第2話 二章
呆気にとられながらも水無月は繋がれた手を離さずに遥に引っ張られるように歩く。
『変わった子、その場の勢いで生きてるのかな』
そんな心の声は遥には当たり前のように届くわけもなく、水無月はなすがままされるがままに歩む。
そして急に止まる。
当然のように水無月は遥の背中に突撃する形となった。
「ちょっ!」
そんな声は顔が背中に当たると同時に消え去った。
「水無月さん、校庭ってどっち?」
そうして拍子抜けするような声で遥は行き先を尋ねる。
「知らずに私を連れて行こうとしたの?」
「えへへ」
乾いた笑い声を放つ遥に対して盛大に溜息を付きながら水無月は遥の前に出て繋いだ手を引っ張る。
「こっちよ」
肩を大きく項垂れながら水無月は前を進む。
そんな水無月の様子に遥は焦りを伴った声で話しかけた。
「ご、ごめんね」
「別に怒ってはないわよ、ただ勢いだけの人なんだなって思っただけ」
そんな返答に遥は困った顔をするが、前を向いている水無月には一切知らされることはなかった。
講堂を出て真っ直ぐ歩いていた遥の歩みから、途中で水無月は進路を変更して右側に振り向き歩き出した。
引っ張られる形になり少し俯き加減に歩く遥には何処をどのように歩いているか把握している様子はなく黙って水無月の案内についていく。
ある程度歩くと水無月は手を離して遥に対して振り返った。
突然止まる水無月に、遥は先程とは逆の状態でぶつかる。
年相応の膨らみかけの胸部に遥の顔がぶつかる。
おでこが丁度骨のあたりに当たり鈍い音がした。
「痛い」「痛い」
二人同時に同じ言葉を言う。
遥は顔を上げて水無月の様子を恐る恐る伺う。
目の光を失ったような、感情のない視線を水無月は遥に対して向けていた。
あまりの恐怖に遥はその場で短い悲鳴を上げる。
「ひっ!」
胸部を抑えながら水無月は淡々と言葉を放った。
「後数年すれば大きくなるわ…」
その答えは遥にとっては予想できない事だったようで口を開けて呆けていた。
「校庭ついたわよ」
無の表情で水無月は遥に端的に言う。
「え?あぁ!ありがとう!」
そんな様子に遥は怯えながら水無月の後ろをついていく。
「あら、そこの二人で最後ですよ」
校庭にいた先生の一人であろう人物が遅れてきた二人に対して呼ぶように声をかけてきた。
二人は駆け足気味に校庭へと向かうのであった。
マジカルリリカル魔砲少女ハルカ @osudaisuki
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