マッチョで正直な木こり
くらんく
正直だったら良いってもんじゃないけど嘘つきよりはマシ
ある木こりが泉のそばで木を切っていた。
木こりは筋骨隆々で、黒のタンクトップから溢れ出る三角筋と、小高い山のように盛り上がった僧帽筋、そして鎧の様に鍛え上げられた広背筋をフルに活用して斧を振っていたが、手が滑って斧を泉に落としてしまった。
トレーニング機材を失って木こりが困っていると、泉の中から美しい女神が鉄の斧、金の斧、銀の斧の3丁の斧を携えて現れた。
「あなたが落としたのは金の斧ですか、それとも銀の斧ですか」
女神は木こりに尋ねると、木こりはサイドチェストをしながら正直に答えた。
「いいえ、私が落としたのは普通の鉄の斧です」
木こりの正直さに感心した女神は、木こりの落とした鉄の斧だけでなく、金の斧と銀の斧も与え、池の中へと姿を消した。
3丁の斧を手に入れた木こりはそれぞれを持ち上げ、使い勝手を試した後に、最も重いという理由で金の斧を手元に残し、残った2丁を池へと返却した。
すると、泉の中から美しい女神がルビーとサファイアとエメラルドの3丁の斧を携えて現れ、木こりに問う。
「あなたが落としたのはどの斧ですか」
木こりはダブルバイセップスをしながら答える。
「私が落としたのは斧ではなく、己の体脂肪率です」
木こりのストイックさに感心した女神は、木こりの落とした体脂肪だけでなく、コレステロール値と血糖値も与え、池の中へと姿を消した。
その話を聞いて、隣家に住む欲深な木こりが泉へとやって来た。わざと池へと斧を落としてみると、話に聞いた通り、女神が複数の斧を携えて現れた。
「あなたが落としたのはこの斧ですか」
欲深な木こりが普通に答える。
「はい。それは私が落とした金の斧です」
ポージングを取らない木こりに憤慨した女神は怒りの形相を見せた。
「あなたは嘘をついた。だから体脂肪率が5%を切るまで帰さない」
木こりは闇の中へと引きずり込まれた。そこには無限に続く大木の群れ。欲深な木こりは今もそこで木を切り続けているらしい。
マッチョで正直な木こり くらんく @okclank
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます