女子高生の都市伝説の災難 ~筋肉怪異と救いの筋骨~ 【KAC20235: 筋肉】

白鴉2式

前編 私、筋肉ムキムキに襲われてるんだけど!

「キィエエエエ━━━━━━━!!」



「イ━━━ヤ━━━━━━━━!!」




とにかく悲鳴を上げてるのは私!


だってそうじゃない!


筋肉ムキムキの男が奇声を上げながら、こっちに向かって走ってきてるんだから!!







始まりはある日のこと。

都市伝説好きの私は、とある話に目がついた。



 怪異『パンプアップの化物』



自慢の肉体美でボディービル大会に出場するも優勝できず、ショックと絶望で自ら命を経った男。


悪霊と化した男は、理想の筋肉を求めて永遠にトレーニングを続けているため常にパンプアップ状態から、『パンプアップの化物』と名付けられ、


自慢の肉体美を披露しようと人前に現れは、

問答無用にラリアットを喰らわしてくるのだという...




そして今まさに、

私の前にその都市伝説の悪霊とおぼしきものが走ってきてるんだけど!


左腕をブンブン回している!

あれ絶対、都市伝説にあったラリアットする気マンマンだわ!!



っていうか、肉体美を披露するのにラリアットだとか、意味がわかんないんだけどー!?




私の側まで一気に接近してくる筋肉ムキムキの

筋肉悪霊!



振り回していた腕を伸ばす!

あれ絶対、絶対に私の首を狙ってるー!



「ひゃあ!!」



直前、思わずしゃがむ私。




ブォン!!!



なんて、凶悪な音と共に、私の頭の上を強い風が通り過ぎるのを感じた。



筋肉悪霊が通り過ぎて行った方に振り返る。


筋肉悪霊は減速しながら少し離れた場所まで進むと止まった。



そして振り向き、ゆっくりと振り返る...



うわぁ...あの化物、また突進してくる雰囲気マンマンなんですけど...!



っていうか、雰囲気っていったら、なんか亡霊的なオドオドしい雰囲気とかまったく皆無な感じなんだけど!?


あれ本当に都市伝説で『パンプアップの化物』!?


実は普通に生きてる、ただの変態なんじゃない!?


その奇声と奇行は十分に化物だけども!




早く逃げなきゃ!

いや絶対逃げ切れそうにない気しかしないけれども!

それでも逃げなきゃ!



私は震える足に力を入れ、踏ん張って立ち上がり...

逃げるために走る!



途中、後ろを見ると、男はこちらに向いてるけど、

立ち止まった場所から動いてなかった。


だけど...その場で...身体をゆっくり前に傾けてる。



あれって...

また走って追ってくるモーションだわ絶対!!



もう振り返ってる場合じゃない。

前だけ向いて走ることに集中して逃げなきゃ!


そう決めて走っていたら。




バン!



って後ろから音が聞こえたから、思わず振り返ってしまう。




イヤ━━━━━!


やっぱり━━━━━━━━━!




筋肉悪霊、また走ってきているんだけどーっ!!



逃げて距離が開いてたはずなのに、あっという間に、

もうすぐそこまでの距離まで近づいてきてるし!


あんなのから逃げきれるわけないじゃないのー!




と、焦る気持ちが更に焦ってしまって。


足がもつれて...




「ぁ痛ーっ!」



思いっきり転んでしまった。



だけど転んだのが幸いして、男のラリアットをかわすことが出来た。


って、転ばなかったら当たってたなんて怖すぎるんですけどー!




通り過ぎて行った筋肉悪霊、またしばらく進んで、止まる。



逃げるために必死になって立ち上ろうとした途端。


すとんっ、と尻餅をついて座ってしまう。



「えっ!?なになに!?」



両手に力を入れて立ち上がろうとするんだけど、全然腰に力が入らない。


これって、もしかして...

いわゆる『腰が抜けた』ってやつー!?



初めてなったけど、腰が抜けるって、本当に起きるんだ~。びっくり~。


って!

そんなどころじゃないって私!




その時。

筋肉悪霊は突然、身を屈め出す。

えっ?何?



私の目線の高さまで身体を屈めると、ピタッと屈むのを止める。

その体勢のまま、ブンブンと左腕を振り回し始めた。



まさか...


座り込んでる私に、ラリアットを喰わそうとか考えるわけ!?


ウソでしょ、どんだけラリアットにこだわってるの

この化物!!


なに?ボディービル大会にラリアットを決める美しさを競うコーナーでもあったりするの!?

そこまでラリアットに固執してるってこと!?




走りだす筋肉悪霊!

だけど私、動けない!



筋肉悪霊が来る!もうすぐそこまで!



そして左腕が、そこに...

もう、ダメ...




───────瞬間。




私の顔の左側を、何かが通り過ぎた。



「えっ」



それは腕だった。


鍛えたような強靭な腕。



私の顔の横を通り過ぎた腕は、筋肉悪霊の左腕を掴んでいた。

もしかして、ラリアットを止めてくれた...?



私は誰なのかと、顔を向けると...




「あ!」



思わず声を上げる。

だってその人は...私の知ってる人だったから。



知り合いじゃないよ。まったくの他人さん。


だけど私は知っている...この人を!

 

 

 

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