「あの夏、サイトウは花火になった。」くれは様
「あの夏、サイトウは花火になった。」
著:くれは様
https://kakuyomu.jp/works/16816700426297732711
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人が死ぬと打ち上げ花火になる世界のお話です。中学生の主人公と、あまり学校では話したことのないクラスメイトとの交流が描かれています。
読み終わってまず思ったのは、設定が好きすぎる……。
「人の死」と「打ち上げ花火」。儚さ、もののあはれが共通していて、パッと見た感じ突飛な設定に思えるのですが、読み進めていくにつれすんなりと受け入れることができました。
あと、「人の死=打ち上げ花火をどう思うか?」という、打ち上げ花火に対する個人的な思いを細かく書いていらっしゃるな、と。
この世界線で、一般的には打ち上げ花火があがるということは葬儀が執り行われるということと同義なので、厳かというか、悼むことというか、一部の人々は忌むもの、という感覚が大きいということが描写からわかります。
でも、主人公とサイトウ(学校ではあまり話したことのないクラスメイト)は、打ち上げ花火について「美しい」という思いを抱いている。それは共通していて、でも決定的に違うのは、主人公は打ち上げ花火を「美しい」と思う反面、「怖い」とも思っている。これは、「死ぬということが怖い」という思いの表れだと私は感じました。
対して、サイトウは下記のように述べています。
——
「怖いのもわかる。でもきっと、怖いから余計に綺麗に見えるんだと思う」
(本文より引用)
——
サイトウは「死=普通は怖いもの」という観念を理解しつつ、自分が怖いかどうかは明言していません。ここ、書き方がお上手だなあと感じました。サイトウはこのとき、死に対してどう思っていて主人公にこう語ったのか。その後の展開を考えると、この言葉に深みを感じました。
そしてサイトウが打ち上げ花火になった、その打ち上げ花火姿。打ち上げ花火姿は、生前のその人らしさが表れることも本編で触れられています。サイトウの打ち上げ花火姿は、金色のしだれ柳。大輪の花でもなく、ただただ美しく散っていく様は、主人公の目に強く焼き付いただろうなあ、と思いました。
こういう儚さを感じる作品は大好物なので、楽しく拝読しました。ご参加いただき、ありがとうございました。
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