14話目 いざ、突撃

「ヒュナさんすみません……」

「ミレイさんどうしたの───あら。」

「本当にすみません……」

ルウナちゃんの朝食を持ったままかっこ悪く帰ってきた私をヒュナさんは笑顔で受け止めてくれた。

「ごめんなさいねミレイさん。ルウナが対人恐怖症なの忘れてたわ。」

「対人…?」

「心を開いた人としか対面することができないのよ。きっかけとかはルウナに直接聞いてほしいわ。」

難しいでしょうけど、とため息混じりにヒュナさんが呟いた。

対人恐怖症、ね。ゲームの記憶は浅いけど少しだけ覚えている。ルウナちゃんの過去。

────でも本当に少しなんだよなぁ。ルウナちゃんは仲間にはならないキャラクターだけど、ゲーム内で上位の可愛さだったから、何とかしてルウナちゃんの顔を見てみたい。

作戦を練ろう!

私は忙しそうなヒュナさんに朝食を預け、自室で考え始めた。



───────



────馬鹿な私にまともな作戦が浮かぶわけもなく。30分程考えた末、浮かんできた案はただ一つ。

「突撃」。最も手軽だが対人恐怖症の人にとっては最も嫌であろう案だ。嫌われたくはないんけど……多分、ルウナちゃんと対面しないと展開が進まないんだよねぇ。ゲームでは主人公どうやってルウナちゃんと目を合わせて会話をすることが出来たんだろう。

私記憶力悪いんだよね。私が鈴愛だったらこんなのに悩まずにクリアしてるんだと思う。

私は深い深いため息をついた。

───もういいや!深く考えずにやっちゃおう!

部屋を飛び出し、私はルウナちゃんのところへと向かった。

どうか嫌わないで!ルウナちゃん!

という切実な思いを胸に抱きながら。



───────



巨大な鉄の箱の前で仁王立ちする。

心臓がうるさく音を立てているが無視だ!無視!

深呼吸をして口を開く。

「ルウナさーん?」

「………あなたは今さっきの御方ですね。何の御用でしょう?」

「失礼します!ウインドブレード!」

「え」

爆発音に似た衝撃音を立て、分厚い鉄の扉が吹っ飛んでいった。

あんなびくともしなさそうだった扉が簡単に吹っ飛んでいくなんて……。

いい眺めだなあと空の彼方へと飛んでいく扉を見つめていると。

「あ、あの……」

ルウナちゃんのひどく怯えた声が耳に届いた。

くるり、と振り返ると────天使と見間違えるほどの美少女がしゃがみ込んでいた。

腰ほどまで伸びた、ルウラと同じ水色の髪は、太陽の光に照らされ艶を主張し、真っ白な肌と大きめのローブが小さな美しい顔をより引き立たせている。

不安そうに揺れる透き通った紫水晶の瞳がまた美しい。

これぞいわゆる「絶世の美女」ってやつだ。

ほわああああ…!!

ゲームでも素晴らしく美しかったが、実物は格が違う!!存在がもうすでに美しい!

推しを前にしたヤバいオタクのような思考でルウナを称え続けていると。

「あなた……何ですか?こんなことして……何が目的です?」

というルウナの刺さるような声で私はやっと我に返った。警戒の目が私に向けられている。

あっ……ヤバ。ルウナと面と向かうことは出来るようになったけど、これからのことを一切考えてなかった!

これから……どうすればいいんだ!?

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魔法少女に転生したら、強すぎた。 なつふゆ @natuhuyu

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