筋肉はともだち!

シロヅキ カスム

【SS】筋肉はともだち!

 タローくんは、じぶんの体が大っキライ。

 なぜって? とってもひどい運動うんどうオンチだからです。


 足はノロノロ。はやく走ってくれません。

 だから、かけっこはいつもビリ。


 うではブルブル。ぜんぜん力もちじゃありません。

 だから、給食きゅうしょくのおなべをはこぶのが、おくれちゃう。


 ボールも、よけられない。

 さか上がりも、しっぱいする。

 片足立かたあしだちも、ふらふらスッテン。

 体をげても、つま先に手がとどかない。


 クラスメイトに笑われてばかりです。


 夜、タローくんはおフトンのなかでためいきをはきました。

 こんな体なんて大キライだ。

 ガチガチにかたくて、ちっとも力の出ない体なんて……。


『ちょっと、まっておくれよ』


 どこからともなく声がきこえました。

 わっと、おどろいたタローくん。

 フトンをけとばして、キョロキョロお部屋のなかを見まわします。


『ここだよ、きみの体からさ』


 えっ?

 タローくんはおそるおそる、うでを耳にくっつけました。

 ドクドク、血がながれる音といっしょに声がきこえます。

 とってもやさしい声です。


『ボクらはきみの体をつくっている筋肉きんにくさ。ボクたちをちょっとずつ、きたえてごらん。タローくんだって強い子になれるってこと、ボクらが証明しょうめいしてあげる』


 温かくて、ふしぎな声に勇気をもらったタローくん。

 それからというもの、毎日ちょっとずつトレーニングをはじめました。


 なわとびや、スクワット。

 ブラッシュアップに、バランスボール。

 オフロ上がりにストレッチもかせません。


 それから、おニクやおサカナ。

 ヤサイにくだものと、すきキライなく。

 栄養えいようあるものをいっぱいべました。


 まいにち、明るいお日さまの光をあびて。

 少しずつ、少しずつ……じぶんの体のペースを守って。

 タローくんはトレーニングにはげみました。


 そんなある日のことです。

 たいへん! ちかくのデパートで火事かじがおきました。

 十かいにはおばあさんが取り残されたままです。

 

 いてもたってもいられずに。

 タローくんはデパートにびこみました!

 エレベーターはうごきません。

 階段かいだんをつかって、十階までのぼります。


『ここは、ボクたちの出番でばんだね!』

 

 タローくんの耳に、またふしぎな声が聞こえました。

 ふとももと、ふくらはぎの筋肉の声です。


『タローくん、いつもボクらをきたえてくれてありがとう』

『さぁ、どんどん足をうごかして一気いっきにいくよ!』


 えっほ、えっほ。

 タローくん、きたえた足でグングン階段をのぼります。

 一気に十階へたどりつきました。


 にげおくれたおばあさんを、はっけん!

 けれど、おばあさんはシャッターにはさまっています。

 タローくん、どうしよう。


『フンフンッ、ここはオレたちの出番だぜ!』


 うでと、かたの筋肉がこたえます。

『おうよ』と、こしの筋肉も言いました。


『まいにちモリモリ、栄養のあるものをたくさん食べたから元気げんきいっぱいさ! さて、いっちょ大しごとだ!』


 どっこいしょーッ!

 タローくんはおもいシャッターをぐいともち上げます。

 それから、おばあさんをおんぶして。

 せまるケムリから、タローくんはにげました。


全身ぜんしんの筋肉フルパワー!』


 みごと、おばあさんをたすけたタローくん。

 クラスメイトも、町のみんなもハクシュをおくります。


 てれながらも、タローくん。

 がんばってくれた、じぶんの筋肉たちにおれいを言いました。


『ううん、タローくんがきたえてくれたおかげで、ボクらも力をはっきすることができたんだ。ボクたち筋肉は、きみの体のそのもの。いつだってそばにいて、きみを助けてあげるよ!』


 だって――

 筋肉は『ともだち』だから!

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