第2話 アントシアニン終着駅
♪皮下脂肪は置いて逝くがいい、再び始まる
ナレ:城達也(台詞の背景に巻紙を以下略)
『人は皆、割れた腹筋を見ながら旅に出る。思い描いた筋肉を追い求めて』
『果てしなく鍛錬は長く、人はやがて夢を追い求める筋トレの内に永遠の眠りに就く』
『人は太り、人は痩せる。終わることの無い流れの中を筋トレは続く』
『終わることの無いルームランナーの上を、夢と、希望と、野心と、若さを乗せて、今日も彼らは走る』
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『ここ惑星ボディビルダーに母の仇、筋肉伯爵が居るとの情報を得た肉郎は酒場を訪れた』
♪何が欲しいと言うの~私、それとも肉?
人気の歌姫メリーズが伯爵の愛妾らしいのだが――?
「――何にするね、坊や?」
「プロテインドリンク」
この台詞に笑い出す周囲のビルダー達。
「はーっはっは!! お子ちゃまは帰ってママのおっぱいでも飲んでな!!」
「……くっ」
「――プロテインドリンクを貰おうか」
その時入って来た男を見てぎょっとするビルダー達。
「――や、奴は……」
「ま、間違い無ぇ……お尋ね者のボディビルダー、キャプテン・ハーフラック……(( ;゚Д゚)))」
「そこのお前、まぁ一杯やれよ、俺の奢りだ」
「――ちょ、ま、待て待て、今プロテインなんか飲んだら栄養バランスがーっ!!もごがご!!」
口からプロテインの泡を吹いて気絶する荒くれビルダー。
「――キャプテン・ハーフラック……なんで俺を助けて……」
「俺の心の友を看取ってくれた礼だ。まぁ一杯やろう」
ビビって逃げ出そうとするビルダー達に鞭が飛ぶ。
「この卑怯者ども。お前たちはそこの隅で
酒場の隅で軍曹殿にドヤされつつ踊る荒くれ者たちを尻目に再会を祝う一同。
「クィーン・ミネラルダス……
「イソローの最期の願いを聞いてくれてお礼を言いますよ、肉郎」
「――でも、イソローさんは……(´・ω・`)」
「イソローは生きている。俺の
むん、と胸を張るハーフラックの見事に仕上がった大胸筋。
クェェェェ……と叫びハーフラックの肩に飛び乗るトリプトさん。
「この
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『肉郎の母親をダイエット地獄に追い込んだ仇、筋肉伯爵』
『遂に彼の
「母さんの仇、筋肉伯爵、覚悟ーっ!!」
30kgのベンチプレスを根性で上げる肉郎。
「フン、儂の鍛え上げた大胸筋に敵う者など――」
余裕たっぷりにバーベルを持ち上げる筋肉伯爵。
これは完全に伯爵の勝ちか――と誰もが思った時。
「ふぅー」
筋肉伯爵の耳元に息を吹きかける歌姫メリーズ。
「ぞわわわわっっっ!! ば、馬鹿もんっ、何をするかっ――!!」
怒鳴ったはいいが力の緩んだ伯爵、見事にバーベルの下敷きに。
「……ぐ、ぐぬぬ……メリーズ、貴様、何故……」
「ふん、アタシが若い頃にさんざんぱらデブだの何だのと言ってくれた恨みよ」
「貴様、そんな昔のコトを根に持って……」(ガクッ)
「メーテレ、筋肉伯爵はなんでメリーズの息だけであんなんなっちゃったんだろう?」
「哀れなものね。いくら筋肉だけ鍛えても鍛えきれない所はあるものよ」
耳元に「ふっ」と息を吹きかけられて「ぁふぅん」と悶える肉郎であった。
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『いよいよ旅の終点、アントシアニン銀河の惑星ライザプルに到着した肉郎とメーテレ』
『彼らを待ち受ける運命は――そして、肉郎は"鋼鉄の筋肉"を手に入れられるのか?』
「くそっ、何だこいつら、次から次に沸いてくる!!」
「これは皆、筋肉人間。ライザプル配下の精鋭達ね」
自慢の筋肉を誇らしげに見せびらかしつつ迫る筋肉化軍団。
絶体絶命か――と思ったその時。
「
パワーラックに仁王立ちして厳かに宣う一人の
「――決戦の時は来た。肉郎には傷ひとつ付けるな!!」
キャプテン・ハーフラックの号令一下、次々と駆け付ける40人の海賊ビルダーたち。
「――肉郎はイソローの遺志を継ぐ者。むざむざ見殺しにはしません!!」
クィーン・ミネラルダスも参戦!!
そこかしこで「むぅん!!」とか「ほわぁ!!」とかボディビル対決が始まる中を、中枢部へと急ぐ肉郎とメーテレ。
辿り着いた中枢部、そこの地下動力炉ではムキムキの男達が発電機を回していた!!
「……こんな未来SFで人力発電て(-д-;」
「ふ……よくぞここまで辿り着いたものだ」
「や、やいやいっ!! 女王プロティンカルシューム!! なんだってこんな酷いことをするんだっ!!」
「お母様、もうこんなことはやめましょう」
「え……お母様!?」
「何を驚くことがある。そこなメーテレは我が娘にして後継者よ」
「でもお母様……私は……」
「メーテレ……」
「――おっと少年、お前の相手は私、
「くっ……」
見事に整った黒光りする筋肉を誇示するように「ムゥン!!」とポーズを決める
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『筋肉と筋肉のぶつかり合い、軋む骨、飛び散る汗』
『戦いは果てしなく続くかと思われたが――』
「――ぐ、ぐわぁぁぁー!!」
突如として苦しみ出す女王プロティンカルシューム。
「メーテレ、お、お前、何をしたーっ!!」
「お母様、貴方は解っていないわ」
「何!?」
「私が今まで涙を呑んで男達をここへ送り込んだと思っているの」
「お前、まさか――」
「えぇ。彼らは黙って発電機の動力になっていた訳ではないわ」
地下の動力炉では炉を回していた男たちが反乱を起こし、動力炉を破壊し始めていたのだ。
「長年、苦しい労苦に耐え続けた彼らの筋肉は、見かけだけでは無い正に"鋼鉄の筋肉"――」
「――ぐ、ぐわぁぁぁー!! わ、私の永遠の若さがぁぁぁー!!」
「他人を犠牲にしてまで得た若さなんて、虚しいものよ、お母様……」
一方、丁々発止の勝負(何の!?)を繰り広げていた
「――む、女王様が……この筋肉帝国もこれまでか」
「そ、そうだそうだ!! お前たちの負けだ!!」
「――ふっ、逞しくなったものだな、息子よ」
「――へ? 息子? 一体何を――」
肉郎の疑問を余所に奈落へと落ちていく
崩壊を始める筋肉帝国。
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『遂に崩壊を始めた筋肉帝国の本拠、惑星ライザプル』
『脱出は間に合うのか、急げ!! 肉郎、メーテレ!!』
「肉郎さぁ~ん!! メーテレさぁ~ん!! 急いでくださぁ~い!!」
「車掌さーん!! 待っててくれたんだね!!」
「一先ずこの惑星ライザプルの衛星ラーメンタルの停車場に避難致します」
「うん解ったよ――う゛っ!!」
突如、肉郎を包む黒い影。
「こい…つ…女王プロティンカルシューム……どうして……」
「ふん、筋肉あるところ我あり。せめて貴様は道連れにしてくれる」
驚いて駆け寄ろうとする列車付きウェイトレスのクロロ。
「肉郎さん!!」
「駄目だクロロさん、危ない!!」
「……こちょこちょ」
「――ひぃ!!や、やめぃ!!あふん!!そ、そこはらめぇぇぇー!!」
弱点の脇腹を突かれて悶絶する女王プロティンカルシューム。
「ま、またこのオチかい……」
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一夜明けた衛星ラーメンタルの停車場。
そんな人々に交じって帰り支度に走り回る肉郎。
「メーテレ、早く早く~!!」
「先に乗ってらっしゃい、肉郎」
先程からミネラルダスと意味深な顔で言葉を交わしていたメーテレの顔色にはどこか陰がある。
「――解っていますね、メーテレ。私たちの旅には終わりなど無いと」
「――ええ。それが私たち、美を追究する者の宿命……」
ぢりりりりり!! ふぉー!! ふぉー!!
出発を知らせるベルが鳴り渡り、汽笛一声、
ぷしゅー!! ……ごっとん、ごっとん、ごっとんとっとっ……
荷物が片付き、漸く空いた席に着いて一息入れた肉郎がメーテレの姿を探すが、見当たらない。
「――メーテレ?」
客車をどんどん後ろへと走り、最後尾に辿り着いた肉郎が目にしたのは、ラーメンタル停車場に佇みこちらを見送るメーテレの姿だった。
「さようなら、肉郎。いつかお別れの時が来ると私には解っていました」
「私は
「メーテレという名が、肉郎の腹筋の中に残ればそれでいい。私は、それでいい」
「さようなら、肉郎。貴方の筋トレとご一緒したことを、私は永久に忘れない」
「さようなら、私の肉郎――。さようなら……」
「――メーテレぇ~っっっ!!」(´;ω;`)ブワッ
『時は流れ、筋肉は消えてゆく』
『少年の日が二度と還らないように、筋肉もまた、去って帰らない』
『人は言う。筋トレは肉郎の心の中を走った青春という列車だと』
「如何にも良い感じで締めたけど、ぼちぼちエステの時間だからじゃないの?」
「あら、急がなきゃ。一緒にどう、ミネラルダス?」
『今、万感の想いを込めて骨が鳴る――』
『今、万感の想いを込めて肉が軋む――』
『さらば筋トレ、さらば筋肉鉄道
♪Keep your muscle――SAYONARA……
筋肉鉄道6x6(sixpad) ひとえあきら @HitoeAkira
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