「白闇の祈り蟲」かやま様

「白闇の祈り蟲」

著:かやま様


https://kakuyomu.jp/works/16817330647767053634


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「とある辺境に呪いの湖があった。」


 あらすじの始まりの一文、格好良すぎや……(唐突)。


 かやま様はいままでも作品を拝読したことがある作家様です。本作「白闇の祈り蟲」の姉妹作である「夢見し蝶の遺言」も読んだことがありました。(こちらの作品もオススメなので、気になる方はぜひご一読ください。)両作読むとさらに楽しめるとのことで、期待値MAXでページをめくりました。



 読み終わって一言。


「二人が生きる方法はなかったのかよぉぉ……。泣」


 と、思わず口にしてしまうほどのメリーバッドエンド。さすが、登場人物をいじめぬくことに定評のあるかやま様です(誉め言葉)。


 私は結構主人公をいじめぬくのが苦手で中途半端に書いてしまいがちなのですが、かやま様の徹底ぶりが、より二人の悲しい運命を強調して物語にのめり込んでしまいます。


 あと、アンフェールとシエルの対比が際立って、お互いがお互いを求めているのがよくわかります。

 生きたいと願うアンフェール。死にたいと願うシエル。

 光を求めるアンフェール。闇を求めるシエル。

 末に、魂のかたちとなって白闇になる、生でも死でもない、光でも闇でもない融合したかたちになっているところが物語の締めくくりとしていい終わり方だなと思いました。


 また個人的には、シエルの闇が好きな理由にすごく共感しました。心や肉体が疲れて弱くなっているときって、太陽や蛍光灯の光って強すぎるんですよね。もちろん、光を浴びて明るい気持ちになることは大切なのですが、心や肉体が疲れていると「いやいや、それはまだ早い」となる。そういうときは、カーテンを締め切って、ちいさな白熱電球だけを点けて、ほのかな淡い光を感じることから始める。そうすると、闇に包まれている気がしてホッとする。そうして、心と体を癒していく。そういうときが私にもあります。アンフェールにとってシエルもそういう存在だったのかもな、とふと思いました。


 あと、語彙力がすごい。私の語彙力のなさが際立つ感想ですが。笑

 もちろん状況を描写する語彙もそうなのですが、かやま様はこの世界観を表現するための語彙をうまく使われているなあ、という印象です。


 ひとつ意外だったのが、主人公たちの名前が西洋系だったこと。

 漢字の使い方や、「祈り」「蟲」「誰そ彼時」などの言葉の表現から、勝手に和系の異世界だと思ってしまっていました。(シエルがまとっているのが純白のドレスだったので、この描写があった時点で西洋系の世界だと認識できるチャンスだったのですが……。)

 私の読解力不足もあり、想像していた世界を途中でガラッと切り替えることになり、その1点だけが大変でした。



 しかし徹頭徹尾、ダークでせつなく、美しい世界観を貫いてくれるその描写力に脱帽の作品でした。


 かやま様、ご参加いただきありがとうございました。



 


 

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