痣だらけの愛

濱田ヤストラ

痣だらけの愛

「なんか、おかしいね」


 彼女は、そう言って泣いた。

僕にはそれが何を意味しているのか、そして彼女の心の中がどうなっているのか全く分からなかった。

僕があっけにとられた表情をしていると、彼女は感情を吐露し始めた。


「私ばっかり依存してるみたいでさ。おかしいよ、こんなの。私は何よりも君を優先してきたんだよ!?なのに君は私を見てくれない……こんなの、おかしいよ!!」


 徐々に歪んでいく、彼女の表情。

それがあまりにも醜くて、僕は目を細める。

しかし、その表情すら彼女は不愉快に感じてしまったようだ。


「ほら、その目!私が嫌いだからそんな顔するんでしょ!?」


 彼女の目から、涙が流れていく。

ああ、また泣かせてしまったのか、僕は。

泣かないでいいのに。だって、僕は。


「どうしてそんな事言うの?」


 そう告げ、彼女を抱きしめた。

彼女は最初は放してよ、と抵抗するが、僕が放す気がない事を察知してすぐに抵抗をやめた。

僕は、言葉を続けた。


「僕は君が、好きなんだよ?どうしてそんな悲しい事言うの?」


 なんて甘い言葉を、甘い声で囁いたものだろうか。

自分でも自覚がある。そうでもしないと……彼女は僕から離れていくのが手に取るように分かるから。

彼女はそのまま、僕の腕の中で泣き出した。

僕はその頭をなでながら、子どもをあやすかのように優しい声をかけた。


……彼女の全身に痣があるのは、僕らだけの秘密だ。

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痣だらけの愛 濱田ヤストラ @shino_joker

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