【KAC20235】性癖本屋:『筋肉文字辞典』

@dekai3

【KAC20235】性癖本屋:『筋肉文字辞典』

 人住む所に物語あり。

 人育む所に書物あり。 

 物語と書物あれば、それ即ち本屋あり。






色   ア

々 本 リ

な   〼


 急激に成長した国の為、国民の多くが豊かな暮らしを夢見て首都へ集まる一極化が発生しており、地図上では広い荒野と森の中間に急に現れる円形の人工物の塊に見える経済都市。

 未だ発展途上であり、住民のほとんどが上昇志向に取り憑かれて一日中動き回るオフィスの中でも、一際高層ビルが立ち並ぶ通りの中にその本屋はありました。


 外観は大きな四角をした建物で、体育館の様にも市の展示場のようにも見えます。

 店名は書かれていませんが、自動ドアが四つ並ぶ入り口の上に遠方からでも見える様に大きく上記の文字が書かれています。


 中に入ると受付があり、その手前でマスコットのマッチョブックくんが出迎えてくれます。


「いらっしゃいマッソー! 本日はどのようなお求めでブック?」


 マッチョブックくんは顔が広辞苑のボディビルダーです。この本屋が掲げる『筋肉と知の融合』と体現しているますこっときゃらくたーです。

 話す度にポージングを決めるのが特徴でして、ポージングをする事で植物の光合成を促したり傷を治す効果があります。

 

 受付で体験コースの申し込みをし、図書カードを作り、更衣室で運動しやすい服装と室内用運動シューズに着替えると、一般者向けの施設案内が始まります。


 中は白を基調とした清潔感溢れる室内になっており、転倒しても良い様に床はやや柔らかめのシートが敷かれています。

 部屋は一見しただけではいくつあるか分からない程に並んでいて、それぞれに『歴史』や『ミステリー』や『ラブコメ』といった札が掲げてあり、中は本棚とルームランナーやエアロバイク、それぞれの筋肉を鍛える為の最新にマシーンが並んでいて、施設利用者の方達は専用スタンドに本を立てかけながら運動をしています。

 奥に進むと床は水を吸う物へと変わり、室内プールが現れます。ここではスマートゴーグルという、ゴーグル内に文章を表示する物がレンタルされていて、泳ぎながら読書をする事が出来ます。

 二階は食堂と売店と休憩室になっていて、貸出用のタブレットで筋肉と頭脳に良い食事をしつつ電子書籍を読む事が出来ます。

 そんな最先端の技術を駆使した施設の中、『筋長室』と書かれた部屋に彼女は居ました。


「いらっしゃいサイドトライセップス!!!!! ン~~~~よく来たね!!」


 年のころは五十を超えているでしょうか。真っ黒で艶のある長髪に成人男性の倍の太さを誇る筋肉。まぶしい笑顔と白い歯、紺色のアイシャドウが似合う肌黒の女性が布を巻いたようなドレスを着て、両腕を腰の後ろで組んで体を斜めにして胸を突き出しながら上腕三頭筋をアピールしています。

 そして、一番目立つのは大きな眼鏡。体の大きな彼女に良く似合った大きな丸眼鏡をかけているのが特徴です。


「話は聞いてフロントダブルバイセップス!!!!! ッハァ!! カクヨムからのお題ならアタシんとこがピッタリだ!!」


 体全体のアウトラインを見せつつ両腕を折り曲げて上腕二頭筋と浮き出る鎖骨をアピールした後、椅子の無い立派な事務机から本を取り出し、自信満々にこちらへ本を渡します。

 その本の題名は『筋肉文字辞典』。この国の文字を人体で現わしてある辞典で、ビキニ姿の人のしなやかで張りのある筋肉の美しさを見て参考にしながら、この国の言葉を覚える事も出来るという、正に『筋肉と知の融合』が成立された本です。

 中を覗くと、そこにはフルカラーで光沢を放つ紙に黒いビキニだけを身に付けた男女が腕を絡めたり、足をからめたり、背中合わせだったり、上に乗ったり、丸まったり、180度開脚をしていたと、流し見するだけでも素晴らしい筋肉が見えます。


「この成人向け『筋肉文字辞典』は云わば入門書バックダブルバイセップス!!!! ヵハァ!! 辞典に収めるべき内容は初心者向けの物だ。上級者向けは更に筋肉とポージングが素晴らしい物になるぞ!!」


 背中全体の引き締まった筋肉と、お尻からハムストリングスにかけてのなだらかな筋肉の膨らみをアピールしながら、左手には筋肉で両腕が膨れ上がった男性がポージングをしている辞典、右手には太く逞しく鍛えられた太ももの女性がポージングをしている辞典を持っています。

 そして、肩甲骨の間には『筋肉全書』と書かれ、彼女自身が一糸まとわぬ姿でポージングをしている辞典が両肩と背中の筋肉で支えられています。


「アタシがモデルの辞典はブッ飛ぶぜぇ? ま、その本を読んで体を鍛えたらもう一度来なぁ!!」


 彼女がそう言うと、突如目の前が真っ暗になりました。





 お題につきお話は一つなんですが、辞典はお話に含まれるんですか?


「話ってモンじゃあないが本は本だ。間違いはねぇ!」


 まあ仕方ないでしょう。


 それでは、また明日。

 若しくは、明後日。

 お題を元に作られる性癖小説で会いましょう。

 本屋とは一旦お別れ。


「またのお越しを!!!」


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