第10話 ラストバトル

 11月5日

 鷲津駅の近くに靖子は逃れていた。浜名湖の畔にあるペンションにやってきた。藤堂は手術の甲斐もなく死んだ。また、辺戸は毛野の手下だった。永倉は逮捕された。

 

「あなたが教祖だったとはね?」

 ドアを開けると、舘ひろしに似た男がニタリと笑っていた。

 呂宋はドラゴンを召喚させた。

 だが、靖子は『羽柴ワークス』のビルを爆破させたときに魔雷まらいを取得していた。魔雷に撃たれてドラゴンは死んだ。

 呂宋は凄まじいオーラを発して靖子の動きを封じた。

「パパ、助けて」

 呂宋の背後に永倉が立っていたからビックリだ。

「逮捕されたんじゃなかったの?」

「寛子を嵌めたときに透明の魔法を覚えたからな」

 永倉と藤堂は結婚詐欺を行った。靖子は、10万を支払うことを条件に羽柴一家を潰すことを依頼してきた。

 透明人間になったので刑務所をまんまと脱獄。押収された黒い玉、赤い玉も取り戻した。

 トイレに隠れていた永倉紀香がベレッタM92Fを撃ってきた。藤堂も新見もいなくなった今、紀香がキルゲームに勝てる見込みはある。が、紀香の殺害人数はわずか3人。現段階での優勝者候補は森康晴もりやすはるというニートだ。殺した数は15人。

「ウグッ!」

 永倉は胸の辺りを撃たれた。

 紀香は微笑んだ。「これで4人か」

 あまりにも簡単に永倉が死んだので、靖子は呆気に取られていた。

 靖子は勇気を取り戻した。ここに来る前、『アルラウネ』の副長、竜留美子りゅうるみこのパソコンにハッキングをして居場所を突き止めた。留美子は剛力彩芽ごうりきあやめに似ていた。

 見えない刃によって呂宋は首を斬り落とされた。見えない刃は紀香の首をも斬り落とした。

 靖子は紀香の銃と、永倉の赤い玉を奪い取って、ペンションを脱出した。

 

 楠木は本興寺ほんこうじという湖西市鷲津にある仏教寺院にやって来た。境内に辺戸の死体があった。背中から血が出ている。犯人は既に冥土に旅立った永倉だ。永倉は辺戸に追われて、この寺に逃げてきた。木陰から襲いかかり、日本刀で辺戸の背中を刺したのだ。

「反吐が出そうだ」

 

 森は、夕暮れの浜名湖をバックに竜留美子と対峙している。浜名湖はまなこは、静岡県西部の浜松市と湖西市にまたがる湖。今切口で遠州灘とつながっており、太平洋の海水が流入する汽水湖となっている。

 森は『アルラウネ』に入ったばかりに差別され、留美子と政略結婚することになった。 

 留美子は『結婚しても子供の面倒もみないし、料理も作らない』と言っていた。森には学生時代から付き合っている人がいた。この女を殺さない限りは自由にはなれない。

 森は留美子の背後から襲いかかり、カッターナイフで背中を刺して始末した。

 人の声がしたのでその場から立ち去った。


 靖子は立ち寄ったコンビニで警察に待ち伏せされて追われる羽目になる。靖子は銃を撃って覆面パトカーのサイドミラーを粉砕した。デミオを駆って浜名湖を舞台に一大カーチェイスを展開する。 

「おまえら、絶対に逃がすんじゃねーぞ!」

 湖西署の蘭堂らんどう刑事が叫ぶ。蘭堂は『タケモトピアノ』のCMに出てくる財津一郎ざいついちろうに似ていた。

 浜名湖で発生した警察のカーチェイスを知った地元ラジオ局は放送内容を変更し、目撃者や被害者の情報を集めて逐次実況する。警察に追われデミオのハンドルを握る靖子の後には警察車両と一般車を巻き込む事故が次々と発生、警察の追跡を振りきって損傷激しいデミオと共に逃走したショッピングモールの駐車場にて確保された。

「更生してちょーだい♪」

 靖子を捕まえて蘭堂はルンルン気分だ。

 

 12月31日

 紅白がスタートする直前、キルゲームの優勝者が明らかになった。結城洋介ゆうきようすけという傭兵だ。結城は20人をも殺害した。森の殺害人数は19人。

「あと少しだったのにな〜」

 金閣寺近くのホテルで結果を知った森は涙を流した。


 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

黒狼SHIVERING  鷹山トシキ @1982

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ