後編 私の知らない世界が起きてるんだけど!

私の都市伝説好きなのは、お父さん譲り。


お父さんもまた、私と同じオカルト大好きな人で。



根っからのオカルト好きなお父さんは、昔、テレビでやってたオカルト番組をVHSに録画してて、だから家にそのVHSがいっぱいある。



そうそう、みんな、VHSって言っても「はぁ?何それ?」って全然知らないんだよね。


私、小さい頃からVHSを触ってて知ってるのが当たり前だったからビックリしちゃった。

いや、それはいいんだけど。



お父さんの若い頃ってオカルトブーム全盛期で、

テレビで頻繁に特集番組が放送されてたそうで、



番組のお約束の三大コーナーとして『心霊写真』『心霊スポット』そして、


『霊能者による除霊』っていうのがやってて、


録画してた番組でも色々な霊能者が芸能人みたいにテレビに出てるのを見たんだけど。


その人の一人にガタイのいい体格をした、

住職の風貌の霊能者がいて。


他の霊能者とは違って、なんか霊能力で徐霊するんじゃなくて気合いで徐霊するっていうスタンスの、

凄くキャラ立ちしてるインパクトが強い人がいたんだよね。




そして...


私を筋肉悪霊のラリアットから守ってくれたその人が、


そのテレビで見た人だったの!



あの顔、あの格好、あの体格。

テレビで見たそのまんまの人!



「わぁ~、テレビの人だぁ…」


なんて、大変な状況なのに、悠長にも目の前に芸能人がいることに思わず喜んじゃった。




と、その住職の人、腕を掴んだまま、左手でガッ!って筋肉悪霊の首を掴み出した。


そしたらゆっくりと立ち上がる住職。

同時に、首を掴まれている筋肉悪霊も強制的に立ち上がった。




「...下がっていなさい」



私に声を掛けてくる住職。

返事をしたいけど、突拍子もない事に声が出ない。



「はい」って答えたいけど無理っぽいから黙ったまま

言われた通り、二人から離れるために立ち上がろう...としたけんだけど、腰が抜けていて立ち上がれなくて、

仕方ないから尻餅をついたままズルズルと後ろに下がる。




住職の右腕が小刻みに震えるのに気付く私。

そしたら...




筋肉悪霊の右腕を、握り潰しちゃった!!



ええーっ!!!

握力で人の腕を握り潰せちゃうフツー!?



って!それより、そんなことしちゃって大丈夫!?本当に悪霊だよねソレ!?


生きてる人だったら大変な騒ぎになっちゃうよ絶対ー!!




けど筋肉悪霊、腕を潰されたのに何の反応も見せない。やっぱり、あれ、ホンモノの悪霊なんだ...


でもよかった~、生きてる人じゃなくて~。


いや、喜んでいいものなのかな...




なんて思っていた、その時!


急に筋肉悪霊の左腕を引っ張っる住職!



自分の方へと勢いよく引き寄せながら、




「怨敵退散!!!」



左腕で筋肉悪霊に、


ラリアットをお見舞いしたーっ!!




その瞬間、

私の目に二人の動きがスローモーションのように映る。


え!?何この感覚!?

もしかして、住職の攻撃を見て、私、感化されて、

感覚が研ぎ澄まされちゃったりしちゃってる!?

私もゾーンに入っちゃってるー!?




住職のラリアットが綺麗に決まった筋肉悪霊は

その腕に押されて、ゆっくりと仰け反ってゆく。


わぁ...なんかカッコイイんですけど...




すると...


スゥ────っと筋肉悪霊が透き通っていって。




やがて消えてしまった。






そこに居たのは、筋肉悪霊に放ったラリアットのその勢いで

身体をねじらせた体勢で佇む住職の姿だけだった。





いわゆるこれって、

『徐霊』したってことだよね...絶対...



そう思った途端、気が抜けて気持ちが緩み、

緊張しっぱなしだった私の身体から一気に力が抜けた。



はぁぁ...


助かったぁ~…はふぅ……











「あの…ありがとうございます…」



私は、背を向けて仁王立ちし静かにお経を唱えている住職にお礼を言う。



住職はお経を唱え続けたまま、少しだけ顔を向けると深く頷いた。




やがてお経を唱え終えた住職は、私を見ることも話し掛けることもなく、無言で立ち去っていった。






住職を私は見送りながら...



あの人...テレビでやってた徐霊行為は

「テレビ局から指示されたヤラセ」

だった事を暴露したってネットで見たけれど。



霊能力で徐霊はできないけど、

力業で悪霊を祓えるんだなぁ...




なんて、思うのでした。






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女子高生の都市伝説の災難 ~筋肉怪異と救いの筋骨~ 【KAC20235: 筋肉】 白鴉2式 @hacua

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