お姫さまたちの婿探し

常盤木雀

お姫さまたちの婿探し

 昔、あるところに、聡明な王さまと慈悲深いお妃さまがいました。王さまの見事な采配により国は大きく豊かになり、お妃さまの導きにより人々は幸せになっていきました。

 さて、お二人には四人の娘がいました。四人のお姫さまはみな、賢く優しく育ちました。王さまは、国を四つに分けて、それぞれをお姫さまとその夫に任せることに決めました。


 あるとき、王さまはお姫さまたちを集めて言いました。

「お前たちの婿を探そう。どんな人が良いか言ってごらん」

 お姫さまたちは目を瞬かせた後に、一斉に口を開きました。

「筋肉が素敵な人!」

「筋肉が立派な人!」

「筋肉が強靭な人!」

「人助けをできる人がいいわ」

 三人のお姫さまには、筋肉への憧れがありました。お付きの女性たちから、筋肉の素晴らしさを聞かされていたものの、なかなか目にすることはできなかったからです。王さまの命により、賢い人は城で働き、力強い人は外で働いています。

 王さまは、まずは三人のお姫さまの婿を探すために、国中の筋肉自慢、力自慢たちを集めることにしました。


 お姫さまと結婚できると聞いて、自信のある者たちが広場に集まりました。みな薄着で、体を見せつけるような格好です。

 ある者は盛り上がった筋肉を披露しました。またある者は大きな丸太を軽々と持ち上げ振り回しました。ある者は身軽に跳びはね宙を回りました。他にも樽を割る者や、他の参加者と模擬戦を行う者など、誰もが自分を最も良いところを見せようとしました。


「私はあの人がいいわ」

 一人のお姫さまが選んだのは、誰よりも大きな筋肉の男でした。鍛え上げられた見せる筋肉です。


「私はあの人がいいわ」

 一人のお姫さまが選んだのは、他の男たちを三人まとめて抱え上げた男でした。使うためにつくられた機能重視な筋肉です。


「私はあの人がいいわ」

 一人のお姫さまが選んだのは、体に凹凸が少なく、しなやかな剣舞を見せた男でした。引き締まった無駄のない筋肉です。


「私はあの人がいいわ」

 驚いたことに、筋肉を希望しなかったお姫さまも相手を見つけました。参加者の揉め事を仲裁したり、怪我人への対応をしていた男です。参加者ではなく城の者でしたが、その働きぶりが目にとまったのです。


 王さまはお姫さまたちの婿が一度に決まったことを喜び、それぞれに城を建ててやりました。

 そうして、この国は四つの地域に分かれて成長したのです。

 悪者を思い止まらせる立派な筋肉と、苦労を感じさせずに働く強靭な筋肉と、技巧に長けた素敵な筋肉と、彼らを支える思いやりある頭脳は、国の安定化に貢献しました。もちろん、賢く優しいお姫さまたちが上手に采配したことは言うまでもありません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お姫さまたちの婿探し 常盤木雀 @aa4f37

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ