孤独の砂地

夜鷹

第1話 

「青い。」


一面の青が目の前に広がっていた。

遠くを見るほど深く、どこまでも、永遠に広がっていく。

そんな錯覚を起こしてしまうほど、青かった。


私はおもむろに腕を伸ばす。

生きているとは思えないほど青白い自分の腕が目の前の青と混じってまるで、一種の絵画のような、美しいと、そう思った。


私は寝ていた体を起こしてあたりを見回す。

今度は一面真っ白。

雪?と一瞬思ったがそれは砂だった。

肌に触れるそれには冷たさを感じなかった。

掌でひと撫でしてみるとさらさらと気持ちがいい。

私はこれまた白く細い脚でよろけながらも立ってみた。

黒く長い髪が私の頬を撫でる。


「わ、たしは、、」


声はかすれて思いきりむせる。

さっきは気づかなかったが声が思うように出せない。

眠っている間に砂がのどに入ったのか、それとも、長い眠っていたのか。

私は何も覚えていなかった。

すべてを忘れてしまっていた。

何も知らない。

何もわからない。

自分のことも。ここがどこなのかも。


むせて乱れた呼吸が落ち着いていく。

歩こう。

ずっとここにいるわけにもいかず、私は歩くことにした。

歩けば何かがわかるかもしれない。

この星のことも。

自分自身のことも。

私は確かにこの小さい脚で砂を踏み一歩を踏み出した。







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孤独の砂地 夜鷹 @nemurenaiyoru

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