あゝなんと素晴らしい『』

灰色吸殻中毒者

『日常』

私は目を覚ます。

何をするでもない。

何気なく体を動かす。

家から出れば、そこは鬱蒼とした森であった。

しかし嫌に赤々としている。

これを守るのがが村の伝統と言うか仕来たり?家業?らしい。

それらが一般的ではないことは旅の人にそう教えられた。

その人は殺されてしまったけど。

俺は嫌いじゃなかったぜ。

退屈しなかったしな。

せめてすべてを語ってからでも遅くはねぇのにやつらはせっかちだなあ。

僕的にも殺すには惜しいほど知識欲を駆り立てられた。

とてもとてももったいないと思う。

いつか私も旅に出るのもいいかもしれない。

武器や道具は用意してある。

食糧は…まだだけど見切り発車でも面白そうだ。

村のみんなは反対するだろうけど。

でもみんなの総意なんだその時はその時で頑張ろう。


やっぱり駄目だった。

みんなに反対されて怒られてた。

みんななぜか目が赤くなってたけど。

両親も兄弟たちもみんな興奮してた。

今は静かだけど。また活発になるかもしれない。

恨みはないけど、俺ぁここで暮らしてはいけねぇ。

静かなうちに逃げ出そう。

決して楽しくないかもしれない。

もうこの子たちのお世話をする人たちはいないかもしれない。

「ごめんよ」

思わず口から零れ落ちる。

僕はいしを壊した。

みんなで守ってきたものだけど。

「もう自由だよ。

縛る人は今はいない。

もう僕たちはお世話はできないから。

後は自分たちで、家族で頑張るんだよ?」

それから木々は、森はどこかへ移動した。

それか透明になったのか概念が消えたのかわからないが消えてしまった。

山へ、川へ、上へ、下へ。

どこかへ。

私は、俺は、僕はそれを見送った。

後はいしの残骸と、村の小さな家々が残った。

もうここには何もいなかった。

俺が代表して家を焼いて回った。

僕をもう何も縛り付けるものはなかった。

あの森のように赤々とした火は何もかもを包み込み、すべてを絡めとるように燃やし尽くすだろう。

そうであってもらえればどれほど助かるだろうか。

森のあったほうに進む途中大きな穴があった。

いっぱいの生活感のあるごみと共に沢山の命の燃え尽きた物があった。

私は、それに見覚えがあった。

目を閉じ、泪を浮かべたかったが難しかった。

今は楽しくないが高揚感はある。

いつか楽しくありたいものだ。

そう思いながら歩みを進める。

あゝなんと素晴らしい『日常』

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あゝなんと素晴らしい『』 灰色吸殻中毒者 @HAIirosuigara_TYUUdokusha

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