ただいま
@tatumito
Shortstory
「ただいま」
私が発した言葉の目の前には建物の残骸と草木が広がっている。
もう世間では春を迎えると言うがこの地はあのときと変わらずまだダウンがないと少し寒い。
年に一度だけ帰ってくるこの場所でも帰ってきても
「おかえり」
と私の聞きたい言葉は消して聞こえない。
もう聞くことなどできない。
望んでいる声を聞くことすらできない。
12年前ここにはいろんな家があった。
朝には「おはよう、行ってらっしゃい」「いってきます」いろんな声が聞こえていた。
だけど今ここは風の音と波の音しか聞こえない。
家の跡地はあっても原型はない。
この地と私はあの時で時間が止まっているようで、
その時あの時を告げるサイレンが鳴り響いた。
私はその音と共に目を閉じた。
少ししてサイレンが止んだ。
私は静かに目を明け歩き出した。
ただいま @tatumito
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