【KAC20235】俺の腹筋
リュウ
第1話 【KAC20235】俺の腹筋
筋肉に話しかけると答えてくれる。つまり、効果があるという。
”弱虫ペダル”の泉田塔一郎のように。
泉田塔一郎は、筋肉に憧れのロードレーサーの名前を付けていたらしいが。
名前を付けていないが、筋肉たちに話しかけている。
この頃は、筋肉たちの声が聞こえるようになったと思う。
僕は、鏡の前で体をチエックしていた。
貧弱な体と言われてから、スポーツジムに通い、プロテインや十分な食事を取り、これまでの体に仕上げた。
色々なポーズを取ってみる。
中々の体だ。
気になっていたのは、ぷにゅぷにゅのお腹だった。
今では、割れている。
スクワットで、太もも、臀部を鍛え、胸、腕、背中と徐々に筋肉を増やしていった。
「おお、筋肉のみんな、今日も元気か、とても美しい」
僕は、鏡に映った自分の体の部分に目を移し、褒めていく。
こうすれば、確実の効果が現れ、美しい筋肉が出来上がる。
「そんなに、褒めていただき、うれしく思います」
体中の筋肉が答えてくれる。
そんな時、筋肉から問われた。
「あなたは、どの筋肉が好きなの?」
「みんな好きだ。この腹筋、足、胸、背中、全てだ」
と、言ってその部分をさすってやる。
筋肉たちが勝手に話始めた。
「女性は、やっぱり、腕、背中、腹筋の順ですよね」と、腕が言った。
「いや、幅広い背中が魅力的ですよね」と背中。
「違いますよ、腹筋ですよ。割れた腹筋を自慢しているインスタが多いですよ」と腹筋。
「体を支えているのは、私たち」とお腹の方から声がした。
「あなたは、本当は、どこの筋肉が好きなのですか?」と筋肉から効かれた。
「いや、みんな、同じくらい好きだ。愛している」と、訴えた。
「よかった、みんな同じに愛してくれている」
実は、お気に入りは腹筋だ。
裸になって、鏡が無いところで目がいくのは、腹筋。
腹筋が割れているのは、最低条件だ。
でも、腹筋が一番というわけにはいかない。
みんな、同じように好きだと言わないと綺麗な体にならないのは、知っているから。
その時、ジム仲間が、横に来た。
「お、仕上がったるね。自慢の腹筋、キレイだね。じゃぁ」
と、手を軽く上げ、席を外した。
「えっ、自慢の腹筋?」筋肉から声が上がる。
「やっぱり、腹筋よ。じ・ま・んの腹筋だって。うれしい」と腹筋。
「うそ、信じられない」、「男は、これだから」と、言い腹筋以外、出て行ってしまった。
”私は、出ていく訳にはいかない”と心筋が残った。
そして、僕は寝たきりになってしまった。
残った筋肉は、心筋と腹筋だった。
何もできない。動けないのだ。
「みんな、俺が悪かった。帰ってきてくれ。みんな、大好きだよ」
【KAC20235】俺の腹筋 リュウ @ryu_labo
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