魔導士の筋肉

蘇 陶華

第1話 麗しき魔導士の筋肉はどこ?

青龍の剣は、小刻みに震えながら、二人の間の波動を伝えてきた。

「結局、剣を使う事になるのだな」

瑠璃光は、悔しそうに呟く。

「術だけでは、勝てそうにないか」

紫鳳は、翼を広げ、しっかりと宙に佇んでいる。魔導士であれば、術でなんとかしたい所だが、瑠璃光の使う術は、香を使いのが主だが、肝心の香を呼ぶ、札が先日の戦いで、亀裂が入り、修復が必要な状態だった。式神の紫鳳を召喚し、敵将と対決することになっていたが、いつになく、苦戦していた。敵将が、同じ術士という事もあるが、苦戦の原因となるのが、術ではなかった。

「どうも、苦手なタイプなんだ」

瑠璃光は、目を背ける。式神、紫鳳は、陽の元の国に行った時に、拾い上げた赤子だった。瀕死だったので、式神として使う事にして、近くの神社にあった十二神将の加護を受けて作り上げた。面差しは、瑠璃光によく似ているが、どちらかというと、瑠璃光が光なら、紫鳳は、影という感じだった。背には、小さな羽根があり、召喚された時は、紫の翼と共に現れる。瑠璃光の影武者でもあるので、瑠璃光が危険な位置にあると、紫鳳を召喚し、位置を入れ替えて戦う。

「今回は、それが仇となる」

いつになく、消極的だ。瑠璃光の体は、線が細く、目にする誰もが、芸妓と思うような柔らかな体をしていた。女性よりも、女性らしく、細く均整の取れた体をしている。対して、紫鳳は、十二神将の加護を受けた為なのか瑠璃光の分身にしては、胸板は厚く、肩幅から、腕にかけての筋肉は、彫像のように美しかった。

「俺は、瑠璃光の分身なんですよね?」

ふと、敵を前にして、紫鳳は。瑠璃光との体を見比べた。

「顔は、間違いなく似てるのに・・・どうして?」

敵将の胸板も厚く、全身に黒々とした剛毛が魔取り憑いていた。

「ふむ。どうしても、私の体には、合わないと思うのだよ」

「何が?」

「筋肉」

どうりで、自分には、必要以上に筋肉があるのか、紫鳳は理解できた。瑠璃光は、いいいとこどりだったのだ。紫鳳が、文句を言おうとした瞬間、敵将が円刀を振り上げてきた。続きは、「皇帝より、鬼神になりたい香の魔導士」で。

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魔導士の筋肉 蘇 陶華 @sotouka

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