筋肉追放魔王討伐RTA追放解除！ ～筋肉からは逃げられないぞ♡～

第1話伝説の始まり

「ロランよ、神託は下った。神々が定めし掟を破るのなら、もはや貴様に神人たる資格はない！　只今をもって貴様を追放する！！　全てを失い、ただの人間として好きに生きるがよい！！」

　魔王によって希望は奪われ、絶望の闇に人々が囚われていた暗黒の時代。　

　魔王すら恐れ手を出せぬ聖域。神々に愛され神々に次ぐ力を持つ選ばれし人類――神人と呼ばれる者たちが住まう楽園にて、一人の男性が追放されようとしていました。

　彼の名はロラン。この楽園で最弱の存在でした。戦える神人の中で彼が勝てる者はおらず、女性にも老人にも子供にも勝てません。

　更には神人としての常用言語、筋肉による伝心の筋肉言語（マッスルコミュニケーション）すらできない、筋肉未発達の落ちこぼれでした。

　そんな彼ですが、いえ彼だからこそ、追放されようとしています。

　無能だからではありません。神人はみんな信心深い人格者です、いくらロランが貧弱で精神も筋肉も糞雑魚なもやしであっても、笑ったり見捨てたりするような下種はいないのです。

　筋肉言語によって神人とまともに交流できなかった彼は、同じく筋肉言語を扱えない人類と親しくなっていたのです。

　そして世界が魔王の脅威に晒されていることを、救いを求めて人類が神々と神人に嘆願しているのを知りました。

　しかし神々は人類を救おうとしませんでした。神人も神々によって神託がない限り戦うことは許されていませんので、その嘆願を受け入れられませんでした。

　神々は人類が己の力で魔王を乗り越えることを期待していたのです。決して苦しむ人々を見て楽しんでいたのではありません。

　ロランはそれを間違っていると考えたのでしょう。

　魔王討伐を楽園の統治者、つまり国王に何度も諫言しましたが受け入れられず、ついには神人の立場を失くし追放となったのです。

　ああ、なんということでしょう！！

　神人にとってそれは死ぬよりも恐ろしく辛い罰でした。

　それでもロランは喜んで追放を受け入れ、魔王を倒す苦難の道へ旅立ちました。

　人類を救おうとする彼の覚悟はどの筋肉より固く太かったのです。

　神人たちはロランの悲壮な決意に、熱い汗を流しました。

　筋肉が悲鳴を上げ、神々を理由に目を背け続けてきた己を恥じたのです。

　国王も皆と同じ気持ちでした。

　神々の掟に逆らえずロランを追放こそしましたが、筋肉は彼を応援し再び楽園へ戻ってくることを願っていたのです。

　そこで彼らは陰ながらロランを見守りつつ応援することにしたのです。

　直接戦うことは出来なくても、サポートする方法はいくらでもありましたから

。

　ロランのために魔王とその配下の情報を集め、危機が迫っている場所があれば善意の第三者としてロランを即座に送り届け、救われた人々にロランの偉大さを説きました。

　ロランは神人の中では最弱でしたが、それはあくまでも神々の次に力を持つ神人の中での話であり、圧倒的な力で魔王の勢力を滅ぼしていく彼を人類も次第に勇者として認め、救世主として祭り上げていきました。

　おお、勇者ロラン！　救世主ロランよ！　今こそ魔王とその配下を倒し、希望の明日を取り戻す時です！！

　そうして魔族の四天王や魔王に手を貸す元神人の裏切り者との激闘を乗り越え、鍛え上げられた逞しい肉体を手に入れたロランは、ついに魔王と対峙します。

「神人だけではない、その下の人々も我ら魔族も神々の玩具にすぎぬ。我を滅ぼしたところで神々の遊戯は終わらぬぞ。真に救われたければ我の手を取れ、勇者ロランよ！　忌々しい神々の手の平から抜け出し、本物の自由を手に入れようぞ！！」

　愚鈍で無知で恥知らずの魔王の誘惑でしたが、ロランは神々への深い信仰によってそれを跳ね除け、ついには魔王を滅ぼしたのです！！

　世界は救われ、ロランの旅も終わりました。

　――魔王を滅ぼすほどの力も、振るう先がなくなれば守るべき人類の脅威でしかない。

　なぜ神々が神人の私闘を禁じたのか。その意味を真の意味で理解したロランは、表舞台から去り隠居しようとします。

　それを止めたのは、故郷で彼を待ち続けた神人たちとロランが救った人類でした。

　ロランは神人と人類の架け橋として、これからの世界に欠かせない人物である。

　どうか魔王討伐の功績によって罪を許し、ロランを神人として再び認めてもらえないだろうか、と神々に切に祈ったのです。

　その願いは聞き届けられ、神託によって罰が変更されました。

　ロランは神人へと戻り、楽園を統治する新しい王となって世界の希望を守り続けることになったのです！

　世界中が歓喜の声で溢れました。

　こうして平和になった世界で、ロランの新しい戦いが始まったのです。

　辛いことも苦しいこともまだまだありますが、ロランなら皆の力を借りてきっと乗り越えてくれるでしょう！

めでたしめでたし　　　　　　　　　　　　　　　　　

完

　え？　こんな結末嫌だって？　も～ロランったら何を言ってるんでしょうね。

　小さい頃から散々罵倒されたからって嫌がらせなんてしませんよ、失礼ですね！

　勘違いが解けないよう手を回したりしましたが、それもこれも全部あなたが最高に輝くために必要だったんですよ？

　私たちはあなたのファンですからね、もっと楽しめるよう協力するのは当然じゃないですか！　あれもこれも全部あなたのためなんです！！　信じて！

　封印された大魔王や滅ぼされた邪神（偽）が復活しますが、ロランなら倒せるって私たちも信じますから！！

　ふふふふふ、私たちの試練を全部乗り越えたら望み通り会ってあげますから、それまで頑張ってくださいね！

　新しい筋トレ仲間が増えるの、楽しみに待ってますから。