肌寒い先輩の部屋で、夜が明けるまで遊ぶ。(2)
その後私たちはトランプでスピードやババ抜きをしたり、スマッシュブ○ザーズやマリ○カートをしたりと、それはそれは仲睦まじく遊んでいたのだが…
「なんかお菓子とか食べよっか」
事件はそこで起こる。
なんと先輩は机の上にきのこの山を置いたのだ。
きのこの山を!
「「…」」
刹那。
細められる目、交差する視線。
「日和ちゃんまさか…」
「ええ。まさか先輩がそんな人だとは思いもしませんでしたよ」
きのこvsたけのこ、開戦である。
「いやいやいや、だってチョコのお菓子が食べたい時にこれ買うよね?きのこの方がチョコ多いから!1.4倍も違うんだらね!」
「いいえ、それを差し置いても余るほどクッキー部分に差があります。あのさくさくほろほろの食感には敵いません」
「わかってないなあ、クラッカーで甘さを控えめにすることでチョコとの相性をよくしてるんだよ。なんならこっちの方が上とまで言えるね。」
「はあ、浅はかですね。チョコとの相性はよくなったかもしれませんが、それ以外はどうですか?キンキンに冷やして食感を強め食べ応えを良くすることも、ケーキなんかのトッピングにすることまでできます」
「わざわざそんなことしないから。すぐにちょこっと食べられるのがいいんでしょチョコだけにあはは」
「私はあくまで可能性を…ぷっ、ふふふやめてください反則ですよ」
「ごめんごめん」
「ま、今日のところはどっちも美味しいということで済ませてあげましょう」
「いやきのこの方が美味しいけど」
「…」
「冗談。ほら、あーん」
「えっ」
先輩がきのこの山を一つ手に取って私の前に差し出す。
「まあいいんですけど…あむ」
これ意外と恥ずかしいぞ。
箸とかフォークとかを使ってたら多少マシだったのかもしれないけど、手から直接だと…
でもやっぱりきのこの山も美味しいな。
「私、将来猫飼おうかなぁ」
「なんですか突然」
「ああうん、気にしないで。そういえば、お風呂は何時くらいに入る?」
「普段は寝る前に入ってますけど、先輩に合わせますよ」
「私も寝る前だから、まあ十一時くらいに入ろっか」
「了解です。次はなにするんですか?」
きのこの山に手を伸ばしながら質問する。
「そうだね〜…今何時かな」
そう言って先輩は壁掛けの時計を見つめる。
「えっ、もう九時なんだけど」
「へ?ああ本当だ」
体感的にはまだ八時にもなっていなかったのだが、今の時間はすでに九時だった。
「ちょっとお菓子食べたばっかりだけど、とりあえず夜ご飯食べよっか。何か注文するけど、食べたいのある?」
「あーじゃあピザとか食べたいです」
「いいねピザ、そうしよっか。ここは先輩の私が払ってあげよう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「構わんとも」
◆
「ああ〜きもちいい〜…」
時刻は十一時過ぎ、私は今先輩の家のお風呂に浸かっていた。
お高いマンションは浴槽がとても広いことを今身を持って知った。
浴室の床は大理石でできている。果たしてそこまで浴室にお金をかける必要があるのか甚だ疑問ではあるのだが、お風呂が気持ちいのでどうでもいいという結論に至った。
一体私はなにを考えているのか分からなくなってきた。
『お客さまー、湯加減はいかがですかー?』
ドア越しに先輩の声が響く。
「最高です…って先輩?入ってこないでくださいよ?」
「私が家主です」
訳のわからないことを言いながら全裸の先輩が入ってくる。
「ちょいちょいちょいちょい!冗談でも悪いことがあるでしょう」
「日和ちゃんなにをそんな気にしてるの、私たち同性だよ?温泉でもみんな裸じゃん」
「…それは確かに」
そう言われてみると、私はなにを気にして拒んでいたのか分からなくなってくる。
「でしょ?浴槽のスペースはどうせ余ってるんだし、気にしない気にしない」
私を説き伏せると、先輩は鼻歌混じりに髪を洗い始める。
あんなに長いと洗うのも一苦労だろうなーなんて考えているうちに、少しずつ自分の視線が下がっていることに気づいた。
ゴクリ、と思わず息を呑む。
前見た時と同様に、先輩の体にはシミの一つすらない。
浴室のオレンジ色の電気を反射して艶やかに輝いていて、女の私が見ても異常なほどに魅力的だ。
もし私が男性だったらすぐにでも理性が限界に達していただろう。
いけない、また変なことを考えていた。
先輩と一緒にいると、たまに変に下品なことを考えてしまう。
いや、私が悪いんじゃない。
これは色気を振り撒きまくっている先輩のせいだ。
「じゃ、私も失礼するねー」
理不尽に先輩に責任転嫁していると、先輩も浴槽に体を入れてきた。
「…日和ちゃん、何でそんなにキョロキョロしてるの?」
「その…目のやり場に困るんですけど…」
先輩は私と向き合うように浴槽に入っていて、その豊満な身体を惜しげもなく晒している状態なのだ。
これは流石に私じゃなくても目のやり場に困るだろう。
「あっ…」
先輩はさも今気付いたかのような表情をしている。
「先輩から入ってきたんじゃないですか。顔赤くしないでくださいよ」
「いや、してないし!電気の生でそう見えるだけじゃない?」
「明らかに赤くなってますから!」
「なってません!なっててもそれはあったかいからです」
「はあ。そうですかそうですか」
「絶対信じてないでしょ!」
そんな話をしながら先輩の顔に目を向けると…
「先輩…」
「どうしたの?」
「やけに視線が低いですね、どこ見てるんですか」
視線が低いことを問いただすと、先輩はバッと顔を上げる。
「なにも見てませんごめんなさい!」
「いやそれ見てたって白状してるようなものじゃないですか」
「見てましたごめんなさい!」
「正直な子は許してあげましょう」
直前まで見ていた私は許す他にないのであった。
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