不運は重なるもの
桜桃
不運は続くもの
不運というものは重なるもので、小さくてもストレスは溜まる。
例えば、朝傘を差すかわからないくらいの雨が降っていたり、車が急に曲がり角から"止まれ"の標識を無視し走って来たり。そのせいで、俺は急に止まることができず、慌てて避けた先にあった水たまりに足を突っ込んだり。
全ては小さなこと、でもこれが繰り返されるとさすがにストレスが溜まり何かにぶつけたくなる。
仕事に行き、いつもの業務をしていてもふつふつと。今まで気にしない時計の音や周りの人の話声。女性の甲高い笑い声にいらだちが募る。
今日は、憂鬱な一日だ。
☆
我慢の一日が終わり、帰る支度をしていると。一番仲のいい同期が飲みに誘ってきた。でも、俺は早く帰りたかったため、誘いを断り帰宅。
この決断が、俺にとって今後の人生を狂わせた。
一人で住んでいるアパートに帰り、いつものようにテーブルに置かれているリモコンに手を伸ばしテレビをつけた。
映し出された光景は、俺のよく知る居酒屋。今日も同期に誘われ、行こうとしていたお店だ。
ネクタイを解きながら聞き流していると、ニュースキャスターの言葉に思わず手を止める。
『速報です。午後十八時現在、○○区にある居酒屋○○店にて出火。火は燃え広がり、中にいた従業員、来店者複数人の死体が発見され──……』
画面には消防隊が懸命に火を消している姿。その後に、被害者の人が映し出され、俺は手に持っていた鞄を床に落とす。
被害者の欄に、今日俺を誘った同期の名前が映し出されていた。
もし、俺が行っていれば同じく焼死体になっていた可能性があるが、逆にそっちの方が良かった。
いつも楽しく話しかけてくれていた同期を、友人を失った。
俺は、大事な友人を失ったという、この気持ちの悪い記憶と感情を、これからの人生背負わなければならなくなってしまった。
なぜ、不運はこうも続くのだろうか。俺は、自分の人生を恨んだ。
不運は重なるもの 桜桃 @sakurannbo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます