早くも、何もしたくありません!!!
どうもお久しぶりです。アスカです。
転生してそうそう病んでます。
何も上手く行きません……あっれぇー?本当にどうして私こんなに早々に病んでるんだァ?
と、私は匿われたガルの家で『これで貴方も明日から魔術師!!ケルト神話の占い魔法全集』を読みながらぐ〜たらしていた。
黒を基調とした無機質な部屋はあまりにもだらけるには最適で……
「おい」
と、首根っこを掴んでくるのはガル。黒髪に純タンザナイトの冷たい瞳に見下ろされる。
「いい加減にしろ。ニート」
「ニートッッッッ!」
「それ以上でも以下でもないだろ」
「ぐはっ!!!!だってぇぇぇぇえ〜〜〜〜……異常使えないんだもんっ!」
「今のお前以上に?」
「ぐはぁっ!そんな言葉の刃を向けるから片恋相手に一生告白できないんだよぉーー!」
「ふぐっ!」
ガルはコーヒーを軽く吹いた。
「難儀なやっちゃのぉ〜ガルは。普通に告ればいいじゃん」
「よし、殺そうか。首を出せ」
当然の様に日本刀を向けられる。
「ジョークジョーク!!!」
真っ先に土下座した。
「はぁ」
とガルは大きくため息をついて、ダイニングテーブルの椅子に足を組んで座る。普段着で黒いダボッとしたロングTシャツにジーパンでもものすごくイケメンに見えるから目が潰れそうになる。
私は床に正座のままで、慈悲のコーヒーが私の好きなお砂糖とミルク多めで渡された。
「何故、異常が使えない。原因を言え」
「そういえば、今更ですけどガルくん非番なんですね。今更ですけど…」
「あ゙?」
ギロリと見下された絶対零度の視線に私は全力で顔を逸らした。
「ひぃぃい!ジョーク!」
「お前…俺に協力する気があるのかないのか、それとも、あれは嘘だったのか?」
「嘘じゃない嘘じゃないっ!でもさ!行動するにはそれなりにの準備が必要って言うかさ!」
「準備?」
「はい!そうでございますっ!優しいガルくんならともかく、もしよ?もし仮に君の同僚……先輩達に、出会ってしまったら!私は即刻処刑でございますっ!なので!見初められる為に、日々日々知識という努力をいまし……」
「なんでストレインレッドのヤツらに会う気満々なんだよ」
「おほほ〜」
(会わなきゃ何も始まらないからだよ)
そもそも、ストレインシリーズはストレインレッドと言う帝国機密部署にガルが配属されたところから始まるストーリーだ。
人が少なく、嫌われ者のの集まりとされた南極部隊が全滅し、ヘレナという女性(見た目は少女)に助けられるところからスタートする。そこで色々巻き起こるガルの話なのだから。
目の前の黒髪青眼の青年を見つめる。本当に彼は生きていて、ガル本人なんだなぁ、とココ最近思う。
実感なんてなかったし、握手して家に連れてくる時の言葉とか、まさしくガルだ。
(キャラビジュ最高。意外と天才的な気がする…)
「なんだ。まじまじ見て、気持ち悪い」
「ひっどーいっ!」
ガルは足を組み直して深く暗い青色の冷たい目が私をぎろり、と睨むと
「俺の質問に答える気がないことはわかった」
「質問?」
(どれた?)
「異常が使えなくなった、見立てだ」
「あぁ、そっちか。体にある程度馴染んだからだよ」
「は?」
私はお砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを一口飲んで憶測という名の事実を話す。
「憶測だけどね?そもそも異常は空想血管(魔法網とも呼ばれる魔力の血管)の移植による副作用だからね。体にあった異物感が能力としての異常の感覚なのに、馴染んで使っている感覚が無くなれば動かせない」
意外なところが筋肉痛になる様に、異物感や痛みを知って始めて使っている事を自覚する。その筋肉痛が無ければどの筋肉を使ってい鍛えているのか、分からなくなってしまう。
「なんで、異常が副作用だと知っているんだ?国家機密だぞ」
「えぇぇぇぇっとお!な、なんで知ってるんだァ?!わ、わかんないなぁ〜!あ!もしかしたら一部記憶が抜けてるのかもしれないっ!うんそう!そうだ!きっとそうだよ!」
「ふーん」
ガルの冷たい。視線が冷たくて痛い…。げ、下賎なオタクを見るような目…やめて…
(分かってるよぉぉお!私の言い訳がマジできついことぐらいっ!)
「分かった。今はそういう事にしておいてやる。今・は・な?分かったか?」
頬を片手でがっちり掴んでほっぺ越しに顎と歯を砕く勢いで握る。
「ふぉい…」
「分かったか?」
「いふぁいへふ…(痛いです)」
「あ?」
「なふへふあひはへん(なんでもありません)」
「チッ…」
(舌打ち…)
頬から手が離れて、ガルに背中を向けられる。私はその背中を指さして、目を閉じ、目の前のガルを思い浮かべ、渾身の集中で言い放つ。
「ガル、止まれ_!」
ガルは私にに見返りしている状態で、コテン、と首を傾げた。
「なんだ?」
「体動く?」
「ああ」
「ですよね〜」
ガルは私の首根っこを掴んで玄関に引きづると、簡単にポーンと、家から出て、私にカバンを投げてくる。
「えっ!え?!」
「何が掴めるといいな」
と、一言言って、玄関ドアをバタリと閉じた。
「人でなしぃぃぃい!」
ーーー
これがつい十分前の事。
こんな私に行くあてなんてなく、ひたすらフラフラしている。こうやって何にもしてないと、姉の小言を思い出す。
『あんた何時までボーッと生きてる気?』
『世の中遊んで生きていけるほど甘くないけど?』
『ほんと、あんたは自由でいいよね』
『お前を一度も可愛いと思ったことないけど?』
『いい加減やめたら?自信ないからって全部諦めんの』
『お前が三個したじゃなくて二個下とか四個下だったら可愛いと思えたのに…なんでコイツなんだろ…』
「はぁ…一言ぐらい、言い返してやればよかったな…」
私の人生で、姉という存在に嫌悪感を抱くようになったのは私がダメダメだからだ。
そもそも、小説を書き始めたのだって姉から逃げるためだったし…。
「いやいや、都合の悪いことだけ思い出すな。私。よく美術館行ったり、図書館の場所教えてくれたり、色々楽しかった思い出もあるじゃないか。よしよし!!今メンブレしても意味無いっ!」
(ん?図書館?)
「そうじゃん!あるじゃん!行く場所!!」
私は急いである場所に向かった。
ーーその頃一方…ガルは部屋の掃除をしていた。
リビングに散らばった紙を片付けるために拾い上げると、魔術文字が書かれていることに気づき、いつもアスカが熱心に書いているノートを手に取った。
ノートを数ページパラパラめくると、魔法の研究者いや、それ以上の細さの魔法についての分析が書いてあった。軍の上層部に身を置くガルから見ても、ここまで分析した文献は無いと断言していいほどに細かくそして根拠付けで書かれている。
(アイツ…家にある少ない文献でここまで…意味無くだらけていたというのは見直すべきだな…)
ふと、夜、寝ずに何かを必死に書き、読み漁っているアスカの姿が脳裏に浮かんだ。
「…」
ガルは充電器から携帯を引っこ抜いて、ある人物に電話をかけた。
ーーーーーーーーーーー
「もんげ〜〜〜」
その頃、アスカは図書館の前で口を開いて棒立ちしていた。
明らかに見覚えのある建物で、自分の人生に最も通った博物館の外装をしていたのだ。
(か、科学博物館じゃんっ!!!)
東京上野にある国立科学博物館。言わず知れた博物館じゃん…
(しかも地球館っ!(科学博物館は地球館と日本館で別れている)石造りのオシャレな方っ!センスよっ!何この理想的な最高にオシャンな図書館!!)
ちょっとテンション上がる。
モダンとも言える暖かい黄色の石造りの建物に、ドーム型の屋根。中に入れば、二階三階と、真ん中が吹き抜けになっている、ロの字型の作りは確実に私の知っている博物館だった。
「まぁ、知識という点ではそうか…同じ意味を持つか…」
あり方は全然違うけれど…
私は奥へ進んで、魔術に関する文献の本を端から数冊取って机に向かう。
ガルに投げ飛ばされたから何にも持っていない。ていうか、服もほぼ部屋着のままだ。
(ガルめ…年頃の乙女を薄着で放り出すなど言語道断。ぜつゆる)
と内心思いつつも、ペンぐらいは借りられるだろうと思ったがそもそも事務員さんってどこにいるんだ?から始まってしまった。
(あ、ノート…でもあれほとんど何も書けないんだよなぁ…しょうが無い、できるだけ記憶して…)
ガルに一緒に投げられたカバンを開くと、キャッシュが入ったお財布と新品のノートと筆箱が入っていた。そして、ノートに挟まっていたメモには、
『必要だろ?』
とガルの字で書かれていた。
(一生ついてきますっ!ガル様ァ!)
ガルの優しさが身に染みた。
ーーーーー
また、その頃ガルは、自分の職場である帝国総本部のロビーに来ていた。
ガルの目の前には三つ編みお下げにメガネの160センチぐらいの女性が居た。彼女はガルが持ってきたノートをまじまじ読んでいる。
「よ、読み終わりました…」
「そうか。シルビアお前の見立ては?」
「えっと…」
シルビアと呼ばれた女性は口篭りながら、モジモジと弱々しく言葉を話す。
「ガ、ガルくんの家にどれぐらい資料があるのか分かりませんが、だとしても、家にある僅かな資料でここまでの論理をまとめるのは相当かと…」
「相当って言うのは?」
「あ、えっと…すごく頭が良くて、推察能力に長けているとのことです…ガルくん、こんなすごい人のメモなんて、一体どこで手に入れたんですか?」
「…」
「ガルくん?」
モジモジと自信が無い仕草をしながらガルの言葉を待つ
「勝手に持ってきた」
「えっ!それは…色々まずいんじゃあ…」
「いいだろ。別に」
「えぇ…?どんな方なんですか?」
「どんな方…」
ガルは家でのアスカの様子を思い出す。
『ガル〜この本って魔女の文献ー?』
ごろごろ〜。と、リビングのカーペットに寝っ転がっている。
『よしっ!家事やるぞぉ!…あ。はべじゃっ!』
と、盛大に転んでありとあやゆるコンセントを抜く。
「ペット」
「ペット?!」
(ガ、ガルくんって…人をペットにするのが趣味なのかな…?)
ガルは同僚の女性から大きな誤解を産んでいるは知る由もない。
ーーーーーーー
その頃一方アスカは…図書館の中の魔術に関する本と、神話についての本を全て読み漁り頭が沸騰しそうだった。
「づーがれーたー…」
(とりあえず、ルーン文字は覚えた…あとその他もろもろの神話の武器とかも…)
現状で自分に出来ることは知識をつけることだ。
というのも、私の異常、綴る者(デウス・エクス・マキナ)は確実に知識と直結する。あと語彙力も。
できる限り名前とその性能を頭に叩き込む必要がある。
(まぁ、元の知識もそこそこにあるつもりではいるけど…再認識する必要は絶対にあるわけで…再認識だけで頭が沸騰しそう…)
「あの〜、こんにちわ〜」
と声をかけられて、振り向くと、静かで歴史的な図書館に似つかわしくない武装をした男が私にハンドガンを向けていた。
「えっと…」
顔は頭巾とゴーグルで覆われて、全く見えない。困惑して固まっていると、低い男の楽しげな声が鼓膜を揺らす。
「異常者、はっけ〜ん」
それから一瞬だった。数発の銃声と共に視界が点滅して、体に浮遊感が伝わった。
(あ、死んだ…脱落早…)
自分の体が地面に落ちず、首根っこをを掴まれて居た。目を開けると、見慣れた黒髪に純タンザナイトの青い瞳を見て私は心底安堵した。
「ガル〜!」
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