13話目 ルウラとルウナ

「リイラちゃん。おはよう。」

「あ、ミレイ。おはよう。」

朝早くに目覚めてしまったのでそこらへんの場所確認のつもりで村の外を散歩していたら、リイラちゃんと会った。細い川に裸足で入っている。太陽の光を浴びて輝くリイラちゃんの姿は大人っぽく、神々しく見えた。

それがなんだか気に食わなくて。

「私も入る!」

素早く裸足になり、川に足を踏み入れた。

「うわ〜!気持ち良いね!」

「でしょ。」

誇らしげに胸を張るリイラちゃん。

賑やかに会話をしていると。

「リイラ姉ちゃん。と仲間さん。」

「ルウラ。おはよう。この子は仲間さんじゃなくてミレイね。」

「ミレイ。よろしく。」

私に目線を向ける。目が合う。

ここに来て一日目だから当たり前かもしれないけれど、ルウラちゃんと目を合わせたのは初めてな気がする。

川から出て、ルウラちゃんの目を覗き込む。

何度見ても見惚れるほどの綺麗な紫水晶の瞳。でも、心なしか、その瞳に光は映っていない気がした。ぱっと見じゃあ分からない。じっと見てそう感じた。

寂しさを押し込めたかのような影が瞳の紫水晶を覆っていた。

「───何。人の顔見て。」

瞳に気を取られていると、ルウラちゃんが迷惑そうに顔をしかめ、数歩下がる。

そのまま走り去ってしまった。

「ルウラは知らない人に対しての警戒強いからね。私がいなかったら近づこうともしなかったと思うよ。」

苦笑いをしてリイラちゃんが言った。

なんかあったのかな?と聞こうと思ったけど、なんだか言ってはいけないような気がして口を閉ざした。

「ミレイ。朝ご飯だって。行こ」

私はリイラちゃんに腕をひかれ、村へと戻った。



─────



村の食べ物は簡易的なものが多かったが美味しかった。特にエラメイという獣の焼肉が美味い。この村の周りで狩れるらしい。今度たくさん狩って料理してもらおうかな。

「すみませんミレイさん。ルウナに朝食を届けに行ってもらえませんか?客人に申し訳ございません………」

ヒュナさんが困ったような表情で私に話しかけた。

「全然良いですよ。私、暇だったので。」

笑顔でそう返すと、何度も何度もお辞儀をし、ルウナちゃんの場所を軽く告げ、忙しそうに奥へと去っていった。

「あれ、ミレイ?どっか行くの?」

ルウナちゃんのところに行こうと宿を出ると、リイラちゃんに声をかけられた。

「うん。ルウナちゃんに朝ご飯を届けに行くの。」

「う~。付き添いたいけどヒュナの手伝いしないといけないんだよねぇ……」

リイラちゃんはため息をついてごめんねぇ、と言い残し、ヒュナさんの方へと歩いていった。



───────



「わあ………」

ヒュナさんに説明されたところに行ってみたら、人が3人入るほどの大きさの鉄の箱が立っていた。まさに鉄壁。

この中に本当にルウナちゃんがいるの?!と疑問を感じつつ扉らしきものをノックする。

「ヒュナ?」

中から可愛らしい少女の声が聞こえた。

「ヒュナさんの代わりに食事を運んできました。ミレイです。」

「聞いたことのない名ですね。」

「昨日ここに来ましたので知らなくて当たり前かと。」

「────食事はあなたではなくヒュナに持ってきてほしいのです。戻って下さいますか?」

突然突っぱねれらた。声のトーンも落ちている。ここまで拒絶されるとかなりつらい。

「……はい。戻ります……」

とぼとぼとその場を離れた情けない私であった。

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