第58話 『 ぞくぞくと集まる仲間 』


 この城で以前働いたことがあるということで、セセリアは他の魔物たちよりも一足早く城で働いてもらうことにした。

 寝室はクロームの隣を希望していたが、残念ながら左右前も既に埋まってしまっているので使われていない空き部屋を使用してもらうことになった。


「まぁ夜這いなど部屋が隣でなくともできますからね」とセセリア談。さすがは淫魔族サキュバスと言ったところか。惚れた相手には超積極的に攻めていく。

 兎にも角にも魔界城の従事者となったセセリア。彼女の役職については、一週間の適正審査(私独断)のすえ、事務職となった。主に書類整理や来客の対応を担う役職だ。


「ミィリス様⁉ なぜセセリアの面倒を私が見ないといけないのですか⁉」と不満を露にするのはクロームだ。


「クロームたちの仕事をセセリアに手伝ってもらう」といったら、終始納得がいかない様子だった。でも、私もふざけてセセリアをクロームたちの部下にした訳じゃない。


 まず、セセリアは読み書きができた。これは読み書きの文化が精通している人間にとっては当たり前じゃん、と思われるかもしれないが、魔物にはそれができないものが多い。この城にもちらほらといるし。


 読み書きができ、尚且つ計算も早かった。私が試しに小学五年生くらいの算数の問題を出したところ、すらすらと解いた。計算も、魔物にはできないものが多い。

 魔物には勉強する概念というのがまずないのだ。基本野営生活の彼らにとって、そもそも勉強など必要ないからである。


 その中で読み書きができ、さらに計算ができるというだけで私たちにとって、セセリアという魔物はかなり貴重な人材だった。


「ふふ。以前、この城に居た頃は勉強も読み書きもできなかったんですけどね。でもそれではクローム様にもう一度お会いできた時に恥を晒すことになってしまいますから」とセセリア談。


 どうやらこれら全ては彼女が独学で得たものらしい。


 惚れた男の為に努力する。なんて乙女っ。もう淫魔族サキュバスじゃなくて淑女じゃん!

 そうなればセセリアの努力を少しでも報わせてあげたいというのが女の性、というより私の性。

 多少強引ではあったのは認めるが、それでもセセリアが優秀であることに変わりはないということで、最終的に事務職、正確には【魔王直属配下・事務担当】に就いてもらった。


「やりましたわクローム様! これで毎日一緒にいられますわね!」

「やめろ抱きついてくるな! 私は貴様に構っている暇はないのだ!」

「そんなこと言わずに。いいではありませんか。ミィリス様からも許可はいただいてるんですよ」

「何の許可だ⁉」

「暇ならクローム様に抱きついていい許可と夜這いをしていい許可です」

「何を許可しているんだあの魔王様は⁉」


 と今のが役職に就くことが決まった当日の出来事である。


 私としてはセセリアがちゃんと仕事をしてくれればそれでいいし、クロームの激務のストレスが多少なりとも発散されればもっと重畳だ。毎夜セセリアに夜這いされて辞める、と言われるのが多少不安ではあるけど。


 まあ、こんな感じで従事者が増えてきて、更には役職も決まっていき、ログハウスも二軒目の建設の真っ最中で、順調に戦力が整ってきた。


 そんなこんなで順調に整っていく戦力だが、数日後に更に増すことを私はまだ知らなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

絶望少女の異世界征服 〜5度の人生の果てで少女は『魔王』に転生する〜 結乃拓也/ゆのや @yunotakuya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ