのは先程の事ばかりでした。
……嫌になってしまいますわ。
──異能力者には、誰もが持つハンディキャップが存在します。
それは、「代償」と呼ばれる……異能力の使用中、もしくは使用後に現れる症状のことです。薬を飲んだ際に出る副作用の様なもの……と言えば、分かりやすいでしょうか。
そのせいで
というのも、「苛立ちやすくなる」、というのが代償ではありません。あくまでそれは結果です。
「じゃあ、この問題を……氷室、解いてみなさい」
たまたま顔を上げたところ、先生と目が合ってしまいましたわ。辺りを見回すと、
……ああ、そうですわ。この方、やけに難しい問題を出して、生徒を悩ませることが多いだとか……。
──ですが
チョークを受け取り、問題を前にし、深呼吸をします。
そして
すると頭の中を駆け巡る、様々な知識、知識、知識!! ……その中から、必要な情報のみを取捨選択する。難しいですが、
……やがて見つけた、とある問題集の中にある、とある問題。これは……2002年に北成大学で出題された、超難問問題。これと、とても類似していますわ。
解法を記憶し、頭の中の本を閉じます。……あとは自力で。
「……」
無言で解法を記していきます。書き終わって嘆息した頃には、黒板全体が
先生は顔色1つ変えることなく、ただ一言。
「正解だ」
ざわ、という声で教室が揺れるのが分かりました。
あんな問題を解けるなんて。流石、氷室は頭の良さが違う──そんな声が飛び交っています。……
……それと同時、激しく襲い来る眠気。喜びや誇らしさ、先程の後悔や焦りも、全て「眠い」に掻き消されてしまいました。
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