魔法のランプと幸せの鍵ーアンラッキー7ー

MACK

* * *


 祖母は一人暮らしだったが、とても幸せな毎日を過ごしたと言い残して天寿を全うした。彼女が教えてくれた事の成果で、これまで自分を不運だと思った事はない。


 今日は同僚のミスの巻き添えをくって定時を過ぎた。件の同僚が何故か自分より先に帰っているのが腑に落ちないが、最後にごみを出せば終わり。ゴミ袋を抱えて置き場に行くと大量のごみが溢れていて、整理しないと自分が持ってる分が収まらない事に気付く。


「倉庫整理があったんだっけ。奥から詰めて置いてくれたらいいのに」


 隙間を開けるべく段ボールを動かしていると、カツンと硬い音を立てて何かが落ちた。


「可燃ごみの中に不燃ごみ? 気づけて良かった。前も総務に注意されたからな~」


 それを拾いあげれば明らかに、不燃に投じるべき金属製。まるでアラジンの魔法のランプ、もしくは本格的なカレーポット。

 ほんの遊び心で服の裾で磨いてみたら、アニメのような煙がドロンと上がる。


「へ?」

「俺はランプの魔人、六回の幸運をおまえに授けよう」

「三つの願いではなく?」


 アラビアンな露出の彼は中々の美青年だが、私の問いかけにばつの悪い顔をした。


「自分は未熟で、小さい幸運を授ける事しかできない」

「見返りに命、とか言うんじゃ」

「六回の幸運ラッキーの後、それに見合った分量の不運アンラッキーが七回目に来るだけだ!」

「それって単に、幸運の前借じゃない」

「そうとも言う」

「じゃあ先に七回目の不運アンラッキーを実行して、後で残り六回を受け取るのは?」

「可能だが」

「じゃああなたに遭遇した事を七回目の不運にするわ。平凡な日常が壊れて、私って不運アンラッキー……!」

「マジかよ」


 魔人は頭を抱えていたが、ここぞとばかりに哀しい顔で見上げていると、短い黒髪をグシャグシャにかき乱しつつ、しぶしぶ頷いた。

 微笑んで私は言う。

 

「幸、不幸は自分が決める。これが幸せになるための鍵よ」


 こうしてランプの魔人との長い付き合いが始まった。

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